表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
458/461

第446話 最後の休息

 ……ふむ。


「完成、しましたわね……」

「ああ。ようやくだ。……本当にっ、ようやく……!」

「ん。大変、だった」

「お疲れさん、お前ら」


 マンパワーとステアの頭脳、那由多の発明品とロボットの力を借りても、建てるまで1年半かかった。

 既に帝国の、共和国連邦制圧から2ヶ月。そろそろ向こうも痺れを切らしている頃だろう。


「ふむ」


 出来上がったその城を見ると、色々と込み上げてくるものがある。

 ここまでの苦労、大変だった作業、オトハ、オウラン、ルシアスへの感謝、那由多とステアへの深い深い感謝。

 何より、この城の頂点として君臨するノア様の御姿を幻想するだけで、自然と笑みが零れそうだ。

 だがその幻想は、間もなく現実になる。


「もう、汗も出ないくらい、毒と薬を絞り出さなくていいんですのね……!」

「やっと、やっと、会いに行ける……!愛想つかされてないかな大丈夫かな……!」

「クロ、ホットケーキ、食べたい」

「俺は別にあのままでも良かったんだがなぁ」


 あのオトハすら弱音を吐くほどの激務を乗り越え、わたしたちは成し遂げた。

 ……しかし、1つだけ。

 たった1つだけ、とても気になることがある。


「クロさん、どうした?感動で声も出ないのか?」


 ……城そのものは、荘厳だ。

 しかしなんだろう、雰囲気というかなんというか。

 大きさといい戦争を意識した作りといい、なんというか。


「魔王城……」

「え?」

「いえ、なんでも」


 思わずこぼしてしまった。


「分かるよ久音。スク〇ニ産RPGのラスダンみたいだ」

「異空間の中とかじゃないだけマシですかね……」

「毒の沼地とかオトハに設置してもらう?」

「似合いそうですがやめておくべきかと」


 別にわたしとて、ノア様をピ〇ロとかにしたいわけではない。

 ただ、異世界人の感覚的に、「いよいよだな」と思うだけだ。


「確かに、そこまでやると久音がエビル〇リーストになるね」

「誰が黒幕ですか」


 那由多と軽快な異世界ジョークを交わしつつも、魔王城……じゃなかった、ノア様の居城となるここを、わたしは見つめていた。


「いよいよ、ですね」

「ええ。あなたたち、本当にご苦労様。()()()のは明後日からよ。今日明日はゆっくり身体を休めて、万全の状態でね」


 側近全員が頷いた。

 ……2日後、か。


「ルシアス、スギノキに飛ばしてくれ」

「妬けるねぇ。早速かい」

「ああ。……もしかしたらが、あるからね」

「おっ、いい顔だ。オトハはどうすんだ?」

「勿論一緒に……と言いたいところですが、やめておきますわ。ボタンちゃんによろしく伝えておいて」

「分かった。ルシアスはどうするんだ?」

「あー、こっそり共和国連邦覗いてみるわ。挨拶してぇツラがいくつかあるんでな」


 その日、1つの時代が終わる。


「ステアちゃんは何を?」

「……この子、直す」

「ゴラスケ?あー、ホントだよく見たらボロボロ」

「可哀想」

「縫い目が見えない縫い方教えようか?割と簡単だよ」

「……ほんと?」

「ほんとほんと」

「ありがと」


 そして、勝者による時代が始まる。


「クロ、あなたは?」

「少し、那由多と予定が」

「ああ……会いに行くのね。止めはしないけど、絆されるんじゃないわよ」

「それは大丈夫です。とっくに絆されていますので」

「あなたね」


 ジト目のノア様からそっと目を逸らした。


「久音。行こう」

「ええ。ではノア様、明日の昼には戻りますので」

「はいはい」


 既にステアに教えることを教えた那由多の手招きに従い、わたしはその場を後にした。




 ***




「那由多〜!久音〜!」


 ブンブンと手を振って近づいてくる永和を2人で抱きしめた。

 いつ会っても可愛い子だ。ここしばらく会えていなかったから、余計にそう感じる。


「ひさびさ!」

「ですね。今日は何します?」

「私は2人の希望に合わせるよ」


 那由多はそういいつつ、ご機嫌に笑っている。

 きっとわたしたちが何をしたいかなんて、那由多にはお見通しなんだろう。

 それが分かっているからこそ、わたしと永和は顔を見合せ。


「じゃあ……」

「遊ぶというより、話したい気分ですね。どこか落ち着ける場所に行きましょうか」

「いい所があるよ」


 あらかじめ見つけてくれていた場所に移動することにした。




「おー、いい眺め」

「ここなら誰も来ないでしょ」

「ですね」


 1年前の戦争で誰も近づかなくなった谷か。

 買ってきた弁当やジュース、少しだけどお酒を囲んで、わたしたちは何気ない話を始めた。

 最近あったこと、昔の話、好きだったゲーム、雑多にいろいろ。

 やっぱり、この2人といると恐ろしい速度で時間が進む。

 日が昇ってすぐに会ったはずなのに、再び時計を見るころには、既に綺麗な夕焼けが目に映っていた。


「えへへへへ、楽しいねぇ」

「酔ってます?」

「酔ってない酔ってない!」

「酔っぱらいはそう言うんだよ。やっぱり永和は弱かったか」

「那由多も顔赤いですよ」

「そうだね。酒は良いね、少しだけ馬鹿になれる気がする」

「わたしが今頭に思い浮かべている数字は?」

「743」

「全然馬鹿になってませんよ」


 そうはいったものの、少しだけ那由多もポヤポヤしている。


「逆に久音は全然だね」

「そう、ですね。あまり酔うという感覚は分かりません」


 そもそもあまり飲まないし。

 ステアが匂いだけでひっくり返るくらい弱いから、あまり近づけないようにしている。


「ふぃー……そろそろお開きかなあ」

「うん。それがいいと思う」

「このまま続けると……色々、鈍りそうですからね」


 わたしがポツリと呟くと、それを聞いた永和は少しだけ寂しそうな顔をした。


「……2日後かあ」

「ええ。すべてが決着します」


 その日は、ノア様が世界に対してある念話をすることになっている。

 それは―――「今日、自分が王となる」という宣言。

 それが、意味するのは。


「アタシらと、久音のとこの……相互不干渉の終わりね」

「……はい」


 決着の日。

 待ち望んだとも、来ないでほしいとも思う、文字通りの世界を賭けた「最終決戦」。

 それは目前だった。


「私としては、あいつら2人が共倒れになってくれるのが一番いいんだけどね」

「それは困ります」

「ねー。アタシも嫌かなぁ」


 この時、今日会って初めての静寂が流れた。

 数分、いやきっと数秒だったんだろう。

 ようやく口を開いたのは、やっぱり永和だった。


「アタシら、死ぬかもね」

「……ですね」

「あはは、大丈夫。私がさせないから」

「はは……」


 グラスに少し残っていた酒を一気に飲み干して、そこに水を注ぐ。

 口に含みながら那由多の方をチラリと見て。


「そのために()()()()()()()()()()()、ですね?」

「バレてた?」

「当然です。親友ですから」


 フロムめ、やってくれる。

 気付いているのはおそらく、わたしだけ。ステアがもしかしたらってくらいか。


「止めるつもりは?」

「特には。それがわたしたちの生存率を最も高める方法なのでしょう?」

「そうだね。ただの傍観者でいるよりかはよほど」

「ならいいんです。何をしようと、わたしは那由多が大好きですから」

「アタシも!」

「……そう。ありがとう、本当に」


 ゴミを片付け、荷物をまとめて、立ち上がった。

 2人の顔を交互に見て、わたしは笑う。


「また、遊びましょう。3人で。絶対に」

「もち!」

「約束だよ」


 わたしには、最後の大仕事が残っている。

 那由多はそれに気づいている。けど何も言わなかった。

 わたしなら出来るって、きっとそう信じてくれている。


「……永和、那由多」

「ん?」

「勝つのはわたしたちですよ」

「……へへっ、負けないから」

「私も、全力を尽くすよ」

Q.1番好きなスクエニのゲームは?


那由多「え?クロノ・トリガー」

久音「難しいですが……FF5、ですかね?」

永和「ドラクエ11。異論は認めない」

作者「ロマサガ2リメイク」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ