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第414話 那由多の研究成果

「はい、重大発表〜」

「そんなやる気なさそうに始まることあります?」


 数ヶ月、新たな大陸への偵察や、アルスシールの協力の元大量生産している武器の流通など、かなり忙しい日々を送っていた。

 そんな折、仲間全員に、那由多から召集がかかったのだ。

 久々に全員集まり、現況報告をし合うもつかの間、目の下にクマを作った那由多がローテンションで現れた。


「ちゃんと寝なきゃダメですよ。ただでさえ那由多は昔から限度というものを知らないんですから」

「ごめんごめん。1000年以上不死身だったせいで、寝ないと死ぬって意識がなくて」

「それで?この忙しい時に私たちを集めたってことは、余程の用事なんでしょうね」

「ああ、まあ」


 いつの間にか作っていたらしい目薬を刺し、目をぱちぱちさせた那由多が、指をパチンと鳴らした。


「まず前座なんだけど」


 すると横にあった大きい扉が開き、複数人の職員―――那由多並にボロボロだが明日には死ぬんじゃないだろうか―――が出てきた。

 そして彼らと共に出てきたのは、何やら見覚えのある鉄の塊。


「これは……」

「テスラの研究をベースに、私がいくらか改良を加えたロボットだ。ようやく満足の行くレベルまで完成した」


 見た目こそ、アルスシールで見たあれと大きくは変わらない。

 だがあれと違って非常に綺麗で、動きにもキレがある。


「硬度はオリジナルよりも低いものの、その分機動性と、積める武器の種類を大幅に増加させた。もちろん、最大の肝である魔法の再現も可能だ」

「へぇ……凄いわね」

「具体的な数値はこっちの資料に書いてある。量産についてはアルスシールに工場を建設しようかと」

「リーフ、今のアルスシール担当貴方よね。手配できる?」

「楽勝」

「それじゃ、これが素材。製法に関しては、知っている研究所職員を数名そっちに寄越す。人は雇っていいけど、具体的な製造法に関しては教えず、絶対に情報が漏れないよう整えて」

「了解。なんとかする」


 ……しかし、どう気になる。

 ベースは青と白。外側を青、内側を白で塗装してる感じだ。

 顔の真ん中には赤い丸。顔には何故か猫のような髭の落書き。

 しかも、人間で言うところの首にあたる部分には、黄色の何かが。


「……あの、那由多。これ……ドラ」

「おっと、それ以上はダメだよ」

「「「?」」」


 これ、絶対に兵器にしてはいけない塗装では?


「あの、この、お腹のところにある四……袋は……?」

「そこから仕込んだミサイルや爆弾が飛び出すんだよ」

「ええ……」

「どうしたんだクロ。すげえもんじゃねえか」

「なにか気に入らないところがあるとか?」

「いえ、気に入らないというか、気に入ってたからこそ思うところがあるといいますか」

「へ?」


 那由多も一応自覚はあったのか、少しわたしから目を逸らしている。

 わたしの記憶から何かを知っているのであろうステアも、無表情にどこか呆れを見せていた。


 ……好きだったな。鉄人〇団。




 ***




「で、本題の方なんだけど」

「え、あれ本題じゃねえの?」

「最初に言ったよ、これは前座って」


 ド……ロボットの話が終わったあと、那由多はわたしたちを研究所の奥へと連れてきた。


『もしかして……』


 ロボット兵器というオーバーテクノロジーすらも『前座』にしてしまうほどのもの。

 察しはつく。だが、早すぎる。


「まあ、薄々勘づいてるとは思うけど」


 那由多はいつの間にか作っていたらしい、カードキー認証を使って奥の方へと入っていき、わたしたちもそれに続く。


「スイピアのクローンが、魂の移植が可能な段階まで完成した」


 ……やっぱりか。


「んー?先生、完成はまだ2ヶ月以上先になるって言ってませんでした?」

「オトハ、いい事を教えてあげよう。予定っていうのは余裕を持って伝えておくものだよ」

「ねえちょっと」


 つまり、本当はもっと早く出来たと。


「予定っていうのは……」

「メモらなくていいです」

「ま、とにかく。一応試してみたけど、問題なく機能はした。後はスイピアの魂を突っ込めば完了だ」


 ……ん?試した?


「試したってどうやって」

「あ!久音〜!」

「あ」


 私の疑問は、出し切る前に遮られた。

 しかし相手が相手だ、腹は立たない。


「永和!」

「えへへ、久しぶり!」


 勢いよく飛び込んできた永和を受け止め、そのまま抱きしめる。

 柔らかい。可愛い。いい匂いする。

 ……ふと、わたしの親友は何故こうも愛らしいのかという難問がわたしの頭を駆け巡った。


「……なんでいんの?こいつ」

「私が呼んだ」

「貴方、フロムにバレたら殺されるわよ」

「バレなきゃいい」

「こいつは……」


 ……はっ。

 危ない、ぼーっとしていた。


「スイの分離のために来てくれたんですか?ありがとうございます」

「任せといて!」

『……立場的に敵なんだけどなあ』

『何を今更』


 わたしは一旦永和を離し、那由多に向き直る。


「それで、どうするんです?」

「スイピアと久音は長く身体を共有していた影響で、本来は引き剥がすのが難しい。だけど記憶を取り戻したことで、久音(親友)スイピア(異物)の境界線を明確に知覚できるようになっている永和なら、多少時間はかかるけど不可能では無いはずだ」

『異物って……』


 間違っては無いが。


「いける?永和」

「1時間くらい貰えれば多分?」

「じゃあよろしく。その間、他の連中は休憩室なりなんなりで待機」

「え、見せて貰えないんですの?スイのクローン体」

「悪いけど、私は自分の研究室に誰もいれない主義でね。今回は都合上、スイピアが入るのは仕方がないとして、他はご遠慮願う」

「あれ?でも那由多、この前わたしに『コーヒー持ってきてー』って研究室に運ばせましたよね」

「親友は例外」

「なるほど」

「こいつ……」


 それなら納得。


『じゃあ……』

「これでお別れ、ですね。スイ」

『死ぬ訳じゃないからね?』

少々リアルが忙しくて続きがかけず、次回更新を見合わせます。

次の更新は6月15日予定です。

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― 新着の感想 ―
なんとは言わんが件のロボットは風使い、銀河超特急が非常に好き
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