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第408話 親友と恋愛

誰だろうなあ、この話を公開予定のない自分用の小説入れに投稿して、それに昨日の夜気づいたバカはあ!!


……私です。

 目を落とす。

 破く。

 頭を抱える。

 また勇気を出して読む。

 破く。

 天を仰ぐ。


 ……そんなのを10回以上繰り返し、やがて周囲がピンクの紙吹雪に覆われた頃。


「……綺麗ね」

「諦観、書いている内容は汚いけど」


 最後の1枚の下半分にのみ、読む価値のある文が書いてあった。

 途中からしっかり読んでいなかったが、なにをそんなに書くことがあるのだろうか。

 僅かに興味が湧いたが、もう破いてしまったし、なにより読むだけで精神がすり減ることは分かっている。

 大人しく最後だけ読んでおこう。


「えー、『追伸。今後について取引したいことがあるので、一度話し合う場を設けたいと思っています。つきましては1週間後にそちらにホルンを向かわせるので、都合の良い日を聞かせてください』……ほお、1週間後に永和がここに」

「あの女、ホルンを寄越せばクロとナユタが守るから安全だと思ってるわね」

「苛立、その通りになるのが目に見えていることが腹立たしい」

『ねえクロ、絶対傷つけない約束でホルンを軟禁とか考えない?』

『はあ?あんなに可愛くて自由が似合う永和を閉じ込める?はっ倒しますよ』

『ええ……』


 そうか、1週間後か。

 1週間……長いな。前世で別れてからこっちで記憶を取り戻すまで20年近く会えていなかったのに、今ではたった7日が途方もない時間に感じる。


「1週間のうちに、出来る限りの手回しをするわよ。まずクロ、誰か連れて行っていいから全神国に正式な意思確認に行ってきなさい」

「かしこまりました。ルシアスとオトハと……那由多も出来れば連れていきたいですね」

「その辺はあいつと相談してちょうだい。アルスシールにはリーフ、貴方が向かって」

「承知。ステアを借りたい」

「いいわ。スギノキ……は、トップが全面協力してくれてるし問題ないかしら」

「定期的にあの双子を送り込む必要はありそうですがね」

「そうねぇ」


 ノア様は少し考えこむような顔になる。


「オウランに惚れたっていうから、姉の方とも相性がいいと嬉しい……くらいの気持ちだったんだけど、嬉しい誤算だったわね。あそこまで仲良くなるなんて」

「ノア様の傍から離れると死ぬとぎゃあぎゃあ叫んでたあの子が、自ら遊びに行くと言ってルシアスに送り迎えさせてますからね。少しは成長した、と思うべきでしょうか」

「まあ……うん……そうねえ……」

「意見、元が残念すぎて大成長したように錯覚してるだけな気がする」


 まあ……「常にノア様の近くにいないと死ぬ病」の病状緩和にはなった程度のことだ。

 -1000点が-700点になって、300点の加算という事実のみ見れば凄まじい進歩だが、いかんせんマトモまでの道のりはあと700点ある。

 なんて難儀な女だろうか。そしてなんでそんなのがあんなに優秀なのだろうか。


「驚嘆、しかしオトハといい、ナユタといい、クロといい、親友という関係は面白いもの。良い意味でも悪い意味でも人を変える」

「さあ……正直、今挙げられた全員、特殊例な気もしますが」

「同意、それは否定しない。だけど強い思いがその人物に影響を与えることはたしか」

「それはまあ、多分そうですね」


 リーフの言葉には一理ある。

 わたしも、もし那由多と永和と出会わなければ……と考えたことはあった。

 どういうルートを辿っても最終的に賽の河原で石積みをしていたので早めにやめたが。


「意外です。リーフがそういうことに興味を持つとは」

「?疑念、そういうことって?」

「友人、親友、恋人、結婚、そういう類のものには興味がない手合いかと」

「……反論、クロはウチをなんだと思ってる」

「なんかすみません」


 史実に基づいた意見だと思っていたんだけど。


「嘆息、ウチとてパートナーが欲しいと思う時くらいある」

「おお?」


 もしかして、これはあの男、ワンチャンあるのでは。


「困苦、最近はフロム様が良い人はいないのかと聞いてくる。そう何度も言われたら少し意識もする」

「ほう。まあ貴方も年頃の女性ですからね」

「回顧、それでとりあえず問題を先送りにしようと、誰かの名前を挙げておこうと思って」

「ふむ」

「ノアと答えたら怒られた」

「えっ」

「なにしてるのあなた」


 ……男共より先にそっちを挙げたか。

 しかしフロムの怒りも最もだ。強くて才能に溢れていること以外は基本的にダメ人間だからな、この御方は。

 大切な義娘がその毒牙にかかりそうとなれば……うん。


「追憶、そこで別の人にしようかと思って『じゃあクロ』と言ったら」

「え?」

「ちょっと」

「『ああ、そっちなら良い』と言われた」

「何故!?」

「依頼、というわけで何か()()()()()()機会があった時、助けてもらうかもしれない」

「嫌ですが!」

「むう」


 そんな困り顔をされても!

 何してくれてるんだこの娘、フロムが本気にしてたらどうする!


「というか今更ですが、別に恋愛やら結婚やらの話じゃないでしょう!親友がどうって話じゃないんですか!?」

「……?疑問、そんなに双方は違う?」

「違いますけど!?」

「知見、そうなんだ」


 マジかこの人。


「質疑、じゃあ何がそんなに違う?」

「へ?……まあ、恋愛感情の有無じゃないですか」

「理解、それは分かる。だけど恋愛感情と友情の違いって、そんなにある?」

「はい?」

「意見、クロとナユタとホルンを見てると、そこらの恋愛的関係にある人よりも繋がりが深く見える。なのに3人は親友と自分たちを定義している。よく分からない」


 ……答えにくいことを。

 たしかにわたしと那由多と永和は親友だ。一般的な定義とはだいぶ違う気もするが、それは間違いない。

 だけど恋愛感情があるかと言われれば正直否だ。


 依存している。愛している。だけどそれは、どちらかと言えば家族愛に近いものだと思っている


「うーん……」


 しかし、たしかに傍から見れば、それは付き合っているとかそういう風に見えるのかもしれない。

 ベタベタくっつくのも、1日中話しているのも、なんならキスとかも普通に抵抗なく出来る。

 ……たしかに恋愛感情と、大きな違いなない気がしてきた。

 わたしが答えに言い淀んでいると。


「『一生この関係でいたい』って思うのが親友。『その関係よりも上の関係になりたい』って思うのが恋愛でしょ」


 ボソッと。

 ノア様がわたしに助け舟をだすようにそう言った。


「たしかに大きな違いではないかもしれないけど、明確ではあるわ」

「納得。何となくわかった」


 ……なんだろう。

 気のせいかもしれないけど。

 今のノア様が……少し、寂しそうだったような。

Q.リーフの好みのタイプは?

A.いつも本気な人。


Q.意外と普通なんですね?

A.そうですね。いつも本気(でウチと戦い続けてくれる、強くて元気)な人です。

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― 新着の感想 ―
一生仕えていたいのがクロで、もう少し近づいて上の関係性になりたいのがノア様……ってコト!?
フロムさんクロへの評価べらぼうに高いな。 未來の皇帝と光魔法の聖女なら政治的観点から見て婚姻も良い手、実力主義の帝国にも合う。けど帝国が私物化されそうだしノアは仕事しないだろうな。 確かにクロを捕まえ…
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