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幕間 親友たちのお茶会

すみません、次から最終章と言ったんですが、最終章はノンストップで進めたいので途中で入れる予定だった平和話を幕間としてここに入れます。

「久音ー!那由多ー!」

「あ、永和来ましたね」

「分かりやすいねぇあの子は」


 ブンブンと手を振る可愛い親友に手を振り返す。

 ああいう感情表現が全力なところも永和の良いところだ。見ていて飽きない。


「久しぶり!」

「先週会いましたけどね」

「1週間だよ?遠いって!」

「たしかに」


 永和だけが別行動となっている現状に思うところがないわけではないけど、仕方がない部分はある。

 けど今日は敵味方中立の関係ではなく、親友として、遊ぶために集まった。この3人で集まる時だけは、わたしは先のことや主のことを考えず、自由に過ごすことが出来る。


「どうします?前と違って何も計画していませんけど」

「どこかでお茶してそこで決めようか。お腹空いたし」

「賛成ー!」


 またこの3人で、こんな時間を過ごせるなんて思っていなかった。

 前世でのことを考えると涙すら溢れそうになるが、こんな素晴らしい日にそんなことして気を使わせたくない。

 ぐっとこらえよう。


「では行きましょうか。永和、良い店知りませんか?」

「あるよー。えっとね」



 ***



「……そういえば気になったんだけど」


 結局話が逸れに逸れまくり、何も決まっていない。そんな時、那由多がぽつりとつぶやいた。


「私たち、前の世界で死んだ時期はバラバラだよね。私が2013年9月17日だったはずだけど」

「そうでしたね」

「忘れもしないよ。本当に」


 そう、忘れもしない。

 那由多の誕生日を祝ったその日の夜だ。那由多が殺されたのは。

 思い出すだけで吐き気と怒り、悲しみがこみあげてくる。

 こうしてまた会えたから良かったものの、あの時確かに、わたしの人生は彩の半分を失った。


「こういうこと聞くのは酷かもしれないけど……2人は?」

「わたしは2017年の……11月でしたかね」

「アタシは2021年の1月だよー」

「そうか……」


 自分の死は、正直どうでもいい。

 何故ならこの3人の中で、わたしだけは自ら命を断っている。是非はあれど自らの選択だ。後悔はない。

 けど2人は違う。殺されたのだ。それも、実の親に。


「2人は、その時のことが、その」

「トラウマになったりしていないかって?ないない。久音と永和への申し訳なさと、親の愚かさへの呆れしかなかった」

「アタシもー。クソ親父は刺し違えてぶっ殺したから悔いなし。母さんが気にならなくもないけど……2人に比べたら別にー」

「久音こそ大丈夫?」

「わたしも特には。まあ痛かったですが、親の今後の不幸と那由多に会えるかもしれないという希望があったので」

「実際こうして会えたから良かったよ」

「ほんとほんと。那由多には感謝ばかりだねぇ」


 ケラケラと笑う2人に、わたしも釣られて笑ってしまった。

 ああ、幸せだ。こうして親友と話が出来るだけで。


「ところで、なんでそんな話今したの?」

「いや、それなんだよ。私が死んだあと、あの世界がどうなったのかちょっと気になって」

「ああー」


 なるほど。

 たしかに、自分の死後起こったことなんて、普通なら絶対に聞けないことだ。

 知的好奇心が豊富な那由多なら気になって当然、か。

 そうだな、那由多が気になりそうなニュースや事件……あっただろうか。


 あ。


「サ○シに、ピカ○ュウとリザー○ン以来の相棒が現れましたね」

「なんだって!?」

「あーゲッコ○ガね」

「なんだそいつは!?」


 XYの発売よりギリギリ前に那由多は死んでしまった気がしたから、知らないだろうと思ったら案の定だった。


「あとこ○亀が終わりました」

「そんな馬鹿な!?」

「いや、マジマジ」

「那由多が『これは来る』と言っていた暗殺○室も案の定大盛り上がりでしたね」

「いやー、まさかあの子がねぇー」

「くっ……一体何が……!?」


 いくら超天才の那由多といえど、一流クリエイター全員の脳をコピペは出来ない。完成度の高い物語なら猶更、その先を予測できなくなる。

 故に那由多は、自分の理解が及ばないものとして、漫画や小説が好きだった。


「あとでステアに、わたしと永和の頭の中の情報をコピーしてもらいましょうか」

「あーその手あったね」

「それだ」


 わたしも那由多の影響で色々と見ていた。特にジャ○プは、半年に1回くらいまとめて誰かがゴミ捨て場に捨てていたので、見つからない所に隠して読むのが、那由多が死んだ後の数少ない楽しみだったな。


「この中で1番長生きしたのは永和なのですよね。わたしが死んだあとってなにかあったんですか?」

「ん~~~……」


 永和は頭を捻り。


「あ、そうそう。鬼○の刃ってジャンプの漫画がえぐい社会現象になった」

「それって……そういえばわたしの晩年頃、絵は粗削りでしたが面白かったやつがそんな名前だった気が……」

「あー多分それ。アニメすんごかったよ」

「へぇー」

「あと、東京五輪が延期になった」

「えっ?」

「なんで?」

「それがさあ。新型なんちゃらウイルスってのが流行って、世界中すんごいパンデミックになっちゃったんだよ。不要不急の外出は禁止、外行くときは必ずマスク、学校も会社もほとんどオンライン!って感じでさ」

「いやいやいやいや」

「まったく、永和は冗談が上手いですね」

「いや、ほんとだって」

「……ほんとに?」

「そうだよ」

「やっばいじゃないですか」

「テレビのロケとかも全然見なくなっちゃってさぁー、ほら、日曜夜の世界中旅するあの番組あったじゃん。国外いけなくなっちゃったもんだから」

「終わったんですか!?」

「いや、続いてた。うまくやって」

「なんだ……」


 しかし、わたしと永和の死までの3年と少しでそんなに色々起こるものなのか……。


「あ、あれもそうか。年号変わった」

「うそぉ!?」

「平成じゃなくなったんですか!?」

「うん、令和ってなった」

「れいわ」

「あと消費税10%になった」

「うわぁーついにか」

「きついですねぇ……」

「なんか令和になってから大事件ばっか起きるって言われてたなー」

「いや、そりゃ聞いてるだけで数々の出来事だもの」

「当事者はたまったものじゃないでしょうね」

「だねぇ」


 あの世界であのまま生き続けていたら、わたしたちもその影響を食らっていたわけか。

 なんだか、複雑な気分だ。


「そういう意味だと、こっちの世界はいいよね。文明の発展だけちょっとあれだけど」

「魔法があるから利便性を道具に求めなかった弊害だね。歴史に対して発展が遅れているのは否めない」

「ですがそれ以外は悪くないですよね。差別はあれですけど、食べ物もそこそこ口に合いますし、魔法があるおかげで昔は出来なかったことが色々と出来ます」

「結果論だけど、最初に死んだのが私で良かったね。2人をこっちに呼べて満足だよ」

「いやー、本当にありがとう」


 前世トークで盛り上がっているうちに、テーブルに乗っていた食べ物が全部消えてしまっていた。

 追加注文……いや、このまま話すよりは別の所を見て回りたいな。


「さて、どこ行きましょうか。全然決めてませんでしたね」

「あー、近くにあれあるよ。温泉」

「え、マジですか」

「共和国連邦は色々と充実していていいね」

「じゃあそこ行きましょうか」

「久しぶりに背中洗いっこしよー」

「もう、子供じゃないんだから」

「着替えどうしましょう」

「途中で買ってっちゃえば?」

「ですね」


 まだ時間はある。ゆっくりだらりと過ごすか。

 わたしたちは会計を終えて、足早に次の目的地へと向かった。

ちなみに3人は2003年生まれです。


さて、今度こそいよいよ次から最終章スタートです。

もう少しだけお付き合いください。

以下、次回予告的なやつです。


↓↓↓


「これでこちらの大陸の4割は制圧完了ですね」


「久音~!会いたかった~!」


「2人を分離しないと、少々まずいことになるね」


「リーフ!僕と……!」


「あなたは、わたしがお相手します」


「……無理だよ。だって、狂っちゃうくらい愛してしまったんだから」


「ナユタ。なんの、つもり?」




「あなた……私と結婚する気ある?」




最終章『混色の征服編』、次回より。

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嵐の前の静けさ...みんなもっといちゃつけよ!って思ったけど、どっかの髪チェンだいすきお姉さんがいちゃつこうとしてたのが元凶だからなんとも言えないな...
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