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第381話 復活の兆し

 わたしの魔法は当然の如く那由多にかわされる。

 だけど直後に放った時間魔法は少し反応が遅い。やっぱりスイではなくわたしが時間魔法を使うことで、先読みに支障をきたしているらしい。


 流石の那由多も、常時超人的な頭脳を全力で使っているわけじゃない。そんなことをしたら絶対に脳に何らかの障害が起こる。

 だけど那由多は、ここまでかつてないほど長時間頭を回して戦っていた。恐らく処理能力はかなり鈍っている。わたしの動きを読むのもかなり時間がかかるはずだし、土人形を今日習得した永和は言わずもがな。

 今までは長い付き合いの中で得た情報からわたしたちの動きを予測していたはず。だけどそれも限界が近い。

 更にノア様の最高位魔法の効果で言霊魔法はろくに使えず、再生も出来ないので怪我によって大分動きも鈍った。


「《時間拘束(クロノバインド)》《闇拘束(ダークバインド)》!」


 二重の拘束は抜けられる。

 しかし明らかに遅い。このまま躱し続けて永久化の復活まで耐える気か。


「永和、ノア様を全力で守ってください!」

「分かってる!」


 ノア様は今魔法を使えないけど、永和が闇人形で守ってくれている。

 今あの人が倒れると、魔力消去も闇魔法の強化も失う。それだけは避けなければならない。


「ふむ……」


 那由多は何かを考えながら、わたしたちの全力をものともせずにいなし続けていた。

 何を―――?


「《縮め》」

「え?」


 突如使った言霊。

 未来視で見える光景はあくまで「今の視界の2秒後」。視界の外に出られると未来を観測できない。

 那由多が消えることは分かっていても、どこに消えるかが咄嗟に分からなかった。


「まずっ……」


 だが狙いは分かっている。ノア様しかない。

 再び時間魔法でけん制して、カウンターで闇魔法を―――!


「え?」


 振り向くとそこには……那由多はいなかった。

 どういうことだ?ノア様に近づくんじゃないのか?

 ちがうんだとしたら、どことの距離を縮めた……?


「ごめんね」


 那由多の声にばっと横を向くと、そこには。


「かっ……」


 永和の首と頭を瞬きの間に叩き、崩れ落ちる永和を支える那由多がいた。


「久音ならハルの方を警戒すると思ったよ。私は永和を攻撃したがらないことも分かっているだろうしね」


 永和をゆっくり地面に横たわらせ、那由多は笑う。


「くっ!」


 時間魔法と闇魔法を併用して足止めしようとするが、わたし1人では止めきれない。

 那由多が超速でノア様の元へと迫っていく。

 読み違えた……先に護衛をしていた永和を気絶させるのが狙いだったか!


 おそらくもう、那由多の言霊は打ち止めだ。だけどそれはあくまで魔力を消す効果が働いている今だけ。それがなければもう1,2回使えるはずだ。

 ノア様が倒れて魔法が解除されれば、無条件で言霊が効いてしまうわたしはいくらでも無力化されてしまう。


(間に合うか……!?)


 時間魔法を放とうとするが、本当に五分だ。

 ギリギリすぎる。出来るか、わたしに……!


「今度こそ潰れろ、ハル」


 考えている時間なんてない、魔法を―――、



 ……え?



「ぬかったわねナユタ」

「なに?」


 信じられないことが起こった。

 那由多がノア様に触れる直前、その間に誰かが割って入った。

 その人物は那由多の腕を掴み、そのままもう片方の腕で頭に手を添える。

 そしてそのまま、恐ろしい速度で那由多を投げ飛ばした。


「かはっ……!?」


 一瞬の出来事に那由多ですらも受け身を取れず、数秒動かなかった。


「ウ、オェッ……」


 頭を軸で投げ飛ばされて平衡感覚が狂ったか、立ち上がって少し吐いた。

 だけどその目は突如乱入してきた者を見据えている。


「どういう、ことだ……!?」


 割って入ったのは。


「リンク……?」


 《死ね》の言霊によって仮死となっていたはずのリンクだった。


 何故動ける?彼女のリセットはおそらく任意発動だ、即死させられたあの状況で発動できるとは考えづらい。

 事実、たしかに彼女の生体反応は消えていた。

 だけど那由多がノア様に攻撃を仕掛けた途端、突如リンクの生体反応が戻ったのだ。

 一体何が。


「あーーー、クッソ……勝つためとはいえアタシがこんなこと……!」


 いや、その前に。

 那由多が《死ね》を使った直後、もう1人。

 生体反応が消えていたにも関わらず動いていた子がいた。


 ―――そうか。そういうことか。


「永和!」

「……なるほど」


 ついさっき那由多の攻撃を食らって気絶したはずの永和が、平然と立ち上がった。


「……私が気絶させたと思ったあれは、既に疑似魂か!」

「そゆこと」


 死霊魔法の真骨頂、疑似魂を入れることによる死体人形の作成。

 更にこれを応用することで、自分にそっくりな疑似魂を作り、本体の魂の代わりに自分の肉体に入れることで死体人形と同じように自分の身体を遠隔操作できる。

 その間は生体感知にも引っかからず、死体人形と扱われるために痛みや気絶という概念すらない。

 あの時あえて那由多の攻撃を受け、気絶したように見せかけた。

 そして本体の魂は―――。


「死霊魔術師の魂は、適合する死体ならば侵入して操作できる……つまり……!」

「そ。疑似魂で時間稼いでる間に、仮死ってるリンクの身体に入ったんだよ。適合するかは賭けだったけどね」

「それでリンクにかけられた私の言霊をリセットして起こし、自分の身体に戻ったのか。……油断したな。死霊魔術師が他人の身体を使えることは知ってたけど、誰の身体を使っても死霊魔術師となるから、他人の身体を使って自分の分身を作っているようなものだとイメージしていた。……まさか、転生者を乗っ取ると転生特典も使用可能とはね」


 これはすごい。

 リンクが復活し、リセットが使えるならだいぶ楽だ。


「……てことは……ホ、ホルンあんた、リンクの身体に勝手に入って動かしたってコト!?いやあああ!変態!最悪!」

「ふっざけんなテメー、勝つため以外にんなことするわけないだろ!アタシだって死ぬほどイヤだったわ!!名誉棄損で訴えるぞ!!」

「こっちの台詞だわ、あんたマジでぶっ殺すから!へ、へんなとこ触ってないでしょうね!」

「転生特典以外ピクリとも動かしてねーし動かしたくもねーよお前の身体如き!お前こそ那由多を止めたらぶっ殺して死体人形に変えて、見るも無残なファッション着させてやるからな!!」


 ………。


「あなた方仲いいですね」

「「仲良くないっつの!!」」


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