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第341話 ホルンvsリンク

「ルクシア様!あのままにしておいてよろしいのですか!?」


 ケーラの叫ぶような意見がルクシアに飛ぶ。

 木々が倒れる音と何かが砕けるような音を聞きながら、ルクシアは張りつめたような顔で沈黙していた。


「主君様、止めるべきです。今のリンクはおかしい。元々確かに仲が良いとは言えない2人ではありましたが……さすがに違和感があります。いつものリンクならあのようなことはしない」


 メロッタもケーラに加勢するように言葉をかける。

 ルクシアはふーっと息を吐き。そして、口を開いた。


「……このまま、リンクに任せましょう」

「な、なにを……いえ、貴女様のお考えです。何か理由があるのでしょう」


 発された言葉に一瞬意見をしようとしたケーラだったが、直後に思い直す。

 ルクシアの4人の側近の中で最古参の経験が、ルクシアが意味なく誰かに大事なことを任せる人間ではないことを告げていた。


「……ごめんなさい、リンク。貴方に背負わせてしまって」


 誰に言うでもない小さなルクシアの声を、2人は聞き取っていた。




 ***




「《物体間短縮(シンプルシュリンク)》」

「1号!」


 木同士の距離を縮めて、間にいるアタシを封じようとしてくるリンクの魔法を、巨大猿の死体人形で受け止めさせる。


「(1号、リンクを止めろ!2号、跳躍して攻撃!5号は前に使ってた広範囲ブレス、6号はアタシを守れ!)」


 少しずつ集まってきた、この大陸の各所に散りばめていた死体人形が少しずつ追いつき始めた。

 現在アタシが操ってる死体人形は27体。うち、6体が集まってきた。

 だけど16体はあまりに遠すぎてちょっと間に合いそうになく、もう5体もすぐにはこれなさそうだ。

 この辺りは闇魔法の影響下だから魔獣はいない。つまり現状の6体を倒されれば、死体人形がなければ攻撃手段が激減するアタシは負ける。

 集まってきた6体の魔獣にそれぞれ番号を振り直して指令を出しやすくし、3号と6号は常にアタシの護衛、他4体を操って畳みかける。


「《縮地》」

「(っ!2号後ろへ!)」


 2足歩行するトカゲの魔獣である2号。しかし、その手のやつはリンクが最も得意とする相手だ。


「くそっ……なんだあいつ、珍しく初手から本気出しやがって!」


 2号は後方に下がったが再び《縮地》で距離を詰めたリンクに手を取られた。

 膂力で勝るはずだが、2号はリンクが軽く腕を捻っただけですっ転び、そのまま掴まれた右腕をへし折られる。

 1号を加勢に向かわせる……が、体長3メートルを超す巨体の1号のパンチをリンクはふわりと受け止めた。

 まるで子供を大人が受け止めるかのように優しく。

 だがそれは一瞬。リンクが目にもとまらぬ速さで腕を動かし、1号のパンチは代わりに自らの顔にめり込んだ。


「ちっ、やっぱ本気のアイツに人型はだめだ!」


 久しぶりに見た。極めて癪だが、芸術的とすら称せるほどの動きだ。

 これもまた極めて腹立たしいが、無駄に整ったツラからは想像もできないほどに洗練された暴力。


「はっ!このリンク様にこんな直線的な動きで攻撃なんざ、やっぱ記憶とやらを取り戻してもホルンはホルンね!」

「どういう意味だコラ!」


 あれは魔法じゃない。アタシらの元にリンクが来る前から、あいつはアレを使えた。

 ありていに言ってしまえば柔術。それも極めて高度な。

 身体能力自体は平凡なリンクが才覚と努力で培った、神業の域に到達しているであろう最強の技だ。

 だけど普段のアイツは、柔術を滅多に使わない。

 あの御方の命令ですら渋々使う。命令が無ければ非常時以外は使わない。

 何故そんな、自分も望まない強さを得たのかは分からない。あの御方ですらだ。そこだけリンクは頑なに話そうとしない。

 だから誰も深入りしなかった。ただ、その強さだけは自他共に認めている。

 何せ、”魔法無し”の条件下で戦えば、アタシらは勿論。

 ルクシア様ですら、10回中8回は負ける。


「1号怯むな!踏み潰せ!」

「《縮地》」


 リンクの技の弱点は、どれだけ洗練されていようと所詮は人の身で使う技術だから近づかないとどうにもできないことだ。

 かつての世界にいたなら無双を誇ったはずのリンクの技術も、この世界では重要視されない。何故なら遠くから魔法で焼くなりなんなりできてしまう。この世界は魔法がほぼすべて。それを無視して身体能力や技術で張り合えるのなんて、久音の仲間のルシアスくらいだ。

 だけどその弱点を、リンクは伸縮魔法によって補っている。《縮地》で遥か遠くにいる相手だろうと距離を縮めて自分の間合いに引き入れ、魔法を使う間もなく潰される。

 アタシがやられてないのは、機動性に優れる3号と6号をどちらも護衛にしているから。まずは周りから消して自分の敗北のリスクを減らす算段だろう。


「(5号、収縮ブレス!)」


 上空から5号に攻撃させる。広範囲攻撃ではなく、リンクに的を絞った高圧縮のレーザー攻撃だ。

 だがリンクはこれも躱す。それどころか1号の巨体を投げ飛ばし、レーザーにさらしやがった。

 1号は倒れ、レーザーで落とされた右腕が宙を舞った。


「クッソ……!」


 死体人形が潤沢にあれば、対個人戦闘がメインのリンクは物量で圧殺できるが、今のこの状況ではアタシが圧倒的に不利だ。

 少数操作の時にしかできない細かな動きで攻めるしかないが、どんな動きをさせようとリンクに比べて圧倒的に劣る。


「(2号、千切れた右腕をリンクにぶん投げて視界遮れ!5号、それをカモフラにしてもう一度レーザー!)」


 命令通りに死体人形が動くが、リンクにはやはり通じない。

 やはりかわされ、更に1号の腹にとりつかれた。

 そして息を吐き、両手のひらを1号の腹に置き。


 ―――パンッ。


「うおっ!?」


 何もしていないように見えたのに、1号の身体内部がはじけ飛んだ。

 身体のあちこちに穴が開いて血が吹き出す。試してみたが神経系、筋肉、骨の全てをズタズタにされたようで芋虫のようになって動かせない。

 アタシの死霊魔法は魂は疑似的に使い、脳のリミッターも外れてかなりのパワーを引き出せるようになるが、身体を動かすための器官は既存の物を利用する。つまり身体を壊されればアタシは操作出来なくなる。

 1号を潰された。


「次」


 今だ傷一つ負っていないリンクの顔が、えらく真剣だった。

予定詰まりのため次回投稿を見送らせて頂きます。最近多くてすみません。

次回更新は5月24日予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここにきてまさかの追加設定、一気に多すぎていろいろが霞む。 戦力のゲシュタルト崩壊が起こりそう。
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