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第311話 1000年前の怪物

前回、予約投稿忘れました!すいませんでしたあっ!!!

「《不死者傀儡(スレイブアンデッド)》!」

「おおー」


 複数体の強力なアンデッドを同時に操り、他のアンデッドや湧きだした魔獣を超速で狩っていく様子を見て、わたしは思わず拍手をした。


「便利ですね、死霊魔法」

「いやー、アンデッド相手にメタなだけだよ。1on1だとあんま強くないしね。ま、こういう状況ならお任せですよっと……っとお!?」


 しかしそのアンデッドは、凄まじい速度で動く鎌鼬のような魔獣によって切り刻まれる。

 そして鎌鼬はわたしたちにも襲い掛かろうと助走をつけ。


「《(デス)》」


 こっちに跳んでくる前にわたしが殺し、無事ホルンが死体人形へと変えた。


「いいねえ、闇魔法」

「いえいえ、使ってみると意外と不便が多いものですよ」


 ……なんだろう、この感覚。

 凄まじく魔法がかみ合っている影響だろうか。ものすごくやりやすい。

 アンデッドはそのまま、生物はわたしが殺し、死体人形へと変えて敵を駆逐し、殺した生き物もまた死体人形へ。

 こんな感じでみるみるわたしたちの戦力は増えていく。


「ただ、増やしすぎても部屋に入りきらないし邪魔だよね。強いのだけ残して支配切るか」

「アンデッドの操作を切るとまた襲ってくるのでは?」

「あーそれは大丈夫。アンデッドってさ、死者の魂の未練とかから発せられる瘴気―――言うなれば負の魔力みたいなのが濃く煮詰まって、それに触れた死体が再び魔力を持っちゃうことで動き始めるじゃん」

「そうですね」

「でも疑似魂は生者(アタシ)の魔力で創ってるから、体内に通常の魔力が流し込まれて付け焼刃の瘴気は霧散するんだよね。だからアタシが魔法を解除すりゃ、疑似魂も瘴気も失ったただの死体に戻るってわけ」

「なるほど、では安心ですね。どうせこの後も強いのは出てきますし、上位10匹くらい残して後は捨てましょうか」

『いや、それよりいい手があるよ。四方全方向に死体人形を向かわせて、移動先を確かめればいい。死体人形と操ってるアンデッドの位置は把握できるんでしょ?』


 スイ曰く、この遺跡―――否、神殿は遥か昔から存在していて、しかも空間同士の繋がりがぐちゃぐちゃになっているらしい。

 しかも何階層にも分かれていて、一番上でも出入り口に繋がっているとは限らないそうだ。

 なるほど、たしかに四方に死体人形を放てば、どこに繋がっているかをいち早く把握し、一階層を見つけて出入り口がないかを調べられるわけだ。


「とのことです」

「採用。なんならもっと多めに出して、2、3手先まで確認しようか。えーっと何体必要?」

「入って来た道が除かれるので、3手先までなら3×3×3で27ですね。でも途中で倒される可能性を加味してある程度の強さのアンデッドを複数体護衛に付けるべきだと思います」

「おけおけ、じゃあほいっと」


 ホルンが少し指を動かすと、3方向にアンデッドが向かっていった。


「広がるまでちょい時間かかるだろうし待機だね」

「ですね」

「それでさ、この機会だからちょい聞きたいことがあるんだけど」

「奇遇ですね、わたしもです。前世の件ですよね?」

「そそ。やっぱアタシが異世界人だって知ってんのか」

「ステアに聞きました。1周目でわたしに話していたと」

「1周目?あー、ご主人様が言ってた時間魔法のタイムリープ?マジであったんだ」

「ええ、それを経験しているせいで随分とステアはあなた方に敵意剝き出しですよ」


 わたしがそう言うと、ホルンは明らかに嫌そうな顔をしてうえっと声を出した。


「勘弁してよ、あんなバケモンみたいなオーラしてる子に狙われるとかさあ。まあちょい話それたけど、実際前の世界ではどんなんだったの?てか覚えてる?」

「まあ、大雑把な知識はあります。……ただ、かなり虫食いなんですよ。変なところは覚えてるのにかつての名前すら思い出せなかったり」

「えっ、そっちも?アタシもなんだよね、クソ親父のこととかは覚えてんのに、母親の顔とか曖昧なの」


 ホルンの言葉が、わたしは顔には出さなかったものの少し引っかかった。

 もし、ホルンがわたしと同じ境遇ならば、この質問の答えも予測できる。


「あなた、転生特典というものに覚えは?」

「転生特典?チート能力的な?えっ、なにそんなん持ってんの?」

「いえ、わたしはないのですが。持ってます?」

「ないよ、あったらもっと派手に使ってるよそんなもん」


 嘘をついている様子はない。どうやら本当に知らないようだ。

 つまり、ホルンはわたしと同じ。この世界の正常な転生から外れた、イレギュラーのような存在ということになるのではないか。


「別に共有したところでわたしたちの戦いに影響はないと思うので話しますが、どうやらこの世界には、地球で偉人と呼ばれていた者が転生しているようです。確認できている限りでは、二コラ・テスラとジャンヌ・ダルクがこちらに来ています」

「はあ!?テスラってあのフィラデルフィア計画の?ジャンヌとかアタシ、ゲームでめっちゃ好きだったよ!?」

「その2人、かつての世界の名を名乗っていたということは、少なくともわたしたちよりは前世の記憶を多く持って生まれていたことになります。そして、2人とも転生特典というものを持って生まれて来ていたそうです」

「はー、マジかい。ん?じゃあアタシらなに?天才だった覚えとかないんですけど」

「そういう疑問が出ますよね。結論から言えば全く分かりません」

「ええー……」


 そんな反応をされても。


「先程、父親のことは覚えていると言っていましたが、他に覚えていることは?」

「んーそれがさ、変な記憶しかないんだよねえ。あれ?アタシの人生ってここまで薄っぺらかったっけ、みたいな……」

「母の顔を覚えていないと言っていましたが―――もしかして、大切な記憶程失っているのでは?」

「ああ、もしかしてそういうこと!?なるほどねえ」


 この点もわたしと同じ、か。

 随分と共通点が多い。なにか転生の条件が関係している?

 もしや、転生には2種類あるのだろうか。偉人たちのように完全な前世の記憶と転生特典を持って生まれるパターンと、わたしたちのように凡人が記憶を欠損した状態で転生するパターン。

 これなら辻褄はあうが、何かが引っ掛かる。

 まるで、重要なものを見落としているような。


「ん?」


 頭を悩ませていると、ホルンが戸惑うような声を出した。

 一旦思考を止める。何かがあったのかもしれない。


「どうしたんですか?」

「いや……少し先に変な部屋があってさ」

「変な部屋?」

「四方に道が分かれてなくて、行き止まりみたいになってる。壁際を歩けって命令を出したんだけど、他の部屋より狭いみたい。しかも、ものすごい下の方に座標が反応してる。もしかして最下層なんじゃない、これ?」

『それって……!』

『スイ、何か心当たりでも?』

『え、あ、いや』


 スイはまたお茶を濁そうとしたが、そうもいかない。

 スイが何かを隠しているのは分かっている。ここからの早期脱出とこの場所で何があったのかを知るためには、吐かせるしかない。


「早く言ってください。1000年前、ここでなにがあったんですか?」


 わたしが声を出して詰め寄ると、スイはしどろもどろになりながらもようやく口を開いた。


『……この神殿は、かつて主様とルーチェすら恐れた、とある怪物が封印されてるんだよ』

「怪物……?」

「なに、どしたん?」

「ああ、少し待ってください」


 わたしはホルンにも分かるよう、スイと身体を入れ替えた。


『それで?』

「その怪物は、主様によってこの神殿の最深部に押し込められ、当時の《封印魔術師》《結界魔術師》《耐性魔術師》《顕現魔術師》、そして主様の《闇魔法》、ボクの《時間魔法》によって、この神殿の外に出ることが出来ないように封印された。ただその怪物を封じるため()()に張られた超複合封印は、流石のそいつも破ることが出来ず、今も問題なく起動しているみたいだね」


 怪物―――この大陸に住む魔獣ということだろうか。

 確かに魔法全盛の1000年前は、今よりも遥かに高密度の魔力が大陸に溢れていた筈。

 強力な魔獣が突然変異で生まれていてもおかしくはない。


『どうします?行き止まりのようですし、迂回しましょうか』

「……いや、行ってみたいんだけど、いいかな」

「ん?なんで?」

「主様が随分と心配してるみたいなんだ。アレが外に出る可能性があるんじゃないか……って。だから死体を確認しておきたい。一度神殿の外に出れば、もう一度最深部へ行けることはほぼないしね」


 なるほど、ルクシアと戦う前に確認を取っていたのはその怪物のことだったのか。

 たしかに、ノア様の心労を1つ減らせるならそれに越したことは無いかもしれない。


『最深部へわたしたちが行くことで、封印が解けることは?』

「ないよ。そもそも、封印はその怪物を封じるためだけのものだから、ボクらは素通りできるんだ」

「ならちょいと言ってみようか。うちのご主人様すら恐れたって話なら、アタシとしても無関係じゃないしね」

「分かりました。では少し見ていきましょうか」


 身体を戻し、最深部へと続く道へと進んだ。

予約投稿を忘れた件についての禊として、裏設定を開示します。


リンクとホルンは食べ物の好みと、食事をするときの食べる順番がほぼ一緒です。

てぇてぇ。

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