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第308話 全員集合

「ふぅ……痛かった。ありがとうございますご主人様」

「原因を作ったのはルクシア様なのですからお礼を言うことではないと思いますがね」

「ホルンのくせにずるいわよ、そんな至近距離で治してもらうなんて!ホルンのくせに!」

「じゃあテメーをボロボロにして息絶える瞬間を至近距離で眺めてやるよ、アタシがな!動けないのをいいことに散々言いたい放題言ってくれやがって、今日という今日こそ本気でぶっちめてやる!」

「やれるもんならやってみなさいよクソゾンビ!原型が残らないくらいに縮めてやるわ!」

「やめろお前たち、目の前に相手がいるのだぞ!」


 ……なんだろう、この既視感。

 まるでわたしたちを見ているような騒がしさだ。


「なんか、気勢が削がれますわね。こういう時くらいちゃんとしてほしいものですわまったく」

「お前が言うか」

「あなたが言いますか」

「ちょっと!」


 ルクシアの陣営の希少魔術師は、ルクシア本人を含めて5人。

 こちらはスイを含めて8人。5対8だが、ルクシアという圧倒的な存在がいることを鑑みればこれでも少ない。

 だが、ここでこいつらを全員仕留めなければ、ノア様に真の平穏は訪れない。


「ふぅ、タンマ終了。さて再開しようかノアちゃん?」

「……あなた本当にその寝起きの悪さ治しなさいよ、1000年前も何度それで苦労かけられたことか。何より質が悪いのはあなた自身が何も覚えてないからイマイチ攻めきれないことよ」

「まったくの同感です」

「ああ、ここに関しては擁護のしようがないですね」

「ご主人様、これだけはマジ治してください」

「そんなところもお姉様の魅力です!……攻撃対象がホルンの時に限れば!」

「…………」


 ノア様どころか側近たちから総スカンを食らって若干ショックを受けてるらしいルクシア。いいぞ、精神攻撃だ。


「んんっ!これに関してはいくら頑張っても1000年治ってないから皆に慣れてもらうしかないわ」

「開き直りやがった」

「なんて厄介な女ですのまったく」

「厄介な女ってお前に言われたくないだろうな」

「さっきからうっさいですわよ!」

「あなたたち、ちょっとは集中しなさい……」


 とにかく、ここからは総力戦になる。

 だが一瞬たりともルクシアに隙を与えてしまえば誰かが殺される可能性があるため、全員で攻め続ける戦法を取るしかない。

 オトハとオウランが側近4人を止めている間に他のメンバーがルクシアを殺す。最善策はこれだ。

 わたしはノア様と頷き合い、身構える。


「……ところで、始める前にちょっといい?」

「は?」

「今度は何ですか」


 だが、空気を読まずにホルンが話しかけてきて力が抜けかける。

 こんな大切な時にいちいちなんだ。


「いや、スイピアっつったっけ?あの時間魔術師どこいんの?魂が見えないんだけど」


 何を言っているのかと一瞬首を傾げ、死霊魔術師の特性である魂観測でスイを見つける役目を担っているのだと理解した。

 だが生憎スイはわたしの身体に宿っている。わたしに紛れて見えないのか、それともわたしの身体を使っている時にしかスイの魂は見えないのか。

 いずれにしろ見失っているらしい。


「あの、それを言うならば……見間違いでしょうか。クロ様の魔力量が倍以上に増大しているのですが」

「え?」

「マジ?」


 ん?なんでバレた?


「封印魔術師の特性ね。対象が含む魔力量が大雑把にだけど把握できる能力があるのよ」

「ああ、そういう」

「どういうこと?魔力量が変化することは普通有り得ない。以前は未熟だった?そんなはずはない、ケーラは最大魔力量も使用可能な魔力量も把握できる、間違いなくクロさんは最大魔力量まで力を引き出していてはず。なのに……そういえばあの時、あの女はクロさんの身体を使って……!」


 気付かれたか。


『じゃあしょうがないね。ちょっと挑発してみようか。それで特攻して来たら万々歳だし』


 仕方がない。

 わたしはスイと代わり、変化していく髪色を見たのか相手側全員の顔が驚愕で満ちた。


「やあ、ルクシア。調子はどう?」

「スイピアアアアアア!!」


 流石にいきなり襲い掛かってくることはしなかったものの、ルクシアの顔は怒りに染まり、吠えた。


「お前っ……一度ならず二度までもこのワタシの邪魔をするだけじゃ飽き足らず、そんなことまで!どれだけワタシを苛立たせれば気が済む!」

「んー、君が憤死するまでかな」

「きいいいい!!」

「いいわよスイ、もっと煽りなさいもっと」

「はい!」

「気安くノアちゃんと話すなああああ!!」

「いや、ボク元とはいえ副官なんだけど」


 どうやら上手くいったようで、随分と怒らせることが出来ている。


「えっ?じゃあなに、今はあの女、ちゃんと身体を得てるってこと?あ、マジだ、身体と魂の親和性がぴったり一致……つまりあれは、クロでありスイピアでもあるってこと……つーことは……んっだよもおおおおおおお!!じゃあアタシがクソリンクと2人きりで一週間暮らすとかいう拷問を受けてまで習得した魔法は意味なくなったじゃん!何してくれてんだよマジで!骨折り損のくたびれ儲けどころの話じゃねーよ!」

「あれはリンクにとっても過去最悪の一週間だったわよ!あんな目にあいながら覚えた魔法が無駄になったぁ!?ふざけんじゃないわよ、あんた責任もってなんとかしなさいよ!」

「テメーに攻められる謂れはねーよ!なんとかできねーからこんなに怒ってるんだろーが!」

「つっかえな!何が相手が魂ならアタシにお任せくださいよ、この役立たず!」

「んだとおおおお!!よーし分かった、お前を死体人形にして有効活用して、アタシが役立つということを証明してやるよ!」

「やめろお前たち、こんな時にまで!」

「ルクシア様も落ち着いてください!」


 なんかいい感じに仲間割れさせられてるな。

 向こうのあの2人、ホルンとリンクだったか。仲が悪いんだろうなとは思っていたがあそこまでとは。


「十分煽ったからいいや。クロ、戻っていいよ」

『はいはい』


 身体を元に戻し、ギャアギャアと叫び続ける連中に狙いを定めた。

 仲が良いのは結構だが、こっちは喧嘩が終わるまで待ってやる道理はない。

 ルクシアとホルンに効かないのは分かっている。封印魔法のケーラも何か対策をしているかもしれない。

 狙うは、メロッタとリンク。


「わたしが魔法を撃つので、全員それを合図に―――」




 《落ちろ》




「……?今」


 何か聞こえましたか、という言葉は、紡ぐことが出来なかった。

 なにかふわっとした感覚と共に、急にノア様たちの位置が高くなる。

 ほんの僅かな時間の後、そうではなくて自分が低くなっているのだと気が付いた。


 足元に小さな穴が空き―――わたしの身体はそこに吸い込まれるように落ちていっていた。


「きゃあああ!?」

『な、なに!?何事!?』


 あまりにも急すぎて魔法を使えず、瞬く間にわたしは地面よりも下へと吸い込まれた。

 手を伸ばして、咄嗟に差し出されたルシアスの手を掴もうとしたが、何故かするりと抜け、そのまま落下は止まらない。


「クロ!?」

「クロさん!!」


 仲間たちが魔法で助けようとしてくれたが、その瞬間に穴は閉じ。

 わたしの身体は、闇の中をひたすらに落ちていった。

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