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第214話 帝国の現状

皆様、あけましておめでとうございます!

今年も本作をよろしくお願いします!

「と、いうわけです。手配をお願いできますか?」

「君の主人は正気かね?」

「違うと思いますが、御命令ですので」

「まあ、なんとかはするが……リーフを潜り込ませたのは早計だったか?変な影響を受けないでくれよリーフ、後生だから」


 一ヶ月ほど経ち、わたしたちは再び帝国城のフロムの元を訪れていた。

 表向きは、暫定的に王国の王となったノア様が、エードラム王国をディオティリオ帝国の領土として吸収することについての同意を行う儀式。

 裏向きは、ただのリーフの里帰りと、ついでにフロムにハイラント全神国への船を出してもらうためのお願いだ。


「ちゃんとした我があるリーフなら大丈夫だと思いますがね。それより、ことあるごとにノア様と戦おうとするのを何とかしてほしいです」

「あの馬鹿者、戦うのは最後に裏切る時だけにしろとあれほど……。すまん、言っておく。一応な」

「お願いします。それと、突き出した前王族と貴族はどうなりました?」

「貴族の方は一生幽閉、王族は全員首を刎ねたぞ。問題があったかね」

「いえ、一応確認です。ありがとうございます」

「これで正式に王国領は我が国に吸収されることになるな。旧王国民からの反発はどうなっている」

「想定より少ないですね。ステアとルシアスが片っ端から町村に転移し、影響力がありそうな人間を選別して精神操作を行い、ノア様崇拝のサクラを作ったのが上手く機能しているようです」

「なるほどな」

「敗戦国とはいえ、ノア様がどうにかして現在の暮らしを継続できるように帝国に計らった、ということになっていますから。政治に縁のない国民は、ただ単に頭がすげ代わるだけです。ティアライト領に限って言うなら、引き続きノア様の管轄としてくださったお陰で、何も変わりありませんし」

「光魔術師が帝国に協力的になるというのは、それだけの融通をする価値があるということだ。まあ実際に協力してくれるのかどうかは知らんがな」

「そこはノア様の気まぐれが上手く作用するのを祈るしかないですね」


 わたしはフロムと二人で向かい合い、出されたお茶をすすって息を吐く。

 毒が仕込まれていても闇魔法で消せばいいし、そもそもオトハの協力でこの体には多少毒の免疫が付いている、心配はない。

 そもそもこの男が、そんな愚かな真似をしてノア様を敵に回すとは思えないが。


「しかしだからといって油断はしない方がいい。お前たちはこれで、帝国民と王国民の一部を同時に敵に回したことになるからな」

「といいますと?」

「ゼラッツェ平野での戦いを忘れたのか」

「ああ……」


 以前、わたしたち側近全員総出で、帝国兵一万人と皇衛四傑の一人、ランドを仕留めた戦いか。


「あの一件で、赤銅兵団の残党や死んだ兵士の家族は、お前たちに激しい恨みを抱いていることだろう」

「戦争なんですから死者が出るのは当たり前ですし、それで殺した我々を恨むのはお門違い……いえ、そういう理屈じゃないですね」

「事実、ノアマリー殿の暗殺計画を既に二つ潰している。最も、実行されていたとしても万に一つも彼女を仕留められない粗末な計画だったがな」

「そうでしょうが、目障りなのは変わりありませんね。ステアに情報を集めてもらって、わたしが殺しに行った方がいいでしょうか」


 オトハに任せてもいいが、ノア様を殺そうとする連中をあの子がただ殺すとは限らない。

 必要以上に時間をかけて拷問とかしそうなので、わたしが行った方が早い、と思ったが。


「いや、ステア君に情報を集めてもらうだけでいい。その後の対処は我々がやろう」

「よろしいんですか?貸しと思うノア様じゃないですよ」

「なに、それほど大した仕事ではない。それにそこまでお前たちに任せていては、帝国の名が廃る。お前たちには一日でも早く、帝国のために世界を手中に収めてもらいたいからな」

「そうですか。ではお願いします」

「船は四日もあれば用意できる。存分に全神国を支配してきてくれ。野心抜きにしても、あの国を何とかしてもらえるのはありがたい」

「わたしのような一般市民は噂に聞く程度にしかあの国を知らないのですが、どんな国なのですか?」

「君が一般市民とは何のジョークだ」

「そこ引っかからないで良いです。情報があれば教えてください」

「とはいっても、帝国もあの国との貿易は随分前に打ち切っているから詳しくは分からんが。あの国は国民全員が『何か』を信仰している国でな。その信仰対象で、十二の派閥に分かれている」

「派閥?」

「ああ。そして、その派閥のトップ十二人が国を動かしている実質的な政治家だ。派閥同士の関係はさまざま。手を組んでいたり、友好的な関係の派閥もあれば、いがみ合っている派閥もある」


 ……よくそんな小中学生の友達グループみたいな関係で国を動かせるな。


「それでもしっかり均衡を保てているのは、十二人の他にもう一人、政治における最終決定権を持つ人物がいるらしい。詳しくは知らんが、この者が事実上の全神国のトップで、凄まじい求心力があるとか」

「ほう」

「まあ一般的には知られていない情報はこの程度だな。参考になったかね」

「とても。ありがとうございました」


 わたしとフロムは同時に立ち上がり、部屋を出た。

 ノア様たちが上の階で待っているので、階段に向かう。


「リーフは仲良くやっているか?」

「オウランはまだ警戒しているようですが、それ以外は割と。特にノア様とはよく話してますよ」

「そうか、ならいい。あの娘は今まで同格の実力者に会ったことがなかったからか、ノアマリー殿に会うまでは常に退屈そうにしていてな。学校に通っていた時も、強すぎて教師からすら煙たがられていた。しかしここ数ヶ月は本当に楽しそうで安心しているのだよ」

「ノア様も同じようですし、わたしは特に反対などしませんが。しかし、ノア様を殺そうとするなら容赦はしませんよ」

「はっはっは、恐ろしいな。しかしこの世界を真に支配するのはやはり」



 ―――ズゥゥン。



「……?地震だろうか」

「いえ、それにしては短いですね。それに今、何か上から音がしたような気が」

「おい、まさか」


 わたしとフロムは顔を見合わせ、次の瞬間には階段を駆け上がっていた。

 二段飛ばしで走り、一気にノア様のいる階に到達し、勢いよく部屋の扉を開ける。


「ノア様!」

「なにがあった!」


 ―――そこに広がっていたのは、筆舌に尽くしがたい光景だった。


「あら、クロとフロムじゃない。話は終わったの?」

「お嬢様、この愚か者どもどうします?」

「そこのゴミ箱に捨てときなさい」

「この雑魚ども何か言ってなかったか?」

「『ノアマリー・ティアライト殿とお見受けする。御命ちょうだ』……で、オトハが、毒液弾、打っちゃった」

「だって、こんな喋る粗大ゴミたちをお嬢様の視界にこれ以上いれたくなかったんですもの」

「なかなかいい働きだったわよオトハ。でも次からは一人は生かしておきなさいね」

「んふぅ!?も、勿体なきお言葉ですわ!」

「おーい、こいつらなんか変なエンブレムしてるぞ」

「回答、若干変えてはいるけど、赤銅兵団のエンブレムに似ている」


 ……えっと。


「ノア様、何があったんです?」

「聞いてなかった?そこに転がってる三人が私を殺そうとしたから、オトハが毒を浴びせて殺したのよ」


 ノア様が汚物を見るような目で見下している先には、三つの死体が転がっている。

 全員が苦しみ悶えた表情で白目をむいて死んでいるのが惨い。


「発見。ノア、こいつら奥歯に毒薬を仕込んでる」

「自殺の覚悟ありってことね。まあそんな必要はなかったわけだけど。ステア、読み取れた?」

「ばっちり。こいつらの他にも、いる」

「じゃあリーフ、始末しに行ってくれる?一人は生かして連れてきて」

「疑問、なんでウチが?」

「一番強いじゃない。私に楯突こうなんて愚か者は万に一つも生かしたくないの」

「納得、任せて」

「頼りにしてるわよ」


 互いに頷き合うノア様とリーフだが、内容が物騒すぎて話が入って来ない。


「……本当にリーフは影響を受けていないのか?」


 フロムの質問に、今度は目を逸らすことしかできなかった。

水星……

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