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第193話 リンク

遅くなりました。

「やった、の?」

「不明。手ごたえはあった」


 右足がちぎれたリーフは、片足でフラフラしながらも剣を構え続ける。

 お嬢も険しい目つきでルクシアを見据えた。


「提案、確実に首を落としておいた方がいい」

「そうなんだけどね。心配なのが、この女が自分に既に《再誕の日まで(リバースデイ)》をかけている可能性よ」

「………?」

「光属性の転生魔法。現在の魔力量の半分を次の世代に上乗せして、前世の記憶を持ったまま転生できる魔法よ。使った際は生前の魔法を継承する。つまり本来は光魔術師にしか転生できないんだけど、この女の場合は私が死なない限り染色魔術師として転生するんでしょうね」

「納得。つまり、彼女を殺すわけには行かない?」

「そう、この女は魔導書が無くても記憶だけで魔法を習得できるでしょうし、十年もすれば私の脅威になるくらいに成長するわ。それでまた、私にあの手この手使って襲い掛かってくるでしょう」


 私は歯噛みした。

 この女を殺さないと、いつまでもお嬢の敵として、お嬢の前に立ち塞がり続ける。

 けど殺したら、また別人になって寝首を掻きに来る。

 染色魔法を持つルクシアは、無害な四大魔術師を装って近づいてこれる。


「姫さん、どうするんだ?一番手っとりっ早いのは拘束だが」

「この女を閉じ込められる檻があるとしたら、結界魔法と封印魔法が重ねがけされたものくらいよ。現代にそんなものないでしょう?」

「ねえだろうなあ」


 お嬢はため息をついて頭を抑えた。


「スイ、あなたの時間魔法では?」

「ルクシアクラスの大魔術師ですと、止められる時間が全魔力を使ってもせいぜい一時間程度ですね。減速でも三時間から四時間が限界ですし、そもそも光魔法相手だと速すぎて減速があまり効果を成しません」

「時間魔術師なんですのよね?ルクシアの魔力を劣化させるとか、退化させることとかできませんの?」

「不可能だ。ボクは時間を戻すことに最も多くの魔力を使う。戻すにしてもせいぜい三日くらいだろうね」

「クロさんの闇魔法ならどうだ?」

「クロとルクシアじゃ、力量が違いすぎるわ。多少は相殺できるでしょうけど、それだけね」

「むぅ………」


 打つ手なし。

 そんな言葉が頭に浮かんで、慌てて振り払った。


「スイ、とりあえず時間魔法で停止させなさい。それから考えることに―――」


 お嬢の言葉は、いきなり轟いた爆発音で遮られた。

 音と同時に、下から何かが吹っ飛んできた。


「が、は………」


 吹っ飛んできたのは人間だった。

 薄紫色の髪の金属魔術師―――メロッタ。


「ふむ、思ったよりも強かったな。まさかワシが溶かしきれぬ金属が存在するとは、世界とは広いものだ」

「フロム様!」


 メロッタを任せていたフロムが、炎を噴射しながら昇ってきた。

 傷一つついてないから、言葉とは裏腹に苦戦せずにメロッタを倒したらしい。


「リーフ!?お前、脚はどうした!?」

「苦笑、問題ない。止血は済んでいるし、あとでノアマリーに治癒してもらえば」

「光魔法の前で、致命傷は無傷と同義よ」

「しゅ、主君様………それに、ホルン、ケーラ殿………!」


 血まみれになって、息も絶え絶えのメロッタは、震える足で立ち上がる。

 けど、精神保護を受けていない今のメロッタなら。


「《精神浸食(メンタルインヴェイド)》」

「かっ………」


 私の精神魔法でいくらでも支配できる。


「オトハ、可能な限りの毒を致死量ギリギリまで打ち込みなさい。それからルシアス、空間魔法でルクシアの周囲の空間を固定して閉じ込めて」

「俺でいいのか?」

「スイはもうすぐクロと入れ替わるわ。そうなれば時間魔法がリセットされるかもしれないでしょう?」

「なるほどな」


 言われた通りにしたオトハとルシアス。

 ルクシアはまだ動かない。


「この間に話し合う必要があるわ。ルクシアを―――」


「………最悪」


 ―――!?


 いきなり聞こえてきた不機嫌そうな声の方向を、全員振り向いた。

 あどけなさを残しつつも非常に可愛らしい顔立ちをした少女が、壊れた天井の淵に立っていた。


「メロッタからの救援信号を受けてわざわざ来てみたら、ナニコレ?お姉様もやられちゃってるし、筆頭も氷漬け………ぷっ、ホルンも!あははは、ブザマー!」


 笑ったり怒ったり、忙しい子。

 だけど、ただものじゃないことだけは分かる。

 彼女のツインテールは、紺色だったから。

 十中八九、ルクシア配下の希少魔術師。

 その正体も何となくわかる。


「リ、リンク………」

「何してんのメロッタ。そんなんでお姉様を守るなんて、よく言ったもんだわ」


 やっぱり。

 ルクシア配下の魔術師の最後の一人。


「さて、じゃあさっさと助けてあげる。くふふ、あのバカホルンに貸しを作るいいチャンスだわ!」


 だけど―――おかしい。


「お嬢様、紺色の髪は何の魔法なんですの?」

「知らないわ」

「え?」

「知らないのよ。私、紺色の髪の人間なんて見たことないし、聞いたことも無かったわ」

「私も、知らない」


 そう。

 紺色の髪の魔術師なんて、あの書庫になかった。


「紺色の髪は新たに表れたものなんだ。だから、どんな魔法なのかはボクも知らない。でも油断しない方がいい」


 全員が構える。

 リンクはそれを面白そうに見つめて、最後にお嬢を見て何かをこらえるような顔をした。


「………ズルイ」

「はあ?」

「ふんっ」


 リンクはそっぽを向いて、ホルンとケーラを閉じ込めていた氷に手をかざした。

 すると、いきなり氷が溶けた。


「これは―――!?」

「一体何を………」


 さらに、唐突にリンクの姿が消えた。


「おいたわしや、お姉様………ごめんなさい、リンクがもう少し早く来れてれば………」

「コイツッ、何の魔法だ!?」


 慌ててオウランが弓を撃った。

 だけど、再びリンクの姿が消える。

 不規則に動くから、精神魔法がかけづらい。


「バカホルン!いつまで寝てんのこのボケ、起きろアホ!」

「ああん!?なんであんたごときにアタシがそんなボロカス言われなきゃならないのポンコツリンク!!」


 ホルンが怒りに任せてガバッと起き上がった。

 だけど起きたなら、また精神操作するのみ。


「《精神浸食(メンタルインヴェイド)》」


 だけど。


「ホルン!さっさと死体人形を!それしか能がないんだからやれバカ!」

「お前、マジでいつか八つ裂きにしてやるから!」

「え………?」


 効かない!?


「精神影響はアタシが引き延ばしてあげるから、さっさとケーラ先輩たちを救出しなさいよ!」

「うっさい、アタシに命令すんな!」


 何度も試したけど、精神操作が通じなくなってる。

 どうなって―――?


「リーフ、スイ!」


 お嬢とスイがリンクに、リーフがホルンに飛び掛かった。


「リンク、ウェントゥスの氷を解かせ!」

「リンクに命令しないでホルンのくせに!」

「うっさい死ね」

「お前が死ね」


 悪態をつき合いながらも、リンクはウェントゥス・リュズギャルの氷を溶かした。

 溶けると同時に死体人形として動き出し、リーフを阻む。


「………!」


 一方リンクは、スイとお嬢の攻撃を、突然ワープする技で躱し続けている。

 リンクの心が、読みづらいというかまったく読めない。

 何かに邪魔されてる?

 違う。


 突然のワープ。

 氷を一瞬で溶かす。

 記憶が読めない。


 これらのヒントから、リンクの能力を予測。

 思考をフル稼働させて、精神支配を試み続けながら考える。

 そして、思い当たった。


「お嬢、スイ!ソイツの、能力は―――《伸縮》!」

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