第173話 リーフの本気
間違えて前作に投稿してました、本当にアホですいません<(_ _)>
カメレオンが襲ってくるのと同時に、ルクシアもノア様目掛けて飛び込んできた。
ノア様は瞬時に光魔法の剣で迎え撃つ。
「あはははは！さあ、どこまで持つかなノアちゃん！」
「調子に乗るんじゃないわよ、この女！」
ノア様はパワー負けして吹っ飛ばされ、それをルクシアが追撃する。
「ノア様！」
「余所見すんなクロ、俺たちはこっちだ！」
武器を持って襲ってきたカメレオンたちを、手始めにルシアスが迎え撃った。
超人の肉体を持つルシアスなら、物理攻撃であれば十人が同時にかかって来たって押し勝てる。
「おらああっ！」
金属を扱うと金属魔術師であるメロッタに乗っ取られるため、ルシアスは崩れた天井を支えていた石柱の一部を武器として持っていた。
だが。
「《粉々瓦解》」
クリーム色の髪をしたカメレオンの男に、石柱は触れただけでこなごなにされた。
「うおっ！」
「ルシアス、離れてください！粉砕魔術師です！」
接近されると厄介だ、先に殺す！
「《死》！」
「《確率反転》」
「っ！」
だが、効かない。
一言聞こえた魔法によって消された。
「確率操作―――数字魔術師か！」
「《裁ち切り糸》」
「《撃墜の腕》」
「《弾幕の雨》」
四方八方から、一気に希少魔法が放たれる。
一つ一つの威力はそうでもないけど、性質を理解するのに時間を要するために思考が鈍り、避けきれない。
「くっ！」
「オウラン！」
「《強耐性付与・猛毒》！」
「タイプ９１、《沼蛇の吐息》！」
オウランがわたしたちに一斉に耐性を付与し、すかさずオトハが毒ガス散布した。
「《気体吸収》」
しかしこの必勝コンボの一つですら、希少魔術師には通用しない。
後方に待機していた女、おそらく《吸収魔術師》によって毒ガスが全て吸われた。
「どうすれば―――」
「要請！クロ、封印魔術師さえ倒せればウチがなんとかする！」
「そうしたいのはやまやまですがっ………！」
この状況を一気に切り抜ける方法は、ケーラを倒すことだ。
彼女に魔力を使い切らせ、リーフにかけられた封印を解けば、おそらくリーフの強さなら一分あればこの場の希少魔術師を殲滅できる。
だが、そのケーラまでの道のりがあまりにも遠い。
闇魔法で殺すわけにはいかず、ルシアスの空間魔法も撃つわけにはいかず、正面から叩くしか方法がない。
そしてケーラの傍には、メロッタとホルンが数人の死体人形と共に立ちはだかっている。あれを突破するのは至難の業だ。
むしろ、封印されて尚ここまで自力で戦ってこれているリーフの方がおかしい。
「リーフ、どの程度まで魔法が使えますか？」
「回答、魔力量は十分の一以下。出力も半分もない。あなたたちどころか、ランドやフェリにすら劣る程度の強さしか出せない」
「それは、まずいですね」
十分の一に抑えられてそれくらいの力は出せるのかというツッコミは置いておいて、最大戦力であるリーフの封印を解くことが出来れば、この絶望的な状況を打開できる。
「提案。あなたの魔法で封印を消せばいい」
「出来ないことは無いと思いますが、オススメはしません。ケーラ自身も言っていましたが、あなたは今、魔法抵抗力が著しく減少しています。その状態で魔力と隣接している封印魔法を消そうとすれば、あなた自身の魔力も消失する可能性がありますそうなっては本末転倒です」
「再案、それでも構わない。封印が解けた時に半分でも力が出せれば、ウチがなんとかする」
半分の力があればこの状況を打破できるのか。
つくづく恐ろしい。
「しかし、闇魔法で消したものは二度と戻ってはこないんですよ？本当に良いんですか？」
「催促、構わないから早く！」
やむを得ない。
どうなるかは賭けだけど、あのままケーラを倒すよりは現実的だ。
わたしは闇魔法でリーフの体に干渉し、魔力の流れを探る。
不自然に押しとどめられているのが封印魔法の力か。
これを消せれば―――。
「《魔法消去》」
各所で魔力の流れをせき止めていた封印を削除。
しかし、やはり多少リーフの魔力にも影響が出てしまった。
「すみませんリーフ、やはり―――」
「―――十分」
しかし、リーフはそんなものをものともしなかった。
六割近く最大魔力を削られたにもかかわらず、常人離れした風魔法で近くにいたカメレオンの一人の首を吹き飛ばした。
「わあお、無理やり封印を解いて半分力を失ってあれかー………！つくづく頭おかしいわあの強さ」
「無理もない、主君様と同じく覚醒に到達した四大魔術師だろう。いや、力が半減したことで落雷魔法は使えなくなっているかもしれんが」
「それを差し引いても、リーフ様は脅威です。あ、ほらまた一人」
目に見えて速度は落ちているけど、それでもカメレオンたちは反応できずに首を落とされていく。
死を恐れないように訓練されているカメレオンだからこそリーフに立ち向かえているんだろうけど、これがそこらの精神力の人間なら逃げ惑っているだろう。
ノア様と渡り合う強さを持つリーフだからこそ出来る芸当だ。
「けど、残念♪アタシがいる限り、こっちの戦力が減ることは無いんだなこれが」
しかし、首を落とされたカメレオンたちは首なしのまま次々と起き上がってくる。
ホルンの死霊魔法で死体人形にされている。
「リーフ、倒す時は四肢を斬り落としてください！死霊魔法でも動かせなくなるはずです！」
リーフは頷いて、目の前にいた数字魔術師の四肢と首を一太刀で斬り落とした。
数字魔術師が死んだことで、わたしの闇魔法も有効になっている筈。
「《死》！」
案の定、カメレオンの一人が倒れた。
わたしは死霊魔法で操られる前に死体を消し去り、次のカメレオンも同じように殺す。
だけど、ホルンとの戦いで魔力を使いすぎた。
残りの魔力が少なすぎる。
全快状態なら範囲系の闇魔法で一掃するのに、これじゃそれが出来ない。
「《銀の槍》」
「うっ！」
さらに後方から飛んでくる、カメレオンとは桁違いの威力を持つ、メロッタの金属魔法。
ホルンとメロッタの魔力状態はおそらくわたしと同程度。だけど、こっちがひっきりなしに魔法を使わないとならない状態なのに対し、向こうは封印魔法による安全圏での回復が可能。
あまりにも不利すぎる。
「きゃあっ！」
「オトハ！」
「こんの、爬虫類共………！」
後ろでもオトハたちが苦戦している。
なにせ、ただ殺すだけじゃホルンの死霊魔法で死体を操られてプラマイゼロだ。
だからわたしやオトハが死体を消さなければならず、それで余計に魔力を消耗する。
「リーフ、ホルンを殺せますか！？」
「苦言、出来ないことは無いかもしれないけど、あの女は魂だけ逃げる」
「それでも構いません、ホルンがこれほどの力を出せているのは自らの肉体だからです。そこらの自分に適合する死体を使って復活したとしても、今ほどの強さは出せない筈！」
「納得、じゃああの女を仕留める。《神速の追い風》」
瞬きした瞬間には、リーフがホルンの背後に回ってレイピアを首目掛けて突き刺そうとしていた。
「え？」
「《空間封印》！」
しかし、それを見ていたケーラの封印魔法で防がれた。
「あ、あっぶなあああっ！？マジ死ぬかと思った！」
「この距離ならっ―――《貴金支配》！」
メロッタの金属魔法で、リーフのレイピアが奪われ、リーフに向かって飛んでいった。
それをリーフは受け止め、勢いよく地面に突き刺す。
そして武器を失ったのをものともせず、ケーラが封印魔法を発動するより早く動いた。
メロッタの顔を掴み、そのまま風でブーストして地面に叩きつけた。
「ぐああああっ………！？」
「メロッタ！」
「こんのっ！」
ホルンが応戦しようとするが、魔法を発動される前に動き、鳩尾に神速の一撃。
「げぼっ！」
「面倒。元の強さが出せれば今ので二人殺せていたのに」
行ける。
リーフならあの三人を殺せる。
わたしたちはカメレオンに集中できる。
そう、思っていた。
