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第150話 最強再び

 ノア様の号令の元、わたしたちは一気に階段を駆け上がっていく。

 城の駐在騎士たちがこぞって襲い掛かってくるけど、関係ない。

 こっちのメンバーは、帝国兵一万人を殲滅したわたしたち側近五人、共和国連邦最強のルクシア・バレンタイン、その傍付きの炎魔術師ケーラさん。

 そして王国最強にして、帝国最強と互角に戦った光魔術師、ノアマリー・ティアライト様だ。

 こんな不意打ちで統率取れていない状態で、いやよしんば取れていたとしても、止められるわけがない。

 不意打ちはわたしとステアとルシアスが感知、自爆覚悟の範囲魔法はわたしが消し去り、並大抵の攻撃はオウランの耐性でガード、援軍を呼ぼうとすればオトハの広範囲殲滅、下手な個人狙いの攻撃はルクシアさんが反射。

 この面子をリーフ以外で打破できる人間がいるなら、むしろ連れてきてほしい。


「ちょっと、こんなもの?楽勝すぎて拍子抜けね」

「油断禁物です、と言いたいところですが、まあこんなものでしょう。統率者である皇衛四傑も四人中二人が死亡、一人引退、頼みの綱である帝国最強のリーフが不在となれば」

「イージーすぎて、おへそで紅茶が沸きそうですわ」

「リーフがイレギュラーすぎて焦ってたけど、確かに基本的にはこんなもんなんだよな」


 リーフがあまりにも強すぎたことと、フロムもまた強者だったことから感覚がマヒしていたけど、わたしたちはこの世界じゃかなり強い方だ。

 まず、わたしの《(デス)》に耐えられるヤツが普通はいないんだから。

 リーフが異常すぎるだけで。


「だ、ダメだ、アイツら強すぎる………!」

「ちくしょお!ゼラッツェ平野の噂、どうせ眉唾だと思ってたのによお!」

「俺らじゃ無理だ!誰か、なんとかリーフ様を呼んでっ」

「《(デス)》」

「《終末を希う悪夢(ナイトメアワースト)》」

「《致死毒(デッドリーポイズン)》」


 それだけはさせない。

 それぞれが一番近かった人間を殺し、脚を止めずにそのまま奥にいた人間も三人で手分けして始末する。


「クソッ、せめて一撃っ………!」

「クロさん、伏せろ!」


 後ろの声と同時に屈むと、わたしに襲い掛かって来ていた騎士の額に矢が貫通し、そのまま倒れこんでくる。

 オウランが眉間を撃ち抜いたのか。

 寸分違わない良い仕事だ。


「おるああああ!!」

「何だコイツ、魔法も使ってないのに!」

「何だこのつよざっがっ!」


 ルシアスも向こうで近接戦で無双してるみたいだし、問題はなさそうだ。


「このまま行くわよ!」


 ノア様に全員が続き、長い回廊を走る。

 窓からは黒い雲が見え、ゴロゴロと雷も鳴っている。


「楽勝ではないですの!これはもう一瞬で事が終わりそうですわね!」

「だからあなたはなんでそう、ほいほいフラグを建てるんですか。そういうこと言うとリーフが来たりしますよ」

「もうっ、クロさんたら臆病なんですから。そんなわけ―――」


 あれっ。

 そういえば。


「ステア」

「なに?」

「地下牢を出た時って、どんな天気でしたか?」

「雲一つない、夕焼け」

「ですよね」


 この短期間で、雷雲がいきなり上空に?

 窓からの眺めをよく見れば、雷雲があるのはこの城とその付近だけで、遠くには雲一つない。

 まさか。


 ―――ピシャアアアン!!


 わたしが嫌な予感がしてノア様に伝えようとした瞬間、ひときわ大きな稲光が城を包んだ。


「きゃあっ!?」

「近かったな………」


 珍しくオトハが普通の女の子のような反応をしたが、そんなことに驚いてる場合じゃない。

 ヤバイ、いくらなんでも速すぎる。


 窓の外に、稲光とともに現れた人影。

 それは一瞬のうちに大きくなり、丈夫であるはずの窓ガラスをいとも簡単にぶち破って、城の中に侵入してきた。

 そしてわたしたちには目もくれず、ノア様に向かっていく。


「歓喜、また会えたっ!」

「久しぶり、ねえっ!」


 ノア様はその顔に狂喜の笑顔を浮かべ、光魔法の剣でその影―――リーフ・リュズギャルを迎え撃った。


「リ、リーフうう!?」

「嘘でしょう、まさか城にいたんですの!?」

「違うわね、間違いなくこの子は私たちが仕掛けた陽動に乗った。だけど、通信ないしは危険察知の魔道具で私たちがこっちに来てるのを察して戻ってきたんでしょう」

「いや、おかしいでしょう!?国境からここまで何百キロあると!?」

「自慢、落雷魔法の本気の速度は風魔法とは比較にならない。光魔法に最も近い速度で移動可能、だからこそ陽動の可能性があったにもかかわらず乗ってあげた」


 そういえば、前世で聞いたことがある。

 光と音が目立つ雷だけど、その本体、稲妻そのものの速度は、秒速二百キロメートル。

 もしその速度でリーフが移動できるなら、帝国との距離、方位、障害物さえ把握していれば、ものの数秒でここまで移動できるのか。


「ノア様、ここは任せて先に行きます」

「ええ、私が抑えておくから、さっさと皇帝を仕留めてきなさい」

「かしこまりました」


 主人を戦わせて先に目的地へなんて本来は従者としてあるまじき暴挙だけど、今回ばかりはそうも言ってられない。

 リーフが来た以上、ノア様が守れる範囲じゃなければ、わたしたちは一秒後に瞬殺されていたっておかしくない。

 だから一刻も早く、少しでも遠くに行って、ノア様の戦闘を邪魔しないようにするのが最善だ。


「無念、しかしここであなたと決着をつけたいけど、さすがにあなたとばかり戦ってられない。今回のウチの目的はあくまで防衛」

「あら、寂しいこと言わないで遊びましょうよ。正直私、あなたが来てくれないかなーってちょっと期待してたのよ?」


 なんてことを思ってるんだあの御方は。

 互角の強さを持ち、自力で四大魔法の覚醒に到達したリーフに入れ込むのは分かるけど、わたしたちからしてみればたまったものじゃないというのを理解してほしい。


「肯定、ウチもあなたたちが攻めて来てくれるのを少し期待していた。だけどこのままではあなたとの決着がつけられない。だから―――」


 こっちに視線をぐるりと向けたリーフは、剣に雷を纏わせ。


「あなた以外を皆殺しにしてから、あなたを倒す」


 ゾッとするようなことを言い始めた。


「《雷撃の(ライトニング)―――」

「ルシアス!」

「《強制転移(プシーテレポート)》!」


 リーフが纏った雷をこっちに放出しようとし、慌ててわたしが闇魔法を展開してオウランが全力の耐性を付与したが、ルシアスが魔法を唱えた瞬間、ノア様とリーフの姿が消えた。


「狙った相手を強制的に別の場所に飛ばす魔法だ。俺らが近くにいなければ姫さんが何とかできるだろ。これで少し溜まって来てた魔力がすっからかんだ」

「いえ、いい判断です。どこまで飛ばしたんですか?」

「魔力が足りなくてな、十キロくらいしか離せなかった。あの二人なら簡単に詰められる距離だぜ」

「なら一刻も早く皇帝を抑えましょう、行きますよ!」


 リーフをノア様が抑えているとなれば、こっちに敵はいない。

 頻繁に聞こえてくる遠雷と目が眩むような光を窓の外に感じながらも、わたしたちは一気に上に登っていく。


「まずい、陛下を狙っている!」

「絶対にこの上には行かせるな!」

「これ以上進ませるわけにはっ」


 流石に上に行くと、それだけ強いのが出てくる。

 四傑クラスとは言わずとも、それに近い実力者たちが私たちの行く手を阻んだ。

 しかし。


「《蒔かれる終わり(デッドシード)》」


 それでも、わたしたちは止められない。

 どんな強い魔術師でも、魔法を使う前に即死させてしまえば雑兵と同じ。

 たまにわたしの分散された死の魔力を耐えきる猛者もいたけど、そういうのは《(デス)》で一人ずつ殺すか、ステアたちに任せる。


「………見えました」


 そして。

 わたしたちはついに、最上階に辿り着いた。

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