番外編 兄の、姉の前日譚 1
今回は物語の半年前が舞台となリます。
これは物語から遡ること半年ほど前のお話…
「ねーねー、陽くん!」
「何?一花ちゃん」
「最近ね、うちの妹のアイドル熱がすごくってさ」
「うんうん、それで?」
「それだけならいいんだけど、まさかの推しがはるくんなのよ!」
「はるくん…あぁ!太陽のことか」
「そうなの。まあまさか2軒先に推しが住んでるなんて思ってもないんでしょうけどね」
「そういうことなら逆にうちの弟である太陽が前から俺の影響でアニメにハマってんだけどさ」
「それってもしかして……?」
「そうそのもしかしての通りうちの弟の推しが月ちゃんなんだよ」
「うわー!こんなことあるんだね!?」
「ほんとにな。でも楽しそうに話してる2人見てるとさ、なかなか俺達から実は…って言いにくいだろ?」
「そうなのよねぇ。しばらくは静観でいきましょうか」
「そうだな。でもなにが面白いってさ」
「?」
「あいつら、学校でも同じクラスで隣同士なのに未だにこんな近くにいる事を知らないんだぜ?実際1回もこのマンションで鉢合わせたことが無いらしいから2軒先に隣の席の人がいることすら知らないんだよ。笑えてくるだろ?」
「ホントに!?流石に知ってると思ってたよ!」
一花は驚いた声で陽介に詰め寄った。
おっと、紹介が遅れてしまったのでここでこの2人のプロフィールを紹介しておきます。
まず女性のほうが、白河 一花。日本を代表するアイドル事務所、『ギャラクシープロダクション』の専務取締役にしていま人気急上昇中のアイドル『スターズ』のマネージャーであり、皆には知られていないが人気声優、白鳥月こと白河三月の姉です。
そして男性のほうが、鳳 陽介。声優事務所『ACTORS』の代表で、自身は人気絶頂の時に突如として表舞台から身を引いた超人気声優、『神谷 陽介』としても活動していました。現在は人気声優、白鳥月のマネージャーも兼務していて、こちらも皆には知られていませんが人気アイドル『スターズ』のリーダー、一瀬太陽こと鳳 太陽の兄です。
そしてこの2人は自分たちの弟妹がお互いを推していることに気づいているものの、こんなに近くにいるのにそれをわかっていない2人の事を温かく(笑)見守っているのです。
この2人の紹介はとりあえずこの辺にして………陽介は一花に対しある提案を持ちかけました。
「残念だけど事実なんだ。それで、このままじゃこの2人はいつまでもお互いのことに気付けないままになっちまうからさ。俺から1つ提案させてもらいたいんだ」
「何?」
「まずはこれを見てくれ」
そう言って陽介はある紙の束を一花に渡しました。
「『クロスアイギスアニメ化企画に関する企画書』…?これがどうしたの?」
「とりあえず月、まあこの場なら三月でいいか。三月にはまだ伝えてないんだけど、この作品のヒロイン役に原作の先生が三月を推したおかげでそこが決まったんだ」
「それで?」
「この作品の撮影が始まるのが半年後、ちょうど太陽たちのライブが終わった直後くらいなんだ。スターズは1stライブツアー終わったらしばらくはセーブしていくんだろ?」
「そのつもりよ。しばらくはアイドル活動は控えめにする予定、まあテレビやラジオなんかはやってもらうけど。スターズの4人には仕事と学業をちゃんと両立させてあげたいから」
「でも、太陽だけ仕事が無いのはかわいそうだろ?それにそろそろあの2人を直接会わせたいんだ。どうだろう、とりあえずボイスサンプルだけでもオーディションに送ってみてもらえないか?」
「そうね。太陽くんいつかアニメの仕事したいって言ってたし、まあ何かしらの役につけるならいいかもしれないわね。じゃあ太陽くんには音声を取るように言っておくから」
「おう、よろしく」
この時、一花はこの後起こることを知らなかったのです。わかっていたのは陽介だけだったのです。この続きはまた次回………
番外編はまだつづきます。未だに恋愛色が出てこない今作ですが、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
また、こんな駄作ですがよろしければ評価や感想のほどよろしくお願いします!