僕と三月、柚子と天 1
僕と三月は、相手の女性の名前に驚きを隠すことができませんでした。
「あなたがあの、六道柚子先生なんですか?」
「ええ、そうです。まあ2代目なんですがね」
「2代目?」
僕は、柚子さんのその言葉に疑問を覚えた。
「そうなんです。ちゃんと最初から執筆に関わってはいたんですが、しばらくの間は母が六道柚子として活動していたんです」
「なるほど?」
「まだ、私がデビュー作の時は10歳ほどでしたので」
「その年齢であんな作品を作れたの!?」
三月の驚きは最もでした。六道柚子先生のデビュー作である「明日世界が終わるとしても」は、とても10歳の少女が書き上げられるような文章では無かったからです。
「いえいえ、私が軽くアイデアを出したものを母が文章化してくれましたのでちゃんと文章を書き始めたのは『クロスアイギス』からですよ」
「なるほど…まあそれでもクロスアイギスの1巻の発売は今から4年前、だから柚子さんは今の僕たちと同じくらいの歳の時にあの物語を作り始めたんですね」
僕は素直に尊敬の念を覚えると共に、会った時から感じていた疑問をぶつけてみた。
「そうだ、根本的な疑問があったんです」
「はい?なんでしょうか」
「今日この場で僕達に話しかけてくれたのはどうしてなんですか?」
その疑問に答えた柚子さんの口から出てきた人名に僕達はまたしても驚くことになるのでした。
「元々は今日来る予定では無かったんですが…天君がそろそろ表に出てみたら?と言ってくださったので、ちょうど今日、明日とイベントがありましたので参加させていただこうと」
「……三月が言ってたサプライズゲストって?」
僕は、この前に言っていたゲストが柚子さんなんだと思い聞いてみたけど、三月は首を横に振っていた。まあそこよりも大事な事があったけれど。
「天君…とは?」
おそらく僕と関わりがある天は1人しかいないが、彼に女性の友達がいるような話はほぼ聞いたことがなかったので確信は持てなかった。でもやっぱり答えは
「あなたも良く知る、三島 天君です」
「なぜ、柚子さんと天に関わりが?」
「やはりと言いますか、天君は何も伝えていないのですね。実は私と天君は婚約しているのです」
「「え!!!!?」」
今日1番の驚きが早くも更新された瞬間だった。
「正式に確定したのはつい最近ですが、この話自体は去年からあったのです」
そこで、僕は1つの記憶を思い出した。
「そういえばこの前に1度僕と天が遊んでたときに天が携帯を開いたと思ったら血相変えてちょっと済まないって言って走っていったのはあなたのもとだったんですかね?」
「そうですね!あの時は天君が来てくれなかったら危ない所でしたので」
その時に何があったのかは教えてくれなかったけど、今まで天からそういう話が全く出てこなかった理由がわかって僕はなんだか嬉しい気持ちになった。そして、僕達は柚子さんも一緒に平等院へと向かった。
次回は、一度天が青空と流星に婚約者のことを打ち明けるスターズ会の話となります。




