プロローグ 2
私の名前は白河 三月。どこにでもいるような高校2年生。って言いたいところだけど普段は普通、でもよく早退をする。それは私の仕事が関係あるんだけど…
「おはよう白河さん!」
「おはよう、鳳くん」
今挨拶をしてくれたのは隣の席の鳳 太陽くん。基本的に物静かな感じで、あまりみんなの輪の中には入ろうとしないけれど、入ったときには普通にしてるみたいなどこにでもいるような子。でも彼と、その友達の浅野くんとの話に私は耳をすませてしまうのです。
「おっす太陽!昨日のアニメ見た?」
「当たり前だろ?だって僕の推しである白鳥 月ちゃんが主演なんだ。見ないわけがない」
「だと思ったよ。っていうか太陽は月ちゃんがデビューした時からずっと好きだって言ってたよな」
「あぁ、あの子の声は僕の心に深く深く突き刺さったんだ。もう今後誰が出てきても僕の1推しは月ちゃんだね」
その会話を聞きつつちらちらと鳳くんの方を見ますが、彼は私の視線に気づくことはありません。まあ、話題に上がっている白鳥さんがどんな人かなんてみんな知らないですもん。まあ私なんですけどね。
そう、私がよく早退をしてしまうのは仕事のスケジュールの問題なのです。でも自分の仕事や正体は学校のみんなには知られたくないので、普通に体調不良ってことにしてます。だからみんなは私のこと病弱なんだと思ってることでしょう。全然元気なんですけどね。
そして私は朝礼と1時間目だけ出ると、仕事のために早退した。そして学校を出てしばらく歩いてマネージャーと合流し、車でスタジオへと移動するのだ。
「月、今日も喉は大丈夫か?」
「はい、バッチリですよ陽介さん!」
「ならいいけど……ってまたそれ聞いてるのか?ホント、月はそのアイドル好きだな」
「そうなんです!『スターズ』は私の心の拠り所ですから!」
「そうだったな。確かこの業界に入ったのだって、そのスターズの…」
「リーダーのはるくんに会いたいからですもん!」
そう、私は俗に言うところのドルヲタというやつで、現在人気急上昇中の4人組アイドル、『スターズ』が好きなのです。その中でもリーダーのはるくんこと一瀬 太陽くんを推しています。会えたら卒倒してしまいそうですけどね。まあ彼はアイドルで私は声優なので会うことはそうそうないのですが…
でもこの時の私は気づいていなかったのです。いつも挨拶を返してくれる鳳くんのやけに長い髪と眼鏡の本当の理由に……
次回からの本編は、太陽サイドの物語からになります。