群馬へ向かって
この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。
公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。
作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。
自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。
また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。
実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。
会社の集合会議で、今後、俺達タクシー乗務員の給与をどういうわけかカットするという事が一方的に決まったと通達された。
理由も何も説明無い。働き方改革に伴う有給取得義務化で、有給休暇手当の財源を確保するためのようだが、だからといって乗務員の歩合給の歩率を下げるのはどうなのか。
当然、乗務員の不満が爆発。派手な喧嘩となった。
「ちっ!お前は良いよ。一人だけ精鋭部隊の2係に飛び級したからな!」
安西一歩が俺に不満をぶつけた。
「俺だって、行きたくて行ったんじゃねえ。穴埋めで2係入れられてんだ。」
「それが腹立つ!」
言いがかりだ。
ふざけやがって。
明けの集合会議。明日も休みだから、フラストレーション晴らしに走りに行こう。今日は群馬だ。
会社から高速道路で一度帰宅。着替えて軽くシャワーを浴びて、腹に少し何か入れたら、車にガスを満タン入れてすぐ出発。
(自分を知り、車を知り、自分の思いを車と同調させながら走って行かなければ、いつまでも走り屋のままだ。今、自分がどうしたいかを考え、自分を知る事を第一に考えろ。)
大山神威に言われた事を思い出す。
(自分を知るには、走るしかない。暇があれば、走るしかない。まもなく筑波サーキットでデビュー戦だってのに。何も見えない。いつのまにか、ホワイトインパルス4号車と言うことになっているのに、これではホワイトインパルスの名にも傷を付けてしまう。)
目指すのは群馬県沼田市の国道120号線の旧道区間。
ここはトンネル建設により、旧道となった峠道だが、それ故に道幅のあるワインディングロードとなっているようだ。
坂口さん曰く、この道で走る走り屋も少し居るらしい。
「三峰山アタックの時に来ていたインプレッサのホームコースもここよ。」
と教えてくれた。
(週に10日は、走りに行っていたぜ。)
と、意味の解らない事を言う走り屋出身のレーシングドライバーもいる。
要するにそれくらい走り込んでもなお、腕を磨かなければ一人前になれないのだろう。
関越自動車道をひたすら群馬を目指して走行。
花園インターを通過。あまり右側追い越し車線を走らず、真ん中の車線か左車線を一定の速度で走る。
今の速度は95キロ。追い越し車線は、よく遅い奴が車線を塞いで渋滞の原因を作っている。
なぜ、普段運転しない奴が、高速道路に乗ると右側の追い越し車線を80キロでノタノタ走るのか、意味が分らない。合流が怖いのかもしれないが、それならそもそも運転するなという話だ。
合流が怖いのなら、下道を走るのだって怖いに決まってる。
上越新幹線の線路を潜る。今、右側を走っているのは、遅いプリウスだ。90キロに満たない速度で走っていて、後が詰まっている。真ん中を走る俺の後はトラックだ。これでは、追い越し車線にいる車は、前が塞がれてどうすることもできない。おかげで普通に真ん中の車線を走っているだけで、追い越し車線のプリウスがどんどん後へ行ってしまう。いろは坂の猿ならここで気付くだろう。遅いって。まあ、猿よりバカだから無理か。
上里通過。
神流川を渡って群馬県に入る。
(あのグンマのマンガ。もう終わっちゃうんだよな。ぶっ飛んだ埼玉の変なマンガよりも、学園コメディーみたいな感じで面白かったんだがなぁ。埼玉に空港無いとか埼玉のマンガで吐かしてたが、航空自衛隊入間基地の外、桶川にもあるだろう!セスナのだけど!あそこにいるゼロ戦、どうなっちゃうのかな。令和の空を飛べると良いな。)
前橋インター付近で、関越自動車道は3車線から2車線になる。
こちらは変わらず、走行車線を一定速度でっと。
「おっと、バスの隊列か。えっと、右後は来てないな。俺の後ろにはクラウンが居るだけだし、追い越ししよ。うわぁ5台も居るよ。お揃いで伊香保温泉ですか?「伊香保温泉日本の名湯!」あるいは、「草津良いとこ薬の温泉」「世のちり洗う四万温泉!」か?おっ今日も綺麗だな赤城山に榛名山。「裾野は長し赤城山!」「登る榛名のキャンプ村!」っと、いい加減黙れ群馬オタク。」
5台の隊列を組む観光バスの集団を追い越し終える。もう左に戻っても問題ないはず―。
「ウゥーーーーーッ!」
えっ?覆面。俺?なんで?速度か?えっ?
「パトカーに付いてきてください!」
赤城PAに放り込まれる。
クラウンの覆面パトカーの隣に、S660を停める。
(どういうこと?バスの集団追い越していただけだし、あのクラウンは俺の後で見ていたよな?まさか、気付かぬ内に速度違反?あっそういえば渋川伊香保付近は上州名物からっ風で80キロ規制かかることあるから、バスの影で規制を見落としたか?)
「違反の説明をしますのでこちらに乗ってください。」
と、言われ群馬県警察の覆面パトカーに乗り込む。
へぇーっ覆面パトカーっていい車使ってんなあ。どうせならGTR使えよGTR。いや、群馬ならインプレッサだな。
「右車線をずっと走ってましたよね。よって、車両通行帯違反です。」
「はぁふざけんなコノヤロー!!お前どこに目ん玉付けてんだボケぇ!バス追い越していただけだろうがああっ!?」
エンジン全開。
相手が警察だろうが関係ねえ。
これはキレて問題無いだろ。
「速度違反も無く、明らかにバスを追い越すために追い越し車線を走っていただけでこれか!?まさかバス1台追い越すごとに左戻ってまた右行けってのか!そしたら今度は蛇行運転で捕まえるってんだろバカヤロー!!」
その場で10分~15分ぐらい、ヤクザ映画のように「コノヤロー!」「バカヤロー!」「アホ!」「コラ!」「ボケ!」と怒鳴り散らしたが判定変わらず。
あんまりやって今度は公務執行妨害で捕まったらどうしようもない。
「分かったよ、払えば良いんだろ払えばな。分かったよボケ!!」
クソだ。




