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純白のSと共に  作者: Kanra
9stage遠き富士
97/435

走り屋とモータースポーツ

この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。

公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。

作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。

自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。


また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。

実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。


 思った通り、谷村PAに入る。

 大山神威の隣に止めると、左隣りにMR‐S、MR‐2が止まる。

「よっと。」

 バムッとドアを閉める。

「すまない。君の車を見かけたのでね―。」

「何の用ですか。大山神威さん。」

「気付いていたのか?」

「スーパーGTで活躍しているのであれば、そりゃ解りますよ。」

「まあ、なんか飲みながら話そう。」

 自販機のところまで行き、コーラを奢ってもらった。

「結論から言おう。なんで俺が君をレースから外したか、本当の理由を言ってもいいか?」

「S660では、レクサスについていけないから?」

「違う!」

 大山神威は吐き捨てる。

「君は俺の後を付いてきていた。レコードラインをなぞろうとして。確かにストレートでは置いていかれていたが、コーナーでは互角だった。だから、頑張れば、本気で走れれば、本気を出せれば、本性を出せれば、レースに出した。」

「―。」

「君は、女で苦労しているらしいな。」

「ええ。」

「詳しいことは、そちらの2号車のドライバーや、拓磨から聞いている。女に足引っ張られ、本来の力を出せずにいる。そのために、ストレートで周りが見えず、クラッシュしかけていた。そんな奴をレースに出すわけにはいかんのだ。君自身も危ないが、レースは君だけで走っているのではない。君のような奴が居ると周囲の車両も巻き込まれる可能性だってある。解かるよな?」

「―。」

 そうだ。

 レースとなれば、一台クラッシュすると、巻き込まれて他の車までクラッシュしてしまう事も多々ある。

 ミハイルシューマッハが前を走るクルサードのミスで前輪が吹き飛び、シューマッハ大激怒。あわや大乱闘になりかけたという事もあった。

「走り屋とモータースポーツの違いはなんだか分かるか?」

「一概には言えませんが、走り屋はエリーガル。モータースポーツはリーガル。走り屋はその辺のヤンキーでも出来る素人ボクサー集団。モータースポーツは、プロボクサーと言ったところでしょうか?」

「では、その辺のヤンキーとプロとの差はなんだ?」

「―。」

 答えることは出来なかった。

「車に乗ることはその辺のヤンキーでも出来る。だが、その車を完全に乗りこなし、自分の身体の一部と言えるまで操れる人はどうだ?」

「自分の身体の一部―。」

「それが走り屋とモータースポーツの違いってとこだ。車を身体の一部となるまで乗りこなせる事だ。俺はそう思う。車を単なる道具として扱う人は普通の街乗りドライバー。バスやタクシー等の車で商売する人を職業プロドライバー。車を遊び道具として扱う奴は走り屋。車を身体の一部となるまで乗りこなすのをモータースポーツ。」

 俺はどうだ。

 まあ、「自分の身体の一部」ということに驚いている時点で解かるだろう。

「君は確かに、車と一体化しそうだ。だが、そこに彼女とその周囲の人の足の引っ張り合いが重なってしまい、完全に車を身体の一部に出来ていない。プロになるためには、ただ走っているだけではダメ。自分を知り、車を知り、自分の思いを車と同調させながら走って行かなければ、いつまでも走り屋のままだ。」

「自分を?」

「そうだ。今、君がどうしたいかを考えるんだ。彼女と結婚しようがしまいが、君の自由だから、俺としては、そちらの2、3号車や拓磨のようにどうこう言う事はしない。だが、プロになりたければ、自分を知る事を第一に考えろ。言いたいことはそれだ。」

 コーラを飲み終えた。

 あちらも飲み終えている。

「自分を知った上で改めて、ここに連絡したまえ。その上で、またバトルしてやる。」

「あさぎりレーサー?」

「俺が所属しているスーパーGTの、チームの事務所だよ。海老原陽一さんにはしごかれまくった。今は海老原レーシング出身のレーサーとして、あさぎりレーサーで活躍しているのだよ。だから楽しみにしているよ。坂口正孝さんの教え子である君と、本気のレースをするのをね。」

 大山神威はそういうと、車に向かって行った。


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