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純白のSと共に  作者: Kanra
9stage遠き富士
95/435

出走拒否

この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。

公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。

作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。

自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。


また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。

実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。


 後10分走った後、最後の20分間でチーム対抗戦が行われる。

 九重拓洋は必死になって走っている。

 だが、どこまで走っても、脳裏には彼女の事が絡み付いて離れない。

 むしろ、走れば走るほど絡まって外れない。

 メインストレートを走り抜ける。前には海老原レーシング6号車のレクサスLC500。ずっと、この6号車の後を走り続けている。

(6号車のドライバーは、恐らくあの人。スーパーGTでも活躍する人だ。この人のラインをなぞって走って、テクの一つ学んでやる。)

 それに、6号車のドライバーも気が付いていた。だからワザと、本気の走りをせず、遊んでいた。

(ホワイトインパルス4号車。S660で良く頑張っている。だが、何度も何度もミスっている。ピットの会話を見る限り、テクはそれなりだが、それ以外の事で悩みがあってうまく走れないらしいな。前に出すか。)

 6号車がピットレーンに入る。

 S660はそのまま、メインストレートを突っ切る。だが、イエローフラッグが振られた。S660が1コーナーでスピンしたらしい。

 イエローが解除され、再度、6号車はピットレーンから出て、S660の後に付く。

(コーナリングは良い。最終を立ち上がって、メインストレートへ。ん?なんだ?)

 S660から、得体の知れないオーラが放たれる。

「―。」

 6号車はそれが何か解らなかった。だが、S660はラインを外してコーナーへ。

「危ねえ。でも、俺の後にいた時はラインを外さなかった。なんで俺の前でそうなる?」

 トヨペット100RコーナーでS660の前に出る6号車。

(少し本気を出すぞ。付いて来られるなら付いてきてみろ。S660!)

 ライトを付けるLC500が、前を走るプリウスとホワイトインパルス2号車、S2000AP1を蹴散らす。

(速い。ついて行くぞ。頑張れ純白のS!)

 九重拓洋もライトを付けて、必死にLC500の後を追う。

 アドバンコーナーを抜け、300Rへ飛び込む。しかし、徐々にその差が開いていく。

(レクサスとのパワーの差か。頑張ってくれ。)

 ダンロップコーナーに入る。

 LC500とS660の差が大きくなっていく。

 パナソニックコーナーを、タイヤを鳴らしながらクリアしてメインストレート。

「何ぃ!?」

 レクサスは一気に加速。S660も必死に加速していくが、追い付けない。

(どこへ行くの?拓洋。)

「うわっ!?」

 1コーナーでオーバースピードからアンダー出してオーバーラン。コースアウトだ。

(ダメだ。アレは。)

 と、6号車は思った。

 走行時間終了後、レース前のブリーフィングが海老原陽一、拓磨親子と坂口真穂、愛衣で行われていたがそこに、6号車のドライバーが割って入る。

「ホワイトインパルスの4号車だが―。」

「彼が?」

 坂口真穂が応える。

「何か精神的に負荷がかかるような事があったのか?」

 愛衣がどうしようかと考えたが、

「実は―。」

 と、九重拓洋が抱えている問題を話した。

「女。それも、過去の趣味を引きずり出して目茶苦茶にか―。分かった。」

「それが何か?」

「結論から言う。彼を、レースから外せ。」

 それに、海老原親子も坂口姉妹も息を飲んだ。

「俺だってプロだ。プロドライバーとして、彼とレースはしたい。だがそれは、彼が本気を出せる状態ならの話だ。プライベートの問題に足を引っ張られるあまり、本気が出せず、そればかりかストレートで周りが見えず、クラッシュしかけていた。危ねえ走りをするような状態でレースに出られると、彼自身もだが、こっちも危険だ。」

 海老原親子と坂口姉妹は考えたが、

「分かった。そう彼に、九重君に伝えよう。」 

 と、最高責任者の海老原陽一が言った。

「彼には申し訳ないが、モータースポーツの世界は、死に直結する。彼とは、彼の悩みが消えたときに改めてレースをしたい。ああ待った。」

 海老原陽一と坂口愛衣が九重拓洋に、レースに出るなと伝えに行こうとしていたのを止める。

「彼には、俺の口から話そう。嘘の理由で。本当の理由を伝えると、余計に萎縮してしまうだろう。」

「分かった。」

 海老原陽一が肯いた。

 S660の脇で用意をする九重拓洋に歩み寄る。

「九重君。ちょっといいかな。」

 と、海老原陽一が話しかける。

「はい?」

 6号車のドライバーが、「レースに出るな」と言う。

「君のS660。レクサスやTOYOTA86が相手ではパワーの差がありすぎてついて来れない。つまり、レースにならないのだよ。」

「すまない。俺達がbeatで来ればよかったのだが―。」

 九重拓洋はそれに何も言えなかった。

「それが理由ですか?俺はレクサスに、6号車について行けました!MR‐2にも、S2000にも―。」

「レースとなれば話は別だ。皆が本気になる。」

「ちっ―。」

 九重拓洋は悔しさのあまり、拳を握っていたが、どうすることもできない。

「俺、帰るわ。」

 と、九重拓洋は着替えをユーリティーボックスから引っ張り出し、着替えに向かう。その際、ユーリティーボックスを蹴っ飛ばした。

「すまない。そちらの4号車が下手くそだってわけではない。俺も彼とレースがしたかったが―。」

「いえ。良い判断だと思います。本当の理由は私たちから話します。これを気に、彼が良い方向へ行ってくれれば良いです。ただ、彼の彼女が彼のモチベーションの中心になっていたら、かえって悪化するかもしれませんが。」

 それを見ていた知恵はある行動に出ようと思った。


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