ストレートを攻略せよ!
この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。
公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。
作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。
自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。
また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。
実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。
(どんなバカでも車をまっすぐ走らせる事は出来る。そして、ストレートで早いのは初心者ってのは走り屋でも、レーシングドライバーでも、言われる事。コーナーを極め初めて中級。上級者はそれ以外の第3のポイントを極めて行く。)
海老原陽一は前のS660を見ている。
ホワイトインパルスの全車から放たれる特有のオーラの事は、埼玉県や群馬県、そして海老原レーシングのお膝元である山梨県の走り屋やレーサーの合間で知られている。
だが、ホワイトインパルスの4号車、S660から放たれるのは殺人的な物ではなく、幽霊のような不気味なオーラだ。
それ故に、気味が悪い。
(走りも気味が悪い。コーナーの攻略は良い。レクサス勢にも劣らない。拓磨よりも勝っている。だが、ストレートでは、オーラが放たれ、それにより安定しない。ストレートが遅くてコーナーが速いドライバーなんか、聞いたことない。)
メインストレートに入る。S660が加速し始める。
(アクセル踏むのも出来る。問題はここから。)
メインストレートを半分通過。途端に、またもオーラが発生。
180キロでメインストレートを通過していく。
(ストレートで負のオーラが出るため、その後のコーナーでミスをする。愛衣は、「ムキになって目茶苦茶にコーナーに突っ込んでも車は安定しない。立ち上がりでもたつき、結果遅い」って分析していたが、こりゃムキになっている訳ではない。)
フルブレーキでTGRコーナーへ突っ込むが、ラインが変だ。レコードラインに乗れていない。これでは遅い。
再度、S660がピットに戻る。海老原陽一もピットへ入る。
MR‐2も入っている。
S660がピットで止まると同時に、海老原レーシング3号車スープラRZと、坂口真穂のCR‐Zが出ていく。
メインストレートを、知恵のインテグラDC5とレクサスLC500が通過。
「今、俺が後ろから見て思ったのが、君はコーナーの攻略は出来ている。だが、ストレートで変なオーラが放たれ、ストレートの先のコーナーでは、そのせいでブレーキングが遅れている。メインストレートで何を思っていた?」
「メインストレートを最高速に向けて加速していくと、彼女の声が幻聴として聞こえるのです。気にしないようにすればするほど。それで、気が付いたら、ブレーキングが遅れて―。」
「君の彼女は死人か?」
「いえ。」
S2000が戻ってきた。その後には、プリウスPHV GR sport。
「ガス入れて。20L。」
「こっちもお願いします。10L。」
坂口愛衣は海老原レーシング側に燃料10L補給を要請した後、
「タクミ。S660のガス10L入れて。」
と言った。
九重拓洋も燃料補給を要請した後、話に戻る。
「なるほどな。」
と、海老原拓磨が言うのが聞こえた。
「親父さんが持っているエアガンを捨てろと要求する彼女の親。タクミ君の家の事にまで介入され、タクミ君は大混乱。タクミ君には悪いが、その女。捨てちまえ。」
「―。」
「タクミ君は感覚派タイプと見た。タクミ君のモチベーションを大きく左右する要因。それが、今の君の彼女とその周囲の奴等だ。」
インテグラDC5がピットに入る。
坂口知恵も水分補給と燃料補給を行うようだ。
「俺は、彼女の事を愛してはいます。彼女の気持ちも解ります。だからこそ、彼女の周囲の人にも、「エアガンは昔の趣味です。今はモータースポーツをメインに行っております。」と言ってなんとか、話を前に進めようとしています。」
「あのなあ、そっちが話進めようとすると昔の趣味掘り返して来るような連中はな、「モータースポーツは暴走族だ」ってイチャモン付けてくるぞ。今、お前がエアガンを持っているなら手放せば良いが、既に親父さんに押し付けて手放したにも関わらず「エアガンがぁーっ」だろ?それでどうやって証拠見せろってんだよ?手放しちまった物をもう一度取得して手放せってのか?そんなのイカサマじゃねえか。少なくとも、俺なら手を引くね。」
「ちっ!」
知恵が舌打ちをしたのが聞こえた。
「生理的にも無理ですね。そういう人。他人の趣味思考に手出しして、引っ掻き回すだけ引っ掻き回してどっかへ行くのでしょう。」
拓磨と知恵は、思い切った事をしろと言う。
「お前自身、見ていて可哀想だ。そもそも、そこまで言うか普通。もう24と26の大人なんだぞ。お前、このままその女と結婚すれば、良いように言われまくって、最終的には、自分自身を見失って身を壊すだろう。そして、壊れたところで捨てられる。」
海老原陽一は冷静だった。
「タクミ君。モータースポーツを本格的にやりたいのなら、今はモータースポーツをメインですって言う事を何らかの形で示して話を進めて行ってみたらどうだ?それでもまだ「エアガンがぁーっ」って言うのなら捨てろ。話を付けてみてから決めろ。まあ、俺も捨てた方が良いとは思うよ。その女は。」
しかし、九重拓洋は、
(彼女自身は悪くないのに。)
と思っていた。




