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純白のSと共に  作者: Kanra
9stage遠き富士
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富士への道

この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。

自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。


また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。

実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。

 勤務明けの日。自宅で軽く寝たら直ぐに出発。

 目指す場所は秩父ではない。

 静岡県。

 そこは、行ったこともない場所だ。

 静岡県を通過したことはある。だが、いずれも東海道新幹線で通過しただけで、車では無い。

 そして、行く場所は東海道新幹線の沿線ではない。

 静岡県駿東郡小山町。

 富士山の近くだ。

 自宅を出て、燃料を満載したら圏央道へ。

 荒川を渡る橋の上から見える秩父連山の左側に、雪を頂いた富士山が見える。

 年が明けて数週間の冬の青空に聳える富士山の麓を目指す。

 午後0時~午後4時までの4時間、サーキットを貸し切って交流戦だ。

 予定よりも少し早い。俺が鉄道マニアだった上に、今まで言及してはいなかったがかつては自衛官を志していたため、時間にはうるさい。

海上自衛隊が旧日本海軍から受け継いでいる「5分前!」は特に意識している。

集合時間、作業開始時間の5分前には作業にかかれる状態にする。自衛隊と聞くと、最近では「ドッカン!バカバカジャンジャカジャイアン!」等と騒ぐだけで何を言っているのか分らない連中がゴキブリの如く沸くのだが、こうした5分前と言う意識は、自衛隊以外の社会でも重要なことではないだろうか?

まあ「宿題が嫌で俺不登校なんだぜ!かっこいいだろう!」と騒ぐクソガキがちやほやされる世界一バカで、能無しで、グズで、役たたずの日本の世の中には関係無いか。

努力もせず働きもしないで飯が喰えるものなら食ってみろ噴飯者ども。

こんなバカな国、隕石でも直撃して跡形も無く消えちまえばいいんだ。

「この先、東京都です」とナビの音声が流れる。そうか。東京は23区だけではなく、青梅や多摩も東京都だ。圏央道もそこを通るため、一度、東京都を突っ切るのだ。

 今、青梅市付近を走っている。この辺りは地下道になっている箇所があるため、速度超過に注意だ。

 多摩川を渡ってトンネルに入る。

 トンネルを抜けると、防風壁の合間から東京サマーランドが見える。

 夏場はカップルだらけで、吉川准も彼女とデートで行って、童貞卒業したらしい。最も、その後どうなったかは、察しがつく。今、奴の口から奴の彼女の話が出て来ないのも、そういうことだろう。

 こちらも彼女とはそういうことをした。

 いや、正確にはさせられた。

 そして、今も考えさせられている。

 ツインリンクもてぎで、国内Aライセンスを取得した。彼女としては、そうなって欲しいと思う事はあまりなく、むしろ、早く結婚してほしいのに、どうして離れていくのだと思ったらしい。

 別に、国内Aライセンスを取得した後、本当にレーサーになっても結婚できるし、その後生まれた子供もレーサーになった例もある。

「私はタクミと一緒にいたいのに、タクミは離れていってしまう。それが辛い。」

 下着姿で同衾する芽美が言ったのを思い出す。

「セックスしたからって、別れられない訳ではない。」

 坂口さんの言う通りだ。このまま行けば、彼女と結婚する事になる。

 それを望んでいた自分は、どこかに隠れ、今やレーサーになりたい自分が本来の自分であるようになっている。

 トンネルが増えてくる。

 山の中に入ってきたのだ。

 八王子西ICを通過。次の八王子JCTで中央自動車道に乗り換えだ。

 彼女のいる場所へ通ずる高速道路。だが、今日は彼女の所へは行かない。

「どうして走るの?」

 と、何度目か分らない程キスをされた後に言われた。

「道があるから。そこに道があるから走る。そうした思いの積み重ねが、サーキットへ導いた。峠のワインディングロードからね。」

「タクシーで走っているのに?」

「何故タクシーなんだ?俺はもっとデカイ夢を持っていた。海上自衛隊の護衛艦、寝台特急ブルートレインの車掌、バス、タクシー。どんどん縮こまって行く一方だ。人は軽ワゴンに乗ってセックスを体験し、ミニバンに乗って家族と過ごし、歳食ったらプリウス、又はアクアに乗って人殺しをして死ぬ。そんなの俺は嫌だね。」

 中央自動車道に入るため、ランプウェイを走っていると、中央本線を走行するE257系の特急列車が見えた。

(俺、初めて彼女に会った時はあそこを走っていたんだよな。んで、その後いろいろあって、ここを走り出し、今や自分で運転しているんだよな。)

 高速バスを追い越すため、追い越し車線へ。

 京王の三菱エアロエース。

 松本バスターミナル行きの高速バスだ。その前には、伊那を目指す高速バス。

(大学時代はこれにも乗っていたな。これに乗って彼女に会いに行ってか。)

 中央自動車道を走っていると、彼女と過ごしていた楽しくて甘酸っぱい時間を思い出す。だから今、なるべくここは走りたくない。

 それにしても、彼女との時間が面倒に感じるようになってしまったのはいつからだろうか?思い当たるとすれば、彼女が「結婚しよう」と言い始めた頃だ。

「私、タクミと結婚する。結婚してもいい。そう思える人はタクミだけ。」

 等と言われた時は、舞い上がっていたのかもしれない。だが、就職したばかりの俺にとっては、未だ非日常の世界だった。結婚なんて。

 そして、俺と彼女を繋ぐ上で重要な役割を果たした鉄道から、俺が離れてしまった。この頃から、歯車が狂い始めた。

 共通の趣味というものが無くなったのだ。俺は一時的にエアガンやサバゲーに興味を持った後、車に興味を持ったのだが、彼女はアニメへ一直線。

 俺だって、アニメは見るが、見るアニメが違えば話題について行けない。

 だから俺は婚約の事は忘れて欲しいと思ったのだが、向こうもしぶとく、今も結婚の事を考えている。だが、いざこちらが結婚について考えると言えば、向こうの両親等から「結婚するのならエアガン捨てろ」と、一時的にしかはまっていなかったエアガンを引っ張り出して反対。嫌になってこちらが「じゃあ引くわ」と言うと、今度は引き止められる。どっちなのだ一体。

 ツインリンクもてぎでは、セックスまでしてしまった。だが、主導権は向こうで、こちらはやられる一方。

 何度も何度も、夜が明けるのではという深夜時間帯まで何度もアタックされ、

「もうこれで、私から逃れられないでしょう?」

 と言われる。

「セックスしたからって、別れられない分けではない。」

 坂口さんの言った事が脳裏を駆け抜ける。

 だが、それを芽美に言う事は出来なかった。

芽美の気持ちも解らなくも無い。

 24になった俺だが、周囲を見回すと、俺と同い年で結婚したという奴も居る。そして、芽美は26歳。お互い早生まれで、学年で見ると、彼女は2つ先輩だ。そうなると、同級生は27歳という奴が多い。27歳ともなれば、経済状況にもよるが確かに結婚している人も多く、子供だって産まれている事だってあるだろう。そう考えると、早く結婚したいという気持ちも解らなくはない。

 だが、結婚することがそれほど重要なことなのだろうか?

 先日の俺の両親みたいな事なんて、日常茶飯事になって、結果的に離婚したとかよくある話だ。そうなるのなら、結婚せず、このまま平行線で行きたい。

 先日の俺の両親の件で、こちらが大クラッシュしかけて逃げ出した時、俺は、

「奴等は命をなんだと思ってんだドライバーのよお!!」

 と、芽美に怒鳴り散らした。

 そんなことまで包み隠さず話せる相手は、芽美だ。

 坂口さん達には、走りに関して話せる。だけど、嫌なこと、辛いことを話せる相手は芽美だ。しかし、芽美は車の事には疎い。

(もし芽美が車に興味を持っていたら、結婚も躊躇しなかったかもな。)

 と、思っていると、標識がまもなく大月JCTと告げる。

「ゴメン芽美。今日は芽美の可愛くて優しくて、ちょっとワガママな姿を見れない。」

 と、中央自動車道の方へ言うと、俺は目付きを変える。


「今日の俺が目指す場所は、富士スピードウェイだからな!」


 その時、俺の後にはホワイトインパルスの車列が付いていた。

 坂口さんのS2000AP1を先頭に、CR‐Z、インテグラDC5。

 俺のS660を含め、4台のスポーツカーが、富士吉田線を駆け抜けていた。


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