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純白のSと共に  作者: Kanra
8stageツインリンクもてぎ
86/435

愛衣、走る理由

この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。

自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。


また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。

実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。

 6週目。

 坂口愛衣の前に、最下位のマシンが見えてきた。

「捕まえた。ここから、抜き始める。タイヤのグリップ力は衰えていない。」

 最終コーナーからメインストレートに突入すると、最下位の集団が近付いてくる。

 7週目に入る。

1コーナーで更にその差を縮める。

 最下位集団は2コーナーを立ち上がっている。

「ロックオン。ヘアピンで行くわよ。」

 6コーナーのヘアピンへ突入。

 前の集団がインに入る中、坂口愛衣はアウトからインリフトを使って追い抜き、次のS字へ。

 S字で更に前のマシンを抜き去っていく。

「ここからよ。私の本領発揮は。」

 だが、その後を2位のマシンが追っている。

 実況のアナウンスが、最下位集団を追い抜き始めた先頭2台の奮戦を伝えている。

 メインストレート通過時、坂口真穂がピットレーンから、

「後来てるけど気にするな!」

 と叫んだ。叫んだところで聞こえるものじゃないが。

 1コーナーで、2位のマシンがアウトから周回遅れのマシンをオーバーテイク。

 愛衣と2位のマシンの間を走る周回遅れのマシンは無い。

(2位のマシンは―。)

 真穂が2位のマシンを調べる。

「海老原レーシング。親父とやりあっていたカプチーノ使いの息子だ。」

「親父と?」

 芽美が訊く。

「私の親父は元レーサー。その親父のライバルが、山梨県に拠点を置く海老原レーシングのドライバー海老原陽一。花屋を営む傍ら、軽スポーツカーのワンメークレースからスーパーGTまで活躍する人。今は専らD1グランプリやカートレースで活躍する程度になっちゃっているけど。」

「その人の息子が2位に居るって?」

「海老原拓磨。18歳でレーシングカートライセンスを取得し、カートレースで活躍。そして、去年にはフォーミュラレースのシートを獲得している。本当なら、愛衣もそこに入るはずだった。F1のシート獲得のために。」

 

 海老原拓磨は坂口愛衣を捉えたままだ。

(なぜだ。なぜ俺は抜けない。)

 えげつないと言いたくなるようなインリフトの一方で、インリフトを駆使しつつ、自分の体も使っている坂口愛衣。

 再び、メインストレート。

 しかし、ストレートでも差を詰められない。

「そのテクニックを、なぜ埋もれさせる!埋もれさせる理由がどこにある!」

 アグレッシブに走る坂口愛衣。

(海老原拓磨。山梨県韮崎市のスポーツランドやまなしを拠点に置く海老原レーシング代表の息子。これが、もてぎ参戦はラストとか吐かして。似たような生い立ち。レーサーの父を持つ。そっちはF1へ一直線。でもこっちはレーシングカートに留まったまま。余計なことさせられたせいで。私とそっちの差は何?それが解らない限り、私はフォーミュラやF1には行けないでしょうね。私が走る理由は、海老原拓磨と坂口愛衣の間にある差が何かを知って、F1へ登りつめるためよ。)

 

「愛衣が本当は好きな人。それは、海老原拓磨よ。自覚していないだけで。」

「えっ?」

 芽美はそれを聞いて驚いた。

「海老原拓磨と愛衣は、ほぼ同時にレーシングカートに乗り始めた。どちらも、モータースポーツの世界では名高いレーサーの息子と娘だったから、注目されていた。でもね、強かったのは海老原拓磨。だからこそ、愛衣は憧れていた。同い年で、自分と同じ生い立ちながら、自分よりも長けている彼に。」

「それで、その海老原拓磨の背中を追っていると?」

「そう。行くとこまで追うつもりだった。佐藤琢磨や鈴木亜久里のような伝説のレーサーの居る世界までね。でも―。」

「でも?」

「私と同じ。周囲との軋轢に屈してしまった。「海老原拓磨に勝ったら、引退しろ」って言われ、走る理由を無くしてしまった。奇しくもこのとき、勝ってしまった。そして、逃げ出した。モータースポーツから。逃げ出して、社会に出て、酷い目に逢って、再びモータースポーツの世界に戻った時にはもう、海老原拓磨は追い付けない所へ行ってしまっていた。」

「それでも、再び追いはじめた?」

 それに、真穂は肯いた。

「無理と分かっていながらね。だからこそ、自らスポーツカーに乗って走り出したタクミ君に、行けるところまで行って欲しいと思って、肩入れしているのよ。」

 レースはファイナルラップに入った。

 海老原拓磨と坂口愛衣の差は1秒も無い。

 

(お前と俺。どちらも同じ。何が違う!再びモータースポーツの世界に戻ってきて名声を上げているお前を打ち負かさなければ、俺は安心してフォーミュラに行けねえだろうが!)

 突っ込んでいく海老原拓磨。だが、坂口愛衣が膨らんだ。

「何!?」

 最終コーナーで抜いた。そして、レース終了である。


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