三峰ダウンヒル
この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。
自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。
第3セクションを下るBRZは、その差を広げていく。
だが、下り勾配がS660を助け、10秒近くあったBRZとの差が、再び縮まり始めた。
(まだ諦めないか。俺の中の先行後追いバトルのルールは、相手を屈服させたら勝ちでもある。よし。ルールを変えよう。相手を屈服させられなければ、引き分けだ。)
BRZの朝倉はS660がまだ諦めていないと察し、下りでも逃げまくる。
「ここで見ていれば、降りてくるの見えます。そこが最終セクションへ入るヘアピン。」
海老名芽美と坂口愛衣は、S2000で、第1セクションから第2セクションへ切り替わるヘアピンが見える場所へ行き、BRZとS660を待つ。
「お姉ちゃんの見立てだと、BRZが圧倒的な差を付けてS660を破るみたいです。これは、車の性能の差です。」
「白ナンバー付けていても、軽自動車であることに変わりはない。」
「ええ。タクミが、諦めてしまう事が、ちょっと心配です。」
「確かに、そういうところあるかもしれない。でも、タクミは諦めることなく、最後まで走り抜くと思う。」
第2セクションに飛び込んできたBRZ。ヘアピンを抜けると、S660もヘアピンに突入していた。
戦闘機で急上昇するような上り勾配を下っているのだから、ジェットコースターに乗っているような気分になる。
ハンドル捌きとパドルシフトのギアチェンジ。ちょっとでもミスをすれば、大クラッシュする三峰ダウンヒルだ。
BRZとS660の差は再び10秒近く広がる。
「クソぉ!やっぱダウンヒルでも敵わねえか!ランエボに勝てたのはただのマグレだったのかもしれねえ!」
それでも、S660の九重拓洋は今の自分が出来る限界ギリギリの走りで、BRZを追う。
2つ目のヘアピンに、BRZが突入。そして、S660。その差7秒。コーナー進入速度は、S660の方が速い。
S660が派手にタイヤを鳴らした。その音は、第2セクションの終わりまで響いていた。
「前から10秒近く差がある。やっぱり、BRZが前か。」
坂口愛衣は溜め息をついた。
「まっタクミって容赦ないから。この前もコウ―。あっ私の大の仲良しさんの4WDをいろは坂で3分近い差でボッコボコにしちゃったから。ゲームでだけど。4WDでも関係ないでしょ。」
「なんのゲームか察しは付きます。大方、豆腐屋のハチロクのやつでしょう。それで、相手の方は何度やったのですか?」
「アレが初めて。いや、「俺速いんだよ」って自信満々。ただ、やった後、タクミちょっと機嫌悪かった。」
「当たり前です。そんなのバカでも解ります。」
ドギャーーーーーーッ!と再びスキール音。
「おそらく、タクミは顔と態度には出してはいないだけで、貴方と二人でいたいって気持ちを逆なでされるように、貴方が他人と仲良くしているのが気に食わなかったのでしょう。その上、その方とバトルにもならない事させられたら、機嫌を悪くするだけです。それで、ミッドシップは4WDよりも速いと勘違いして、だったらFRも敵じゃないと思い込んでしまい、今のバトルを引き受けて、高速セクションで引き離されて行く現実を見せつけられているとしたら、タクミはやり場のない怒りを向けてくるかもしれないですよ。」
徐々にスキール音が近付いてくる。だが、差が開いていく一方である事が、二人の居る場所からも分かる。
ヘットライトが見えた。
やはり、先に来たのはBRZだった。
遅れて、S660も来るが、その時にはBRZは第1セクションに入る最後のヘアピンをクリアしていた。
「ギャッギャーーーーーーーッ!」と、S660がタイヤを鳴らしながらヘアピンへ突入。しかし、
「オーバーステアだ。ミスったね。」
坂口愛衣がボソっと言った途端、S660はリアが一挙にブレイクしてスピン。
しかし、ヘアピンのため減速していた事が救いとなって幸い、どこにもぶつかっては居なかった。だが、これでS660の完全な負けだ。




