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純白のSと共に  作者: Kanra
7stage臨界点突破
72/435

midnight dream

この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。

自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。

 安曇野サーキットstage1は高速のインターの近くにあり、アクセスしやすい。

 主にレーシングカートとバイクレースを行うサーキットだ。

 そして、高速のインター付近はどういうわけか、ラブホも多い。

 俺に至っては、駅前のビジネスホテルで宿泊を試みたが厄介な事に彼女が拒んだ上、別の宿を紹介すると言われ、行き着いたのが、安曇野サーキットstage1近くのラブホだったのだ。

(クソ野郎。こういうつもりか。)

「真穂の話聞いたら、嫌になった。私のタクミをまるで自分達の物のようににしてて。」

「チームメイトって感じに―」

「誰よ。私が勝手に浮気したって勘違いして、一人でキレて事故ったのは?真穂から全部聞いたから。その理屈なら、私以外の女の子とタクミは一言も喋らないって事になるんじゃないの?」

 グイグイとラブホの部屋に連れ込まれる。

「ガキじゃねえし、エンジンブローした車じゃねえんだ。引っ張んな。」

「逃げそうだから。」

 部屋は大部屋。だが、ダブルベッド。

 風呂もある。

「とりあえず、風呂入る。」

 そういって、風呂に逃げ込む。

 冗談じゃない。何されるか分かった物じゃない。

 確かに、彼女の事は好きではある。だが、いつも会いに来いだの、結婚できるのだの言っておいて、いざ会いに行った時、他の男連れて来ている事が多々あり、ずっと二人だったの半分も無いと思う。そりゃあ、そちらの親が出てくるというのは仕方ないけど、それ以外はなんだと言うのだ。

 湯船に入り、目を瞑る。浮かんでくるのは彼女が下着姿で、ベッドで待っている光景ではなく、定峰や碓氷等の峠、そして、サーキットで走っているときの光景だ。

「今度、二瀬ダム―三峰神社間でバトルをしないか?」

 と、以前、BRZの朝倉さんに言われたのを思い出す。

 二瀬ダムから三峰神社の峠道は、スタートしてから少しの間は見通しが悪く狭い道だが、ほとんどは見通しが良く道幅もある。しかし、かなりの急勾配区間が続く。BRZとS660は互角だろうが、4WDが相手だと瞬殺されて終わりだ。

「白石、定峰、昇仙峡、碓氷と来て、次は三峰神社。行く行くは群馬や長野等の北関東甲信越地方の峠に進出。更には、日本海間瀬サーキット、富士スピードウェイ、鈴鹿、岡山国際等のサーキットにも進出予定。峠バトルにサーキット。走り屋の行き着く先はどこなのか。人は軽ワゴンに乗ってセックスを経験し、ミニバンに乗って家族と過ごし、プリウス又はアクアに乗って事故って死ぬ。そんなの俺は嫌だな。知恵ちゃんのように、スーパーGTの名門ARTAまでは行けずとも、せめてアマチュアでも良いから、レーサーとなって走り抜けたい。」

 そう呟いた時だった。

「私も入っていい?待ちくたびれた。」

 と、芽美が乱入してきたのだ。

 それでも平然としている。

「私の裸体。見せる機会なんて滅多に無い。誰にも。」

「本当にそうか?どっかの豆腐屋の彼女みてえな事してんじゃねえのか?元に、こんなラブホ、芽美から入ろうって言い出したこと事態が怪しいぜ。」

「傷だらけの身体。ていうかタクミは随分と平然としているね。興奮しないの?」

「やっぱり何度か来てんな。男と。それが許せねえ。俺は、真穂さん達とはガキの頃から良くして貰ってはいる。だが、こんなことはしたこと無い。最近、一気に仲良くなった気はするが、車の話で盛り上がっている程度。こんな、甘い香りのする中ではなく、焦げたタイヤやガソリンの臭いが立ち込め、殺気立つサーキットや峠でな。」

 芽美は躊躇いもなく、湯船に浸かり、俺の隣りに入る。

「私だって、寂しい思いしていた。ここに来たことはある。全部一人で。家だと、親がうるさいから。裸でベッドに入って、感じることもないタクミの感覚を探していた。」

 危険。

 さっきから、ブレーキ踏みっぱなし。ABSがロックしそうだ。

 やはり、俺も男なのか。

 風呂を出る。が、芽美は下着しか着ていない。そして俺にも、下着以上を着るなと言ってきた。

 そのまま、ベッドへ。

「私はね、ずっとタクミに会いたいって思っていた。」

(あっそ。)

「初めて会った日の事、覚えてる?岡谷駅でタクミが飯田線に乗ろうとしてた時に私にぶつかった。」

「覚えている。」

「その時、半ば強引に付き合えって言っちゃって。ほんと、あのときは私もわけ解からなかった。ただ、タクミに一瞬で惚れてしまった。まだ、高校生だったタクミが可愛らしくって。」

(あの時の俺は「年上彼女が出来て24歳くらいでその彼女と結婚できればいいかな。年上で、でも童顔のお姉さんタイプだったら最高だ」なんて言っていたっけ。)

「お互い一人っ子で、彼氏と思いつつ、弟のようにも思えた。タクミが大学2年の時、「寝台特急が無くなるのなら、大学に行く意味はない。無理に地図も読めないバカ連中と付き合って目茶苦茶になるなら、大学辞めてやる」って言った時、マジギレした。同じような理由で短大止めてこんなになっちゃった私の二の舞を演じて欲しくないから。」

「俺、実は―。」

 どういうわけか、俺は一昨日からの事を包み隠さず話してしまった。

 話しているうちに、溜まっていたフラストレーションが全て吐き出されてしまった。

「タクミって、何があっても仕事は投げ出さないけど、同時に無理をしすぎてしまう面も持ち合わせている。親の喧嘩の時点で、仕事行くと見せかけて、「安全のため、仮病を使って欠勤する」って言う選択もあった。」

「俺はタクシー運転手。身内のこんなくだらねえ事で、欠勤する訳にはいかんでしょう。」

「私はそういうタクミだから好き。でもムリは禁物よ。レーサーになっても良いけど、死んだらおしまいなんだからね。」

 その後の事は分らないけど、一線は越えていない。


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