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純白のSと共に  作者: Kanra
7stage臨界点突破
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理由にならない理由

この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。

自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。

「リュックの中身は職場の制服。昨日のTLの書き込み。大方、察しは付いたよ。」

 芽美がピットに戻ってきた俺に言う。

「親のケンカの巻き沿い喰って寝不足なのに、無理して勤務して、言い掛かり付けられ、その後、何か一発大事が起きて、一目散に車に飛び乗って逃げ出したってとこかしら?」

「ああ。そもそもなんで、見てもいねえ物に関して証言させんだよ。んで、テメエに不利な証言されたって俺まで暴行して、一睡もさせないで勤務させ、言いがかり付けられ、挙句の果てにはレインボーブリッジで事故りかけたんだ。あれ、マジの事故にならなかったから良かったけどさ、下手したら俺、死んでたぜ?高速で事故ったら間違いなく死んだぞ?なんなんだよ一体。どいつもこいつも、命を何だと思ってんだドライバーのよおっ!?」

 ピットの工具箱を蹴っ飛ばして怒鳴る。芽美に怒鳴ったところでどうにかなるわけではないが。

「なるほど。昨日見た車、やっぱりタクミだったか。隕石が落ちて来るような不気味な雰囲気を感じたわ。」

「見られていたのか?」

「正確には追い抜かれた。」

「よくさあ、こういうことあると「そんな日もあるさ」って言う奴いるじゃん?俺、そう言う奴ぶっ殺したくなる。んじゃお前、JAL123便のパイロットに「そんな日もあるさ」って言えんのか?垂直尾翼無くなっているってコックピットから見えねえから、どうすることも出来ず、なんとか奮闘したが御巣鷹の尾根に墜落しちまった。それをお前、「そんな日もあるさ」の一言で済ますのか?テメエ、垂直尾翼無くした飛行機飛ばせんなら「ゴメン」って言うけど、結果的には墜落して、520人死んだんだぞ?それを「そんな日もあるさ」で片付けられんのか?「そんな日もあるさ」で済んだらなあ、事故なんか起きねえんだよ!」

 レーシングスーツを着替えた真穂さんも、話に加わる。

「キレ方が、私の親父にそっくりね。それで、気が付いたらここに来てしまっていた。どっかの豆腐屋のハチロク乗りがそれでどうなったか、分かる?」

「―。」

「それ以前に、芽美を浮気したと勝手に決め付けて、昇仙峡ラインでクラッシュしたのはどこの誰?」

「―。」

「まだまだ、半人前の走り屋ね。一人前の走り屋なら、やっていいこと悪いことの分別を付けなさい。」

「真穂さん。俺も、レーサーになろうと思う。」

「今までのことで、タクシーの仕事が嫌になったから?それなら反対よ。」

「違う。俺、今感じたんです。今のままでは、世界は広がらない。何処まで走っても、何も無い。でも、真穂さんのようなレーサーになって、自分の走る世界を広げて、最終的には、走り抜けたその先の景色が見たいって。」

「本気でレーサーになりたいのなら、今のその性格。キレたら分け分らなくなってしまう性格をなんとかしなさい。キレても自分を制御出来なければ、レーサーにはなれない。レーサーになるなら自分を知れ。自分を知らなければ、車は思うように走ってはくれない。まっ本当にレーサーになるなら、ライセンスを取って来ることね。そうすれば、ワンメークレースでも、スーパーGTでも、相手をしてあげるし、私達三人姉妹のチームにも補欠として入れてあげても良いわ。本気でレーサーになろうって気があるのなら、まずはライセンス取ってこい!」

 真穂はそう言い残し、CR‐Zに乗り込む。

「ちょっと待ってください。えっと―。」

「彼氏なら、彼女を家まで送ってあげなさい。それが彼氏ってもんでしょ。私、彼氏に振られた。私がレーシングドライバーだからって理由で。理由になってないでしょ?」

「だからって、根本問題、俺のエスロク2人乗りキツイって!」

 だが、真穂さんはCR‐Zに乗って行ってしまった。

「あーあ。行っちまったよ。荷物積めねえのに。えっと、とりあえずユーティリティボックスに俺の荷物積めるだけ積み替えて―。」

 前のボンネットを開け、助手席に積んでいた自分の荷物を無理矢理ユーティリティボックスに積み替える。

「トランクはこっちでしょ?」

 と、芽美が後を指す。

「いや、トランクってもんはない。この車は走るための車。走ることを第一に考えて生み出された車だ。だからここは、エンジンだ。」

 後のボンネットも開けてエンジンを見せる。

「後輪駆動である上、後にエンジンを乗せる事で加速するパワーを無駄なく路面に伝えられる。ハードブレーキに対しても、車の姿勢を綺麗に保てる。それに、フロントが軽いからステアリング操作に対するノーズの動きはダイレクト。こいつは、速く走るために生み出された車さ。」

「でも、真穂に負けてたよね。」

「そっそりゃあ、相手がプロレーサーだ。だから、俺も目指したいの。レーシングドライバーを。」

「あのさあ、私、今日は甲府に居ることになってんのよ。それも今夜帰らず、明日の朝帰るってことになってんだけど、タクミはどうせ家に帰りたくないんでしょ?」

 親に送ったLINEを素直に見せる。

「ははーん。明後日まで帰らない事になっているのか。」

「そして、8日間の出勤停止処分のオマケ付き。仕事が8日間出来ません。」

「じゃあ、今夜は分かるでしょう?」


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