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純白のSと共に  作者: Kanra
1stage孤独な走り
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入院と事件

 俺、九重拓洋の母が入院した。

 足の手術のため、2週間だそうだ。

 そして悪い時、嫌な事が断続的に発生する。

 こういう時に限って、仕事のシフトがきつい物になってしまう。

 更に悪い事が続く。

 このきついシフトの原因は、同時に2人も同期が辞めたのに加え、今年入った新卒ドライバーも2人辞めたための人員不足によるものだ。

 そしてそこに追い打ちをかけるように、俺の同期、安斉一歩が勤務中、移動式小型オービスを光らせて免停喰らった。

 結果、俺の同期でまともに勤務できるのは、俺と吉川准、そして事務職の榎本加穂留だけになってしまった。 

 だが、仕方が無い。

 与えられた仕事を全うするだけだ。

 タクシー運転手は想像以上にハードだ。

 今、俺の頭にあるのはいかに早く効率的に仕事を終わらせるかだ。

 しかし、それでもそういう事は起きる。

 夕方、東京ミッドタウンから銀座4丁目のキャバクラまで行く某会社役員を乗せた時、事件が起きた。

 夕方の銀座はどこを走っても渋滞に捕まる。そいつの行き先は渋滞地帯のど真中だ。

 更に、そいつは最も激しい渋滞を起こす外堀通りと中央通りを通れと言うのだ。

避けようがない。

「只今の時間、渋滞が多発しておりますため、少々時間が掛かりますがよろしいでしょうか?もし、お急ぎでございましたら―。」

 と、渋滞を少しでも避けられるコースを提案するが、

「良いからこのコースで行けバカ!」

 と、そいつは椅子を蹴飛ばした。

 仕方が無い。混雑するのは承知で、やむ無くそいつの言う混雑するコースを走らさせられる。

 だが、

「おいなんで信号で止まんだ馬鹿野郎!」

 今度は赤信号で止まることにキレて椅子を蹴った。

 まずい。

 こいつ、DQNだ。

 その後、何度も何度も椅子を蹴飛ばす。

 それでも、どうにか客の行き先まで車を進めるが、何しろ混雑するコースを行けと言われた以上、そのコースを行かざるを得ず、渋滞に巻き込まれて二進も三進も行かない。

「んだよこの社会のゴミめ!二種免許なんかなあ誰でも取れるんだよ!死ねよ!バアーーーーーーーーーーーカ!」

 もうキレた。

「だったら歩いたらどうですか!金払って降りろ!」

 思いっきり怒鳴りつけ、ドアをバアン!と開ける。

 そいつはぶつくさ言いながら歩き出した。

 それから数分後、案の定、クレームが入ったと連絡が来た。だが、ご丁寧に俺がキレた事ではなく、渋滞するコースを進んだ事に対してクレームを入れたらしい。

(なんでこれで明日の朝まで会社に残って、上司に報告して、始末書書かなきゃならんのだ。明後日も勤務だし、入院している母親の見舞いにも行かないとだし。最悪だよ。)

「ムカついた。キレた事にクレーム入れていないとこ見ると、あの野郎、ワザと混雑する場所にぶち込んだな。もう今日は仕事しねえで寝よう。俺がキレていては、乗客乗せたとして、その客を殺してしまうかもしれない。」

 どうにか、混み合う銀座を抜け出し、改めて、会社に連絡する。

 俺の会社は、日本で一番デカイタクシー会社のグループに所属する会社だが、奴は親会社にクレームを入れ、親会社経由で俺の会社にクレームが入ってしまった。だから、明日の朝、会社で担当上司が出勤するまで待ち、始末書と報告書を作成しなければならない。

「ひどいドバッチリだ。」

 と、俺はタクシーの休憩所に車を止め、思いっきりハンドルにもたれ掛かって溜め息をついた。

 だが、これで事件は終わらなかった。


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