CR‐Z
この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。
自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。
散々な思いをして、定峰峠を越えて帰る時だった。
後ろから白い車が追ってきた。
(S2000か?DC5か?)
定峰峠の入口で追いつかれてパッシングして来たその車は、CR‐Zだった。
(CR‐Zだと?見かけねえ奴だな。バトルしようってのか?先行後追い。俺が先行か。)
ハザードを点滅させて、バトルの意思を見せる。
一気に加速。
最初の川沿いのセクションを突き進む。
(SOHC4バルブi‐VTECエンジンで、更にハイブリッドカー。2012年以前のモデルは、パワーもトルクも貧弱だが、2015年のマイナーチェンジで、3リッターのV6エンジン並みの加速感を得ている。そして、CR‐ZはフォーミュラやスーパーGT等のモータースポーツにも使用されている。非力なハイブリッド車と思って甘く見ていると、千切れない。)
最初のヘアピンコーナー。
ここからは急な登りだ。一気に高度が上がる。
「非力な車は、ここからペースが落ちる。なぜならいきなり急勾配になってしまい、登るためのパワーが足りず、引出しに時間がかかるからだ。」
だが、CR‐Zは離されずに着いてくる。
「ほう。離されないで着いてくるか。」
最初の右コーナーを抜ける。CR‐Zとの差が少し開く。
(ふん。当たり前だ。しょせん、ハイブリッドカーのプリウスやインサイトに毛が生えた程度の車。最初からガチでスポーツカーとして設計されたこいつに勝てるもんか。)
明王院の入口を通過。右コーナー。
CR‐Zとは3秒近い差がついた。
(先行後追いバトルでは、先行と後追いの差が何秒かは微妙だが、まあ、5秒差も付けりゃ勝ちでしょ。この先の若宮八幡のヘアピンを抜けると、複合コーナー。立ち上がりでは、S660がCR‐Zより上手。古嶺神社のダブルヘアピンを抜けたらストレートで一気に引き離してKO勝ちだ。まあ、そこまで行く前に引き離してやらぁ。余所者相手に、KO勝ち出来ねえ奴は、ただの雑魚だ。)
先日、真穂のシビックがクラッシュしたコーナーが近付く。
バックミラーを見る。イン側を走るS660に対しCR‐Zはアウトから迫ってくる。
そして、若宮八幡のヘアピンを抜け、S字の複合コーナーからストレートへ突っ込む。
「終わりだ。」
レッカーサービスの看板。再び、S字。
それを抜けると長めのストレート。
(ん?)
S660の後をぴったりとCR‐Zが食い付いてくる。
「離されずに着いてくるか。登りストレートで。」
直角左コーナーからの右コーナー。
再びストレート。
「こいつ強い。ヤバイ。遊んでいる場合じゃなくなってきた。真面目にやろう。」
まもなく、古嶺神社の連続ヘアピン。
今いる場所から連続ヘアピンまでは、「?マーク」を描くように進む。
?マークを描き終えると、目の前に直角左。
木々の合間から、夕陽の秩父市と両神山が見える。
「飯田さんのスイスポを抜いた時と同じシチュエーション。だが、今、追われているのは俺だ。こいつ、かなり強者だ。」
連続ヘアピンの一つ目に入る。
インから入るが、CR‐Zはアウトから。
「やべっ!」
アウトから抜かれそうになる。このままでは、次のコーナーでインから抜かれる。
「溝走りしてやがるぞこいつ!」
次のコーナーでイン側へ飛び込む。
CR‐Zが一瞬引く。
その間に、こちらもイン側の溝を使ってコーナーを突破。
「プリウスに毛が生えたような車で、イキったバカかと思ったがヤバイ。」
勝負を決めにかかっていたダブルヘアピンを通過。
ストレートで引き離しにかかる。
だが速い。振り切れない。
緩いコーナーを、軽く流して明王院の裏門を通過し左クランクコーナー。
ストレートを突っ走って右、左、右。
「ヤバイ!」
CR‐Zとの差はもう無い。
この先はΩを描くように進む。
CR‐Zがアウトから行く。こちらはインに張り付けられて前に行けない。
CR‐Zのケツが当たりかける。
「くそっ!」
引いた。抜かれた。
(ストレートで縮めて再度行くぞこの野郎!)
スポーツモードに移行。
緩いコーナーを抜けて、再びダブルヘアピンが近付く。
「いけねっ。」
若干のオーバースピード。外に膨らむが立て直せる。その間に、CR‐Zが離れる。
ダブルヘアピンの後はまたストレート。
そして、峠の茶屋手前で左。須川さんのランエボはここで力尽き、S2000に負けた。
峠の茶屋を通過。CR‐Zは小川方面へ下る。
「ならば!ダウンヒルで勝ってサドンデスに持ち込んでやる!」




