新しい車
この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。
自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。
「中古車って言っても、ウチらの車は中古よね。」
「ピンきりよ。タクミは新車しか乗りたくないとか生意気吐かして。」
坂口愛衣と退院した真穂は、新しく買う車を見ている。
レースで連戦連勝を果たした真穂の口座には、それまでの賞金がドドンと溜まっている。
かつては東京で就職したものの、散々残業やらでこき使われた挙句、低賃金で割に合わなくなって、こちらもうつ一歩手前で秩父へ舞い戻って来てしまった。
そして、今はそば屋の手伝いとレーサー活動の日々だ。
「シビックでしたら―」
と、案内されたが、それはシビックタイプRではなく7代目EU型。通称スマートシビック。だが、まるでミニバンのようなスタイルで、とてもスマートとは言えない。
「タイプRは?」
「タイプRですか?」
「そっ。シビックタイプR。最強のFFと言われるヤツよ。あっでも尻がデッカイのは勘弁。デブで速くないし、クソまぬけ。セダンタイプで、スポーツ走行が可能。それでいて、利便性も良いやつ。」
HONDAの中古販売店の店員が困った顔をする。
「新型のシビックタイプRも見たわよ。でもね、高い。NSX程じゃないけど最近のスポーツカーってなんでこう高いのかしら?500万って、購買意欲無くなる。」
「S660は?」
「エスロクねえ。確かに、タクミ君の車だけど同じ車じゃつまらない。」
その時、愛衣の目に一台の車が止まった。
「ねっこれは?」
CR‐Z。2017年に新車としての販売が終わったが、ハイブリッド仕様のスポーツカー(コンパクトクーペ)だ。
「CR‐Zか。色はホワイト。2人乗り。荷物も積める。配達にも、スポーツ走行にも使えるね。えっと、2015年製造だから4年落ちだね。えっと、価格は―ああ、行ける行ける。一括で払える。でも、出来ればシビックが良かったんだけど―。」
「いいんじゃない?いっそのこと、バカ男と一緒に忘れて、新たな車と共に新たな世界に行くってのもアリでしょ。」
「そうね。」
その日の内に、売約成立。
予算内に収まった。
だが、真穂はあっけなく、シビックタイプRから降りることになってしまった。
「さて、そうと決まれば、必要な事して車貰って、サーキットで試運転よ。」
それから数日後、本当に真穂は、サーキットにやって来た。
新たな車、CR‐Zと共に。
秩父サーキットで試運転。
ノーマル仕様。何もいじっていない。ここから、少しずつチューニングしながら、自分の好みに合わせていく。
愛衣と知恵も見守る。
そして、そこにはこのサーキットのラスボスと言われる車もいた。
HONDAが製造したスポーツカー史上、最高傑作と言われ、HONDAのスポーツカーを象徴する車。
NSXタイプRである。




