サイノス vs 純白のS
バーベキューホールから赤城神社に向かうため、エンジンを掛けて駐車場を出ようとした時、老人マークをつけた2代目サイノスが強引に割り込む。
俺はとっさにハンドルを切って逃げる。
「ガキがそんな車乗るな!」
カチン。
頭に来た。
煽り行為である。
そんなことするから、テメエはそんなポンコツにしか乗れないんだ。
前のサイノス、遅い。
3速ATか?
ぶち抜いてくれる!
アクセルを吹かす。
後から、シビックも来る。
(やる気かこいつら?)
三つ巴だ。
青のFD2シビックタイプR。頭文字Dの庄司慎吾は赤いEG6だったが自爆した。こいつはなんだ?ガムテープデスマッチでもやろうってのか!?
シビックが抜きにかかった。「行け!」と合図。
トロマサイノスもぶち抜く気だ。シビックが「来い!」と言う雰囲気を見せる。
「行け、純白のS!」
アクセル全開!飛べ、純白のS!
一気にトロイ、トンマサイノスをぶち抜き、それに飽き足らずFD2までぶち抜く。バックミラーを見ると、FD2のドライバーが驚いていた。走り屋みたいな雰囲気を出している割に、なんてチキンなんだ。
赤城神社の駐車場に車を入れると、FD2も来た。
「随分とスゲエテクニックだったな。こっちの加速をも抜くとは。」
と、FD2のドライバー。
だが、ぶち抜けたのには理由がある。
サイノスを抜いた後、サイノスの前でいきなり急ブレーキを踏んで煽ったのだ。そうなるとこっちはサイノスとFD2の間に戻ろうにもFD2が速度を落としてスペースを塞がれてしまい、FD2の前に出るしかなくなってしまうのだ。
「別に。」
と、俺は答えた。
だって、抜くしか方法が無かったのだから。
レースをしていた訳ではない。確かに、サイノスにキレはしたがサイノスを煽ってはいない。追い越せるところで追い越すつもりでいたが、シビックが煽ってきた上、サイノスまで煽ったのだ。
煽り運転する奴程、自分は運転が上手いと思い込む。だから、普通に追い越されただけでビビるのだ。
まあ、煽りたい奴同士のレースに巻き込まれたと思うか。
どっちも下りで崖下に落っこちて死んじまえ。
それにしても、呆け無いバトルだった。
大沼の畔にある赤城神社は澄み渡った青空の下、湖面からの太陽光の照り返しが眩しいが心地良い。
そして、デートスポットでもある。
湖畔で手繋ぎデート中のカップルが数組。
それを見ると、坂口愛衣の事を思い出した。
奴に何があったのか解らないが、とてつもない喪失感である。
VTECエンジンの音に振り返ると、さっきのFD2が駐車場を出ていった。
俺も出ていこう。カップルだらけで、喪失感が半端ない。
気分が沈んだ。BGMはfripsideの「secret of my heart」だ。
下りは漫画「頭文字D」でも登場したコースを降りる。
「奴のことは忘れろ。俺の本命は、長野にいるのだから。こいつで、長野を走る。彼女を乗せてな。そのために、俺はこいつに、純白のSに乗り換えたんだ。」
前方から同じ純白の車が来る。
コーナーの途中ですれ違った。
純白のS2000だ。
そいつとすれ違った時、全身を電気が駆け巡ったかのように感じた。
(なんだあいつ?)
赤城山の大沼付近は追い越し禁止道路です。
作中のような行為は、正面衝突事故の恐れがありますので、絶対に真似をしないで下さい。
また、煽り行為を受けた場合は、ドライブレコーダー等での記録、及び警察への通報を行ってください。