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純白のSと共に  作者: Kanra
6stage理想と現実
55/435

すれ違い

この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。

自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。

 1995年。富士スピードウェイから伝説が産まれた。

 軽スポーツカーレースで、それまで誰にも負けなかった男が負けたのだ。

 SUZUKIカプチーノで3年連続優勝した男を打ち負かしたのは、HONDA ビートに乗る坂口正孝。

 軽スポーツカーで初めて、ミッドシップ車として登場したビートに乗る坂口正孝は、FRのカプチーノに乗る3年連続優勝選手である海老原陽一とは5秒差で予選を通過。

 全5周の決勝レースにおいて、スタート時、いきなり海老原を抜き去った坂口はその後、独走態勢でレースを終えた。

 その後、坂口は国内全3戦行われる日本軽スポーツカーレース全戦全勝。

 更に、スーパーGT選手としても活躍する坂口。

 坂口の所属するホワイトレーシングも、これ以降、改進激を見せ、2000年、念願の総合優勝を果たした。

 

 冊子に書かれていた事は、こんなことだった。

(坂口さんのお父さんが、スーパーGTの選手?)

 まるで解らない。

 ときがわ町のコンビニでトイレ休憩。

 その時、携帯が鳴った。

 坂口さんかと思って、何も考えずに出てしまった。

「タクミ?」

「メグ?」

 それは、俺の彼女である海老名芽美からの電話だったのだ。

「今、軽井沢駅。これからバトル?」

「ちょっと待て。何のことだバトルって?」

「えっ。今日、碓氷峠でバトルじゃ―。」

 意味が解らない。確かに、最初は今日の予定だったが、昨日やってしまったため、これは無くなった。それ以前に、なんでこいつが知ってる?

「どこのどいつから聞いたか知らねえが、今日はバトルじゃない。昨日やった。また、どこから情報掴んだか知らんが、バトル相手が、メグが軽井沢に居るって聞いたらしく、急遽、昨日実施した。必死になって碓氷峠で攻防戦やって、イザ登りきってみたら、メグは居なくて、俺も相手もキレて帰った。そして、相手は今日、埼玉県の峠で大クラッシュを起こし、とても走れる状態じゃない。」

「そっそんな―。昨日、浩一君が嘘だったらしいよ明日やるみたいだよって言ってそれを信じて―。」

 そういえば坂口さんはこう言っていた。

(昨日、真穂さんは俺に負けた後、彼氏にも振られて、自暴自棄になっていた。彼女に余計なこと言って帰らせたのも、そいつ。)

「あっ!」

 やっとわかった。

 メグは、真穂さんの彼氏と面識があって、真穂さんと俺が碓氷峠でバトルしているのをそいつから聞いたのだ。そして、それを知った真穂さんは急遽、昨日、バトルを実行して俺とメグを会わせようとしたのだろう。

 だが、真穂さんの彼氏が余計な事をしたため、メグは帰ってしまった。

 それに怒った真穂さんが、彼氏と喧嘩別れした。

「あの、甲府まで会いに来てくれた?」

 と、メグが言う。

「何のことだ?」

「男と一緒に学校出た時、目の前で2回転半して行ったスポーツカーがいたの。もしかして、それってタクミだったの?」

 そう言われた瞬間、何故か分らないが頭に来た。

 男と一緒だと?

「違うね。」

 と、吐き捨てて電話を切ってしまった。

 その後、何度か電話がかかっては来たが、出る気にはなれず、ときがわ町から県道172号を突っ走っていった。

「出たらだめ 事故を呼でる着信音」と書かれた、ゴルフ場の看板が突き刺さる。

 どうせ他に好きな人が出来たから別れようと言うに決まってる。

 散々煽っておいて何様だ。

 そんなこと言われたら、またキレて白石峠に逆戻りして、シビックの二の舞を演じるのが関の山だ。

 俺は決めたのだ。このS660で道が続く限り何処までも走り抜けるんだって。


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