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純白のSと共に  作者: Kanra
6stage理想と現実
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シビックの死

この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。

自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。

 若宮八幡手前、車を止められるスペースがある。そこに、S660を停め、ダッシュでシビックの所へ駆け寄る。

 火は出ていないが、運転席側が木にぶつかった上、左リアが崖から落ちかけている。 

 ランエボの須川さんも駆け寄ってくる。

 運転席側からぶつかったら、ケガしているだろう。

「大丈夫か?」

 須川さんが運転席側ドアを開ける。

 車内はエアバックが開いてみるも無残な惨状だったが、ドライバーの意識はある。バケットシートでしかもレース用のシートベルトに守られたらしい。

(あれ?)

 俺はドライバーの姿を見て驚いた。

「真穂さん?」

「えっ?知り合いか?」

「はい。俺の職場の元同僚のお姉さんです。とにかく、救急車と警察。それから、レッカーを―。」

「おっそうだな。ただ、ここ携帯が圏外だ。」

「俺、下まで降りて警察と救急車とレッカー手配します。」

 大急ぎでS660に飛び乗って、定峰の集落を抜けて行く。

 集落を抜けて、再び県道に出て定峰峠の登り口に着くとそこにAE86トレノ。

(坂口さん?)

 車を止めて、携帯で電話しながら近寄るとやはり坂口さんだった。

「真穂さんが事故った!若宮八幡のヘアピン手前でオーバースピードだ!」

「やっぱり。」

 と、坂口さんは言った。

「嫌な予感はしたのよ。レッカー呼ぶから。それから、救急車と警察ね。」

 予想より早く、救援が来た。

 レッカーではなく、キャリアカーだ。

「どこだ?案内してくれ。」

 キャリアカーに乗っていたのは、坂口さんのお父さんだった。

 俺がS660で、キャリアカーを先導する。

 現場に着く。

 真穂さんは、須川さんが救護している。意識はあるがショックで立ち上がれず、横になっている。

 斜面を登ったシビックを、人力とランエボの牽引で道路へ押し戻して居ると、坂口さんのAE86が警察と救急車を引き連れて登ってきた。

 救急車で真穂さんが搬送され、警察の現場検証と事故証明が行われて居る間も、シビックの撤去作業が続く。

 ようやく道路上にシビックが戻った時には、もう日暮れだった。

「昨日のバトルの時、ホワイトインパルスのシビックEK9に乗っていたのはお姉ちゃん。お姉ちゃんはJAFの国内Aライセンスを持っていた。来週、シビックで、筑波サーキットで行われるスポーツレースに参戦予定だった。昨日、タクミに負けた後、彼氏にも振られて、自暴自棄になっていたのよ。タクミの彼女に余計なこと言って帰らせたのも、そいつよ。」

「つまり、ホワイトインパルスはお前達だったって事か。こんな形で、ホワイトインパルスの正体が分かってしまうとは。」

「言わなくたって、分かると思った。タクミならね。」

 坂口さんはキャリアカーに載せられたシビックを見て溜め息を吐いた。

「なんでお前は走る?なんでお前は走り屋になった?」

「分らない。私はただ、走っていたい。だからこそ、タクミがあのS660に乗っているって知った時、タクミの後を追いたいって思ったのかも。」

「お前もレーサーなのか?」

 これに、坂口さんは「うん」とだけ肯いた。

「お父さんも、レーサーよ。」

「えっ?」

 坂口さんのお父さんは、薄い冊子を俺に投げると、

「もう帰れ。まごまごしていると、君も事故るぞ。」

 と言った。


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