シビック
この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。
自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。
坂口真穂が、取り引き先への配達を終えて、そば屋に戻る。
「お姉ちゃんお帰り。」
と、知恵。
「ただいま。」
EK9シビックタイプRのキーを持つ真穂。
だが、昨日から様子が変だ。
「昨日のバトルで、負けたのがよっぽどショックだったのだろう。」と、父には言われているが、とてもそれが原因とは思えない。
愛衣は、急に暇となったため、愛車をサーキットで走らせている。
今日の彼女の車は、正真正銘、自分の車だ。
真穂が、知恵が行く取り引き先の配達を引き受けたのは、とりあえず走りたかったからだ。
だが、さっき、松郷峠でランエボに千切られ、更には今まで負けたこと無いBRZに抜かれてしまった。それにより、戦意喪失。
おとなしく帰ってきたのだ。
愛衣は、真穂に何があったのかを知っている。
だからこそ、サーキットへ行くとき、誘ってみたのだが乗り気になれず来なかった。
愛衣は自分の真っ白なオープンカーを走らせる。
自己記録をまた塗り替える。
だが、このサーキットで最も早いタイムには、まだ届かない。
このサーキットで最も早いタイムを出したのは、今、愛衣が乗っているフロントミットシップ車ではなく、正真正銘のミットシップ車であるNSXだ。
ここに今日は、S660の姿は無い。
S660は再び、夕方の定峰峠に姿を見せた。
そこに、シビックタイプRもいた。
EK9の後を走るS660。
一つ目のヘアピンに突っ込む。
秩父側の登り口。このヘアピンから一気に高度が上がる。
シビックとS660の後を追うのはランエボ。
「馬鹿にしやがってシビック!ランエボなんかメじゃねえってのか!」
シビックはS660が相手の時と、須川のランエボが相手の時とでは、まるで雰囲気が違う。
「バンバンバンバン!」と機関銃の銃撃音のようなアフターファイヤーを轟かせるミスファイアリングシステム。
明王院の入口を通過。右コーナー。
(ここでもS660に負ける。彼氏の件とドライビングテクニックは無関係。私は速く走れる。こんなところで負けたら、今週末のレースで負ける!)
シビックは必死に逃げる。
次の左コーナー。
S660が徐々に近付いてくる。
ランエボも近い。
ストレートに突入。
FFのシビックがアクセルを踏み込む。だが、立ち上がりではミッドシップで後輪駆動のS660が有利だ。
更に、4駆のランエボも一気に立ち上がる。
次の右コーナーに入る時には、S660がシビックの前にいた。
だが、ランエボは抜ききれなかった。
(仕掛けるなら、古嶺神社のダブルヘアピン。俺だって見せつけてやる。ミスファイアリングシステムと4駆のパワーってやつを。)
須川は熱くなっている。
だが、シビックは息切れをしている。にも関わらず、S660を追い続ける。
「負けたくない!絶対、絶対に!」
それは、危険信号だ。
若宮八幡が近付く。二つ目のヘアピンだ。
だが、その手前、緩い左コーナー。
S660が突き抜けるが、それよりも早いスピードでEK9が突っ込んでいく。
「バカ!オーバースピードだ!」
須川がブレーキを踏みランエボを急減速させる。
S660もバックミラーでそれを見た。
「シビック!」
「あっ!」
シビックは曲がりきれず、左コーナーの道路から外れ、斜面を登ってしまった。
そして、木に激突して半回転して停止した。




