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純白のSと共に  作者: Kanra
5stage碓氷峠攻防戦
46/435

緊急事態

この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。

自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。

 坂口愛衣が最後の1本とした横乗せアタックは、なぜか最後のコーナー手前で終わりにした。

「この先の景色、それは、明日のバトルの後にね。」

 そう言われ、引き返す。

 それを、EK9のドライバーは離れた場所で見ていた。

「愛衣。最後まで引っ張らせるとは。」

 AE86のエンジン音が遠ざかる。

「ゴメン。新幹線で来てもらって。」

「良いんだって真穂。久しぶりに会えたんだから。」

「うん。浩一。」

「そっちこそ、良かったのかい?そば屋とレース活動の合間に―。」

「近くにいるのに、会わない訳にはいかないよ。」

 普段は熊谷に住んでいる彼氏が、偶然にも軽井沢に来ていると聞いて、会うことにしてもらった。

「秩父鉄道で働くのも大変よね。」

「正直、好きじゃないし。」

(あのS660が聞いたらブチキレるね。その発言。)

「あっそうだ。待っている間、ネットで知り合った人と会っていた。」

 と言って、彼の友人を紹介される。

 3人の友人が一緒だったらしい。

 その中の一人、

「海老名芽美。普段は安曇野住み。」

 と言った、自分と同い年の25の女がEK9を見て

「彼氏が、スポーツカーに乗り換えたって言っていた。」

 と言う。

「へえ。どんな車?」

「えっと、それが名前も教えてくれないんだよ。ただ―。」

 海老名芽美は、彼女が通う甲府の専門学校を、偶然にもその日話していた男子生徒と一緒に出た瞬間、血相を変えたように目の前で2回転半のドリフトをして、昇仙峡ラインの方へ飛んでいった白いスポーツカーが気になると言う。

(まさか―。)

「その、彼氏の名前は?」

「タクミ。九重拓洋って言うんだけど―」

「ちょっちょっと失礼!」

 坂口真穂は顔色を変えて、少し離れた所から大慌てで、坂口愛衣へ連絡する。


「なんですって!?」

 横川でAE86の車内で、九重拓洋を待つ坂口愛衣は驚いた。

「うん。S660を一度殺した張本人が、軽井沢に―。」

「マジか。どうしよう。」

「えっと、とりあえずもう一発、上がってきてくれる?AE86とS660。またはどっちかで。」

「うっうん。ただ、乗るかどうか解らないよ彼が。」

「分かっている。でも、分かったの。S660が一度死んだ訳が。浮気じゃない!」

「じゃっじゃあ、S660は彼が勝手にキレて自爆したって事?」

「ピィーーッ!」と、電気機関車の汽笛が聞こえた。

「もしなんなら、これから急遽だけど、走る?上りを。」

「えっ?いきなり?」

「ちょっと彼女が何時まで居るか、聞いてみるから。」

 そう言われて、真穂が電話を切った。

(なんてこと。)


「ホントに?」

「うん。私、芽美の彼氏に会っている。それも、今、近くにいる。」

「どこに?」

 坂口真穂は、碓氷峠の方を指す。

「この峠の下。明日、私と妹と一緒に、ヤるの。でも、芽美がタクミの彼氏と知ったのならば―。」

「まさか、連れてくるってこと?」

 それに、肯いた。

「何時まで居られる?」

「えっと、後1時間程度。」

「分かった。なら、連れてくるわ。えっと、あの辺りで待ってて!」

 坂口真穂はEK9のエンジンをかけ、その場で半回転ドリフトを決めて、碓氷峠を下っていった。

「もう、俺と真穂はおしまいだ。」

 と、誰かが言った。


「はっ!?」

「やるわよ。もう1本。今度はAE86とS660で。」

 目の前を、EF63が通過する。

 その線路の横には、色褪せたEF63‐11号機と12号機。 

 錆だらけの189系。

 まもなく日が沈む。

「今日は終わりじゃないのか?」

「いいえ。後1本。」

 九重拓洋はまた、線路の方を見る。

 EF63‐24号機が再び、横川駅の方から登ってきた。

「ガスはまだ残っている。行けるでしょ?」

「まっまあ。でも―。」

「なら、行くわよ。」

 そう言った時、坂口真穂のEK9がやって来たが、その場で向きを変える。

 そして、何かを待っている。

 運転席から手を出し、「行くぞ」と言っている。

「ホワイトインパルス。明日じゃなく今からやると言うのか―。」

 九重拓洋はビビりながらS660に乗り込む。

 EF63が、前方に見える立体交差を通過していく。

(やるしかないか。後1本が一番事故る確率高いのに―。)

「分かった。やる。」


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