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純白のSと共に  作者: Kanra
5stage碓氷峠攻防戦
45/435

攻略の糸口

この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。

自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。

 坂口さんのハチロクが前に出る。

 霧が今や晴れている。

 碓氷峠の廃線跡が目に飛び込む度に、ペースが乱れてしまっていた。

 前にハチロクが居るおかげで、意識を前のハチロクに持っていける上、碓氷峠の廃線跡が視線に入りにくくなった。

 だが、熊ノ平から4つ目のヘアピンで、熊ノ平信号所へ向かう保線用トンネルが僅かに視線に入ると、途端に挙動が乱れた。

 路面の凹凸に足を取られ、跳ねたのだ。

(路面が酷い。バンピーで跳ねまくる。)

 必死になって、坂口さんのハチロクについて行く。

 ハチロクがペースを上げた。

「このペースだと、ついて行くので精一杯だ。」

 ギリギリついて行けるが、今度は息が苦しくなってきている。

 助手席側の窓と、運転席後の小窓を開けて空気を入れ替える。

 エンジン音がかなり大きく聞こえる。

 アクセルオフの度に、ブローオフバルブから圧縮空気が抜ける音が聞こえる。

 その音が、機関車のブレーキの音のようにも聞こえる。

 ジグザグに続く峠道。

何かに似てきている。

登りながらのV字からヘアピン。緩いコーナーから急なコーナー。

 雨はすっかりやみ、雲の切れ間から太陽光が射し込む。濡れた路面からの反射光が眩しい。それに、目をやられそうになる。

「うおっ!」

 濡れた路面に足を取られた。

 スピンして路肩に突っ込むギリギリのところで停止。

 車外に出て目視で点検。異状なし。

 坂口さんのハチロクが、降りて来るのを待つ。その時になって初めて気が付いた。そこから、廃線跡が見えていたことに。

(こんなところでやったって知ったら、まずい。)

 再びエンジンをかけ、坂口さんのハチロクを追うため、S660を発進させる。


 坂口愛衣はすぐ後ろでS660がスピンしたのをバックミラーで見たが、C121まで行かない事には安全にUターン出来ないため、C121コーナーまで登る。

「惜しい。後少しだったのに。」

 C121コーナーでUターンして、九重拓洋がスピンしたC105コーナーまで戻る。

 C121からC119までの間のV字を抜け、複合コーナーを抜けた時、前方から白い車。

(EK9?違う!タクミのS660だ!)

 C116。

 ここも信越本線の廃線跡にかなり接近している場所だが、ここで2台がすれ違う。

(登っている!S660が自分で―。)

 直ぐにそこでスピンターンして、S660の後を追う。

 直ぐに追い付いた。

 しかし、

(この先、C119でも廃線跡が見えてしまう。)

 その心配が的中した。

「なんとなくだが、この峠の走り方を、うっチクショーッ!」

 S660はスピン。オーバーステアだ。

 坂口愛衣はAE86を止める。九重拓洋のS660はどこにもぶつかってはいない。だが、九重拓洋の顔色が悪い。

「っ。これで何度目だ―。」

 振り返って初めて、九重拓洋は、そこから信越本線の廃線跡が見える事に気付いた。

「私とすれ違った場所。あそこからも廃線跡は見えた。それに、気付いていた?」

「いや知らん。」

「次行くよ。」

 有無も言わさない。

 そこを、EK9が通過。

「クソーっ。」

「悔しがっているなら、あのシビックに追い付くわよ!」

 坂口愛衣がAE86を発進させる。九重拓洋もS660を発進させる。

 C121コーナー。ここで、EK9に追い付いた。

 C121。あの漫画では逆から進入だったが、あの漫画に登場した場所を通過。

 C121から少し緩いコーナー。

 それらを抜けると、ストレートを経てC128。

 C128からC131まではアルファベットのSを描くようなルートで登っていく。

(バックミラー見るな!見たら死ぬ!)

 坂口愛衣が後のS660に向かって祈る。

 C128を通過。シビック。ハチロク。エスロクと続いて、C129へ続くストレートへ。

 キツいのぼりから、ヘアピンのC129。

(この感じ、ツインリンクもてぎのV字からヘアピンに似ている。いや、一回しか走っていないけど、感覚が似ている。ツインリンクもてぎは、テクニカルセクションで30m程登ってダウンヒルストレートだった。)

「そうか。この峠のコツが掴めた!」

 だが、その時、今度は身体がおかしい。

「うっ。」

 C133。ここでS660が路側帯に退避。

 AE86も止まる。

「一瞬、彼女の顔が見えた。そしたら―。」

「止まったと?」

 九重拓洋が肯く。

「だが、コツは掴んだ。この峠の攻略法は分かった。残るは、自分自身との戦いだ。」

 坂口愛衣は腕時計を見る。

「後1本。ハチロクで私の横に乗って、終わりにしよう。その先は、自分自身との戦いになるね。」


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