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純白のSと共に  作者: Kanra
5stage碓氷峠攻防戦
44/435

晴天荒天

この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。

自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。

 AE86は前述の通り、あの漫画の主人公の車だ。

 今や貴重な存在となっているが、坂口愛衣の乗るAE86スプリンタートレノは未だエンジンを全開近いパワーで吹かせる個体だ。

 ナンバーは熊谷551た6‐30。

 S660の九重拓洋は直ぐに語呂合わせで「ムーミン」になると思った。

 そして、ムーミンと聞くと、元鉄道マニアの九重拓洋はピンと来る物がある。

 EF55電気機関車。

 1936年に製造された流線形の直流電気機関車で、特急「つばめ」「富士」等を牽引したが流線形のスタイルが災いし、運用効率や保守に手間がかかることから僅か3両で製造が打ち切られ、1960年代に廃車。しかし、1号機は中央鉄道学園、高崎第二機関区にモスボールされた後、動態復元され、JR化後も高崎を中心にイベント列車で活躍。

 しかし、流線形のスタイル故に補助機関車や転車台が必要不可欠となった上、2007年に故障。なんとか復元工事が施されたものの、他の2両は解体されてしまったため、部品のストックも無く、今度壊れたら本当に動けなくなってしまうことから、2009年のさよなら運転で運用を離脱。その後も高崎車両センターにモスボールされていたが、2015年に鉄道博物館にて展示されることとなり、今日も、鉄道博物館でその姿を止めている。

(AE86もEF55と同じだ。確かに、未だ現役で走っている車両も多数存在しているが、販売台数も少なく、モータースポーツ等で酷使され、TOYOTAにはもう部品のストックも無い。いつか、EF55と同様、走れなくなって博物館等に展示保存されている個体のみが存在する形式となってしまうだろう。まっそれはこのS660も同じか。)

 と、九重拓洋は思う。

 そう思える余裕を、坂本宿から熊ノ平までの区間では持つ事が出来るようにはなった。

(一回、私が横に乗っただけで、タクミは変わっている。)

 熊ノ平に着くと、もう一度、坂本宿まで降りる。

「次は、熊ノ平より先へ行くよ。行ける所までね!」

「ついて行くぜ。ムーミン。」

「えっ?」

 坂口愛衣は何のことか解らず困惑する。

「ハチロクのナンバー。」

 九重拓洋がAE86を指差して言い「止まってんなら、先に登るぞ!」と言って、先行して登り初めてしまった。

(バカ。余裕ぶっこいている時が一番危ないっての知ってるでしょ。)

 S660の後を、AE86がついて行く。

 だが、めがね橋が近付く。

(なんでだよ!バカヤロウ!)

 今度はヘアピンの先の、上りのS字の1つ目でハンドルが切れず、リアがセンターラインから反対車線へはみ出す。

 必死に戻すと、前方からホワイトインパルスのEK9。

「うわっ!」

 回避したものの、2つ目のコーナーで止まってしまった。

(リアが出てアクセル抜いて、お釣り貰うって何してんのよ。まっ、私も最初は同じ―。)

 坂口愛衣はバックミラーを見て気が付いた。

 霧が晴れ、めがね橋が見えていたのだ。

 走りながら慌てて空を見る。

(雨が上がった。霧が薄くなっている。)

 いつの間にか、雨が上がり、天候が回復し始めているのだ。

 それによって視界が開け、霧で隠れていた見たくない物まで見えてしまっているのだ。

「まずい!」

 まもなく第5橋梁。

「ワアーーーーッ!」

 S660が突っ込みすぎて、アンダーステア。

(なんとか、熊ノ平まで登って。)

 後ろから坂口愛衣が祈る。

 第6橋梁が近付く。

(意識を道に集中させて。周りの、信越線の廃線跡に持ってかれるな!)

 第6橋梁通過。熊ノ平までは後少しだ。

 長いストレートから、Mを描くルートで熊ノ平。その先はヘアピンが断続的に続く。

 Mを描いて、熊ノ平駐車場を通過。

(よく止まらなかった。でも、この先は引っ張るよ。)

 パッシングする坂口愛衣のAE86。九重拓洋のS660が進路を譲る。

(ついてきて。最低でもC121コーナーまで来て。)


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