出発
この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。
自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。
勤務を終え、仮眠室で仮眠を取った後、集合会議に出席。
今日は珍しく、俺と安斉一歩、吉川准の3人が揃って出席だ。
集合会議を終えると、久しぶりに3人が揃ったとあり、一緒に朝飯を食うことになった。
今日から俺は明けと公休2日で実質3連休だ。
「この後、タクミは予定ある?」
会社近くのファミレスで朝飯を食べながら、安斉一歩が言う。
「久々に揃ったんだし、遊ぼうぜ!」
「いや、俺はこの後、坂口さんと約束があるんだ。」
これに、安斉一歩と吉川准が驚いた。
「噂は本当だったんだな!二人は付き合って―」
「殺すぞ准。」
「でも、約束って何だよ!?」
「言わない。」
俺は言い放って、坂口さんにLINEを入れておく。
(到着は午後になるだろう。)
(来いよ。本当にライセンス取り消すからね。)
半分以上、脅迫だ。
全く。女ってのはどいつもこいつも。前の彼女も、レースで負けたんだから付き合えと無理矢理迫って復縁。それ以前に出会った時も、カメラぶつけたんだから付き合えと告白。俺のどこに惚れたのか知らねえが。
「俺は知っているね。こいつは、越えられない峠を越えようとしているんだよ。多分、坂口さんとセックスするんじゃ―。」
「馬鹿野郎。メシが不味くなるわ。」
さっさと朝飯を食べ、代金をテーブルに置いて先に席を立つ。
「なあ。お前、もう少し、周り見ろよ。マジで今日、坂口さんとセックスするのか知らないけど、自分一人で越えようとしても、力足りなけりゃ越えられない峠のままだ。いざとなったら俺達だって協力するから。」
「そいつはどうも。」
(どうせ、エロ話求めているクセに。)
S660のエンジンをかける。
一旦自宅に戻って、制服を着替えてシャワーを浴びたら直ぐに碓氷峠へ出発だ。
AE86とEK9が先行して碓氷峠に入る。
「さっさと宿取ってやったわ。高崎のだけど。」
「お姉ちゃんは別のホテルだけど―。」
「バレないようにしないと。」
普段はS2000に乗っているAE86のドライバーだが、それがかえって目立つ。
「手はずは、まず今日、私がS660を引っ張る。それで、明日、お姉ちゃんと私でプッシュプル。」
「碓氷峠の汽笛作戦。」
「ええ。」
松井田妙義インターで高速を降りたAE86とEK9は燃料をチェックした後、ウォーミングアップとして、旧道を走る。
碓氷峠は携帯の電波が通じない。
そのため、連絡は横川か軽井沢まで出てから行う。
登りの1本目が終わると、碓氷峠に雨が降ってきた。
「S660より、自宅出発との連絡あり!」
「了解。では約2時間後ね。それまでゆっくりウォーミングアップして行こう。」
関越自動車道を群馬方面へ。
群馬県は好きだ。
あの漫画の舞台となった伊香保温泉。そして、群馬が舞台のご当地漫画の影響もあって、群馬県によく行っていたが、最近はサーキット走行ばかりであまり行かなくなってしまっていた。
だから今日は久しぶりの群馬県だが、気が進まない。
群馬県で好きなコースは、伊香保温泉から渋川に出て国道353号線で赤城山の南麓を走って、わたらせ渓谷鉄道の水沼駅にある温泉に入って帰る。または、渋川から草津温泉に行くコースだが、今日行くハメになったのは、行きたくない碓氷峠だ。
晴れ渡った空だが、山の天候は変わりやすい。
赤城山は見えるし榛名山も見えるが、これから向かう妙義山の方に雲がかかっており、妙義山や浅間山が見えない。
藤岡ジャンクションから上信越自動車道に入る。
上信越自動車道は、群馬県から長野県を通って新潟県まで通ずる高速道路。
だが、その方向には相変わらず雲がかかり、徐々に厚くなって行く。
(待ち合わせは、池谷と真子が出会った看板の下。)
と、坂口さんから連絡が入る。
「おぎのやのどでかい看板のところか。」
と、つぶやきながら、上信越自動車道を走っていると、とうとう雨が降ってきた。
松井田妙義インターで高速を降り、天候を確認すると、長野県側から雨雲が流れてきており、碓氷峠ではこれから夜まで断続的に雨が降るらしい。
待ち合わせ場所である、おぎのやの看板が見えてきた。
そこに、見覚えのある車が止まっているのが見えた。
それは間違いない。
ホワイトインパルスのEK9シビックタイプRだった。




