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純白のSと共に  作者: Kanra
36stage群馬湯けむり公道レース
404/435

合わせ湯

この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。

公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。

作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。

自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。


また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。

実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。


 グリッドが決まるのは、全車両がゴールしてからだ。

 グリッドが決定し次第、サイト情報やメールで各チーム及びドライバーに通達される。

 九重拓洋が単独でゴールした。

 リザルトはすぐに発表され、ラップ表が拓洋に渡される。

 それを受け取ると、ヘルメットを脱ぎ、車両の整備点検に入る。

「セッティングに変更は必要無しです。このまま、決勝も走ります。」

 と、拓洋は早見に告げる。

「予想以上に、坂野に食いつけていたな。」

 と、坂口正孝が言う。

「ただ、やっぱり、もう少しだけ馬力が欲しくなりました。まあ、馬力あげても、追い付けないことは分かってます。」

「現在、愛衣に次いで2番手だぞ拓洋は。」

 そう言われたものの、そう言われると、拓洋は悔しくなる。

(けっ!どこ走っても、何をやっても、愛衣に勝てねえ。明日辺りにでも、勝ちてえんだが。)

 と、愛衣に視線を飛ばす。

「やっぱり、愛衣に勝ちたいのか?」

 正孝が聞く。

「ええ。あいつには、勝ちたいです。」

 と、拓洋は言う。

 レーシングスーツから私服に着替えると、暫定のグリッドが決まったらしい。

 愛衣はポールシッターだが、拓洋は4番グリッドまで落ちた。

 だが、愛衣と2番グリッドのアストンマーチンDB9の差5秒以上開いている一方で、2~10番グリッドはかなりの僅差だった。

「後は、明日を迎えるだけだ。」

 と、早見。

 先日の三峰山での決闘以降、早見はS660の面倒をメインに見ている。

「あの、俺も何か手伝います。」

 そう、九重拓洋が言い、車に触れようとしたら、

「触るな!この車はお前の車であるが、整備中は俺の車でもあるんだ!」

 と、怒鳴られた。

「お前は身体を休めてこい!」

「しかし―。」

「車も羽を伸ばしているんだ。ドライバーのお前も、羽を伸ばせ!」

 早見はそう言い、坂口正孝も、

「そういう事だ。これは命令だ。」

 と言った。

(命令って言われても、車の事、言わなくてもいいのかな。)

 と、九重拓洋は思った。

 九重拓洋は渋々と、光泉寺の石段を降りて、湯畑に向かう。

「車の事とか伝えたって公道レースでは無駄だよ。」

 と、大山神威。

「プラクティスやその前の、数日間の公式テスト期間だったら調整した後にバトルモードで走ることは出来ずとも、慣らしで走らせられる事もあるが、公道を使用している以上、例え調整しても、公式時間以外にバトルモードで走らせる時間は無い。スーパーGTやスーパーフォーミュラだって同じだ。ドライバーは、羽を伸ばす事も仕事だ。タクシードライバーだって、それは同じだろう?」

「大山さんにそれを言われては仕方ないですね。」

「ほう。愛衣じゃねえのか?」

「いつの日か、愛衣に勝って、愛衣にギャフンと言わせてやりますよ。明日かもしれませんし、明後日かもしれませんし。」

 石段を降りきる。

「おい?白旗じゃねえのか?」

 と、大山神威。

「今日は合わせ湯に入るので、大滝の湯まで歩きます。」

「合わせ湯?」

「来れば解りますよ。」

 とことこと、温泉街の細道を歩き、温泉街の外れの方の日帰り入浴施設「大滝の湯」に着いた。

 入浴料を払って、男湯に入る。

 しかし、暖簾の出ている正式な入り口には向かわない拓洋に、大山神威は「どこへ行く」と聞く。

「裏口に。」

 九重拓洋の言う「裏口」の扉を開けると、狭めの脱衣所。

 棚を見ると、先客の衣服が置いてあった。

 拓洋と大山神威も、脱衣所から風呂場に入る。

 半地下に5つの浴槽。

 風呂場の床を始め、あちこちは木造。または木目帳。

「へえ。雰囲気あるじゃねえか。」

 と、大山神威は、目の前にある大きめの浴槽に入ろうとしたが、

「大山さん。違います。」

 と、九重拓洋はかけ湯をしながら言う。

「違う?」

「合わせ湯というのは、温度の異なる温泉を順番に廻っていく入浴方法です。温い39℃の温泉から、42℃、44℃、46℃、そして、最後に48℃の温泉に入ります。あまりにも熱い場合は途中でギブでもOKです。」

「身体を温い方から熱い方へ馴らしながら入るのか。なるほどね。」

 二人ならんで、39℃、42℃と廻っていくが、44℃で大山神威は厳しい顔をし、46℃でギブアップ。

 一方で、九重拓洋と来れば、48℃でも顔色一つ変えない。

「お前、随分とタフだな。」

「慣れてるだけです。」

 と、九重拓洋は言った。

 だが、本当は、走った後の興奮する気持ちを抑えるのに必死だった。


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