坂野キレた
この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。
公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。
作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。
自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。
また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。
実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。
「ふざけんなあの野郎!」
一度、茂原ツインサーキットで突き返した九重拓洋に抜き返されるた坂野大樹は、怒りに火が付いた。
(成り上がり者にしたって、何の訓練もしていないお前が、俺達の立場を脅かす事に、腹が立つ!)
と、坂野がGTRを操る。
嬬恋パノラマラインとの立体交差の左ヘアピンコーナーに突入。
九重拓洋はさっきまで前にいた塚町南和子のドリフトをコピーした走りを見せる。
(一番コピーしたい相手は、愛衣。一番近くにいるのに、コピー出来ない。ワンハンドステアは、コピーしようにも、恐怖が先にくる。)
と、拓洋はワンハンドステアを抵抗に思う。
次の右もドリフトで抜ける。
集団からは、拓洋と坂野が僅かに抜け出ている格好になっている。
右コーナーの先はストレートだ。
ここで、坂野が前に出る。
そして、拓洋は坂野の背後に回る。
「坂野!前に出たら死んでも構わん!逃げろ!」
星賀監督が無線で指示する。
「何もしねえでも、振りきれんだろこいつ!」
「違う!さっきのコーナーのドリフトは、お前の集団にいる塚町や織田の摸倣のような走りだった。九重拓洋がなぜ速いのか分かった。他人のテクをコピーして自分の物にしてしまう能力が飛び抜けて高い。他人のテクをコピーして自分の走りに取り入れて速くなる、言うならば、コピーロボットのような奴だ!早く逃げないと、お前のテクもコピーされるぞ!」
ストレートエンドのS字。
ブレーキングする坂野だが、拓洋はノーブレーキで、ドリフトで抜けるのだから、差が縮まってしまう。
「コピーするって言ったって、九重拓洋のS660で、GTRの走りは不可能だ!論理的におかしい!」
「ホワイトレーシングプロジェクトには、NSXも居る。もし、お前のテクニックをコピーした上で、九重拓洋がNSXに乗った場合、どうなる?」
「―。」
坂野は逃げ始めた。
(S耐で九重拓洋はNSXに乗っていた。しかも、元GTマシン。確かにヤバイかもしれないな。)
冷静さを取り戻した坂野は、一気に拓洋のS660を引き離しにかかる。
(無理だな。まっ、自分のペースは乱さんぞ俺は。)
開き直った拓洋。
少しの間バトルは止めて、自分のペースを乱さず走る。
(早く来てください。織田さんと塚町さん。)
バックミラーに写る、2台のスープラに視線を飛ばした。
自分のペースは乱さず走るが、やはりスープラが追い付いてきた。
追い付いて来ると、拓洋は出来うる限り抵抗するが、呆気なく、織田に抜かれてしまう。
そして、万座温泉までどうにか抵抗したが、とうとう塚町にも抜かれた。
(ここまでか!ちっ!)
と、拓洋は舌打ちしたが、最後まで拓洋は諦めなかった。
拓洋よりも前に、万座温泉を通過した愛衣含む集団は、変わらず団子状態だった。
隊列は先頭から、レイブリック、MUGEN、ARTA、大山神威、そして、最後部に愛衣のS2000GT1だった。
愛衣は集団の中で唯一のクラスBだったが、ここまでずっと、大山神威を捉えたままだ。
しかし、前に出ることが出来ず、歯痒い状態だった。
つづら折りの連続ヘアピンに差し掛かる。
グリップで抜けていく、クラスAの車両に対し、愛衣はお得意のワンハンドステアで、ドリフトとグリップの中間の走りで抜けていく。
そうしなければ、追従が難しくなってきた。
(すげぇ横G。でも、ここまでGTマシンにも食らい付けている。今までのS2000とはケタが違う。)
と、歯を食い縛りながら、愛衣は思う。
頂上の三叉路。
ここから、草津温泉までダウンヒル。
「行くぞ。」
と言ったのは、大山神威。
大山神威のNSXがダウンヒルの一発目の右コーナー立ち上がりで、ARTAをオーバーテイク。
(しまった!)
愛衣、出遅れた。
次のヘアピンで、仕掛ける。
しかし、オーバーステア傾向を強めにしたのが裏目に出た。
360度スピンして失速した。
その間に、集団と離れてしまった。
「やっちまった。」
直ぐに速度を回復させる。
だが、追い着いたときには、ゴール地点だった。




