予選の朝
この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。
公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。
作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。
自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。
また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。
実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。
予選もまた快晴。
拓洋は朝風呂に行く時、それを感じた。
(今日は、いや、今日も明日の決勝も晴れる。)
朝の光泉寺の石段を湯畑に向かって降りる。
「あれっ?」
と言ったのは、松風が石段のたもとで待っていたからだ。
「朝風呂っしょ?」
松風が言う。
「ああ。今日は、千代の湯に―。」
「時間湯はやってないよ。」
「分かっているんだが、なんとなく、な。」
湯畑の脇を歩く。
「三条先生は?」
「ホテルの風呂で朝風呂入るって。私は、行ってきなさいって言われて―。」
湯畑を流れ落ちる温泉の水音を聴きながら歩き、千代の湯に入る。
湯上りには、三条神菜が「持っていけ」と言ったらしい、コーヒー牛乳を湯畑横の足湯に入りながら飲む。
「九重。ちゃんと、止まれる車にした?」
と、松風が聞く。
「ああ。ブレーキは航空機にも使用されるパーツも組み込んだし、ブレーキパッドも強力なやつを入れた。それに、万が一ひっくり返っても、命だけは助かるようにもした。」
腕時計に目をやると、拓洋は宿に戻る時間だった。
「じゃあ、俺は車の方へ行く。」
「寺の石段まで、一緒に行かせて。」
そう言われたので、一緒に歩く。
光泉寺の石段のたもとで、愛衣が待っていた。
「見送りはここまでにしてくれ。」
と、愛衣と合流して、拓洋は言う。
「分かった。頑張ってこいよ。」
松風から、愛衣に視線を持って行く最中、拓洋の目付きが、攻撃的になったのを、愛衣は見た。
そして、松風もそれに気付いた。
(中学の鉄マニ時代から変わってない。自分の求めるもの、自分の熱中するものになると、普段の頼りなさ気ながらも優しい目から、ナイフのように鋭く攻撃的な目になる。お供の女の子にいつも従って生きるのも、変わってない。お供の女の子を影から支えている。だから、お供の前に出られない。出ようとしても、出た後の事が解らず、結局、お供の女の子の影に入ってしまう。)
と、松風は石段を登っていく拓洋を見送りながら思った。
予選は1周。
1グループ3~5台程度の集団でスタートしてアタックをかける。
愛衣のS2000の次のグループで、拓洋のS660がスタートだ。
愛衣のグループには、大山神威のNSXもいる。その他、ARTA、レイブリック、MUGENと、愛衣以外の全車がNSXだ。
一方、拓洋の方は、カルソニックGTR、あさぎりレーサーLC500、織田学A80スープラ、塚町南和子A80スープラ。
(まぁたスープラ艦隊かよ。あさぎりのレクサスは俺と同じBクラスで、それ以外はAクラスっと。)
前に居るカルソニックGTRに視線をぶつける。
(坂野さん。出来うる限り食らい付きますよ。覚悟しといてください。予選でも、決勝でも。まあ、そのためには、レクサスもぶっ潰さねえとだけどね。)
九重拓洋がカルソニックGTRのテールを見ていた時、愛衣含むグループがスタートした。
ほどなくして、拓洋のグループもスタート用意。
カウントダウンが始まった。
「3・2・1・GO!」
日章旗が振られた。
しかし、坂野が目の前でクラッチを滑らせて出遅れた。
GTドライバーの多くは、ローリングスタートに慣れており、グリッドスタートではクラッチを滑らせ気味になってしまう事が多い。
失速した隙に、織田、塚町がサイドからオーバーテイク。
拓洋も、塚町の後追いでオーバーテイクを仕掛ける。
あさぎりのレクサスは?
レクサスは、エンストして出遅れだ。
この結果、序盤は、A80スープラが2台、S660、そして、カルソニックGTRの4台での争いとなった。




