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純白のSと共に  作者: Kanra
36stage群馬湯けむり公道レース
392/435

草津よいとこ薬の温泉

この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。

公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。

作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。

自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。


また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。

実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。


 拓洋と愛衣。そして、新たに大山神威を迎えた3人体制で出撃するのは、群馬県でも、全国的に見ても知名度の高い温泉地で行われる公道レース。

「群馬湯けむり公道レース」である。

 草津白根山を時計回りに3周するレースだ。

 スタート地点・ゴール地点は草津温泉の外れにある天狗山スキー場。

 また、今回のレースより、一般部門が「公道レースRights」と改められ、別日に規模を縮小して行われる。

 この、「公道レースRights」には、公道レース初出場となる、真穂と知恵が出撃する。

 真穂はCR‐Z。知恵はインテグラtypeR DC5である。

 一方、拓洋はS660。愛衣はS2000。そして、大山神威はNSX NC1だ。

 一応は汚名返上をした愛衣ではあるが、この公道レースでも大暴れして、更に名誉回復を企んでいた。

 今回のレースは、プラクティス、予選はそれぞれ1日だけだ。

 限られた時間で、コースを頭に叩き込み、予選に備える。

 愛衣は、それに没頭するため、プラクティス前から現地入りして、コースの下見をしている。

 他のドライバーもまた、事前配布されたDVD等でコースを覚えたり、実際に現地入りしてコースをみたりしている。

 だが、九重拓洋はDVDこそ見ているのだが、見ているのは一部だけ。

 九重拓洋は痔の湯治のため、草津温泉に何度も足を運んでいて、草津温泉付近の土地勘があるため、草津温泉の道に精通していると言っても過言ではないのだ。

 プラクティス3日前から現地入りしていた愛衣に対し、拓洋が現地入りしたのは前日だった。

 自走で、圏央道から関越自動車道に入り、群馬県を目指す。

(どうせなら、榛名山で公道レースやらねえかな。)

 と、九重拓洋は思う。

 九重拓洋が草津温泉に行く時、渋川伊香保インターで高速を降りる。

 理由は簡単。

 草津温泉の辺りまで、高速道路が無いからだ。

(軽井沢まで新幹線で行って、バスでなんて旅番組で紹介された事もあるが、上野から特急「草津」が一日2~3本だったか出ているんだ。わざわざ軽井沢に行かずとも、特急「草津」で長野原草津口まで行って、そこからバスに乗ればいい。或いは、高速バスでそのまま行っちまえばいいんだ。)

 と、拓洋は思う。

 噂の草津温泉行き高速バスを見つけた。

 上州ゆめぐり号。

 これは、東京を出て、伊香保温泉を経由して草津へ行くバスである。

 上州ゆめぐり号は、上里SAで休憩停車する。

 拓洋も上里SAに入るが、こちらは給油のみで、給油を終えるとすぐに出発してしまう。

 上里を出発すると、すぐに神流川を渡って群馬県に入った。

(何かに付けて、群馬に行くこと多いような?気がするだけか。)

 群馬県庁を横目に走る。

 赤城山が徐々に近く見えるが、向かうのは榛名山の裏側だ。

 渋川伊香保インターで高速を降りると、下道を走る。

 一般的なルートとしては、吾妻線に沿って行くルートなのだが、拓洋は、上州ゆめぐり号と同様、伊香保温泉を経由して行く。吾妻線沿いのルートは面白くないと感じるからだ。

 伊香保温泉の石段街の前を通過し、ヤセオネ峠を登る。

 観光客のファミリーカーを登坂車線等で追い越しながら、グリップをメインに登る。

(こう、観光客が多い時間は派手に攻められ無いからな。せいぜいVSA切って、滑らせて遊ぶ程度。)

 と、拓洋は思いながら、5連ヘアピンを抜ける。

 溝走りが可能なところでは溝走りをし、ヘアピンではVSAを切っている事をいいことに滑らせて遊んで、高根展望台を通過しあっという間にヤネオネ峠を登りきった時、愛衣からの連絡が入ったので、料金所跡に止まる。

「今どこ?」

「秋名。」

「遅い。早くこいよ。私、待ってんだからね。」

「長野原草津口駅通過時に折り返して連絡する。」

「もう私、ドライブしているからね。」

「ほーい。」

 電話を切ると、裏榛名の方へ向かう。

(ドライブって、どうせ一日がかりだろうな。途中で燃料入れてこ。)

 と、拓洋は思った。


 ガソリンスタンドで再度燃料を満載にした拓洋は、道の駅草津運動茶屋公園で、愛衣を待つ。

「硫黄の臭いがする。あーあっ。温泉入りてえなぁ。」

 派手に溜め息混じりに言ったのだが、それを、土谷啓一に聞かれてしまった。

「ほう。お前、温泉好きなんか?」

 土谷啓一はARTAのコーチとして、公道レースに参加しているので、ドライバーではない。

 現地入りするスタッフを待っていたのに偶然出会した。

「ええ。後、自分、痔持ちで、医者には完治は無理って言われて、ダメ元で湯治に草津によく来ていましたので―。」

「そうか。俺の実家は、別所温泉の温泉旅館だ。土谷旅館って旅館でね。気が向いたらでいいから、泊まりに来いよ。ちなみに、別所温泉に来たことは?」

「1度、日帰り旅で。薬師の湯に入っただけで、トンボ返りしましたが。」

 そんなことを話していたら、愛衣のS2000GT1がやって来た。

「お前ら、仲直りしたんだな。」

「ええ。三峰山で殴り合いの喧嘩の末、両方ともダウンです。」

「妙な二人だよなぁ。恋人同士でやることはあまりやらないが、殴り合いはよくやる。しかも、車ぶつけ合ってんだ。」

「最愛にして、最強のライバル。自分はあいつのことを、そう思ってます。」

 拓洋は愛衣のS2000に向かう。

「まったく。せっかく温泉でのレースなんだから、少し前入りして、温泉旅行気分を楽しめよ。」

「まさかお前―。」

「そういうことよ!バカ!」

 顔が真っ赤になった愛衣は、そっぽを向いた。

「悪かった。んじゃ今夜、俺オススメの公衆浴場紹介してやるから、それで勘弁してくれ。」

「後、メシ!今日の昼メシと夕メシ奢れ!2人分!」

「分かったよ。」

「ほら、S6に乗って、着いてきなさい。無線は!?」

「あるよ。」

「―。チャンネルを3に設定して。私と拓洋だけの、プライベートチャンネルよ。」

 拓洋は言われた通りに無線を操作する。

 そして、S660に乗車。

 愛衣もS2000GT1に乗る。

「準備良い?」

「OK。ああそうだ。土谷さんから伝言だ。」

「何?」

「気が向いたらで良いから、別所温泉の土谷旅館にみんなで来てってさ。」

「ああ。土谷さんの実家か。会社の、オリオン交通のバカ連中も誘ったら?」

 S2000GT1に続いて、拓洋も出発。

 国道292号を長野原草津口方面へ南下していく。

「いや、あいつら誘ったら、夜中までどんちゃん騒ぎしてうるせえったらありゃしねえよ。」

「それが、旅行の楽しさってもんじゃね?」

「温泉は静かに、ゆっくりしたいもんなんでね。」

「何?じゃ、今夜、私と別部屋にしようか?」

「えっいや、えっと、その―。」

 拓洋と愛衣の痴話話が出来るのは、拓洋がコースを知っているからだ。

「お前と、一緒に、温泉街を回れたら良いなっては思うよ。それは、草津でも、別所でも。」

「ふーん。」

 愛衣は嫌らしそうに鼻で笑った。

(ゲームの世界から引っ張り出したS2000GT1を転がして温泉旅行するアホは、俺と愛衣くらいなものだろうな。)

 と、拓洋は思ったのだが、それは口にしなかった。


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