大血川
この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。
公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。
作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。
自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。
また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。
実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。
釣堀跡が見えた。
ここは、釣堀があったのだが、今は閉業してしまった。
が、駐車スペースがそのままになっている。
(橋の先のシケインに膨らみがある。そこに押し込んで、抜く。)
釣堀手前の左コーナーでドリフトを決めるS2000。だが、拓洋はグリップ。
橋の手前の駐車スペース。
ここも使用して、拓洋は、自分の姿を、愛衣のミラーに写してプレッシャーをかける。
(効き目は無いとは思うが―。)
と、拓洋は思う。
橋が見えた。
S2000の後に、S660を隠す。
車1台が渡れる橋を一気に渡り、目の前にシケイン。
左コーナーのアウト側に膨らみがある。
「ガッ!」
バンパープッシュだ。
「ちっ!」
坂口愛衣は、派手な舌打ちをする。
なぜなら、S2000に限らず、後輪駆動はターンイン時の安定期に入る直前にバンパープッシュを喰らうと、オーバーステアになり、一気にバランスを崩す。後輪駆動にとって、これは喰らうとキツイ物だ。
拓洋はそれを確信犯で実行したのだ。
「ドカッ」と、クラッチを踏み込む愛衣は、スピンしかかるのをリカバリーしたが、その間に、S660が前に出た。
「あのさぁ。」
愛衣が怒った。
「後輪駆動にとって、今のはキツイって知ってるハズよねえ。」
「知らねぇよバァーカ!」
「ああっ!?」
一気にS2000が、S660に迫ってくる。
「さっきの礼だ!」
直線でリアにぶつけられる。
挙動を乱す。
しかし、これは単にど突いただけ。見方を変えれば、ただの追突事故、或いは煽り運転である。しかも、追突したS2000は、衝撃を和らげるため、減速しながら追突。
損傷は無かったが、単にS2000は失速した。
沢を渡る小橋を飛び越えるように渡ると、左コーナー。
拓洋はグリップ。愛衣はドリフトで拓洋に迫る。
2つのスキール音が峠に轟く。
(これこれ。この感覚。2台で派手に走る。私にとって、これ程まで最高なデートは無い!死ぬほど気持ちいぜぇ堪んねえ!)
愛衣はニヤリと笑いながら、S660に視線を飛ばす。
左コーナーを抜けると、道幅が広がり、すれ違い可能な状態に。
こうなると、2台並んでサイドバイサイドになる場面が増えるが、先行する拓洋は、小さなコーナーの度にラインを変えて、S2000を前に出さないようブロックするから、接戦が続く。
「私、楽しいよ!こうして、拓洋と走っているときがね!」
「―。」
「聞こえてる?」
「俺に、恋愛感情というものを期待するのは間違いだね。」
「えっ―。」
「お前は、ライバルだ。最愛のな。」
右コーナーでも、センター付近を走るS660。
「でもね、鼻面をちょっと入れてしまえば―。」
油断した。
S2000が、S660のイン側に鼻面を入れていた。
「この状態で立ち上がったら、どうなる?」
当然の結果。
S2000が一気に加速し、S660をオーバーテイク。
「付いてきなさい!」
「上等だ馬鹿野郎。」
「バカバカ言うな!」
「うるせえ。」
S2000はドリフト主体。
「言っとくけど、私は若干オーバーステア傾向の方が好みってことだからね。アレやって万一があったら、拓洋も道連れにして、一緒にあの世へGoToトラベルするからね。」
「殺すな!」
そして、拓洋と愛衣の目に、国道140号の街灯が見え始めた。
「ねえ。今夜、付き合う?一晩中。」
「あっけなく終わられては嫌なんだよ。最終コーナーでの結果次第でな!」




