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純白のSと共に  作者: Kanra
4stage越えられない峠
34/435

定峰の茶屋

この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。

自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。

 定峰峠を登りきった場所には峠の茶屋がある。

 ここは、自転車乗りやバイク乗りはもちろん、走り屋にとってもオアシスのようなところだ。あのマンガでも、主人公になりきるデブとブタが主人公をバカにした場所として登場した。

 青いBRZの朝倉はS660のエンジン音が聞こえたので、その方を見る。

 S660が峠を登って来て、茶屋の前で止まった。

 白だが、ドアの下に青いライン。更にはリアウィングまで付いている。

 だが、降りてきたのは九重だった。

「最近見なかったのは、S660の改良のためだったのか?」

「ええ。まあ元はといえば、クラッシュしたんですけど。」

 九重は頭を掻く。飯田のスイフトスポーツが登ってきた。

「クラッシュした?」

「ええ。昇仙峡ラインで。彼女の浮気現場目撃して、キレて、煽られてタイヤバースト。足回りオシャカ。」

「バーカ。生きてただけありがてえと思え。この前、金髪チリチリラーメン頭のガキが安曇野サーキットで死んだだろ?」

「ああ。そいつです。そいつに煽られて―。」

 と、九重は苦笑いを浮かべながら言った。

「九重君の走りは、ホワイトインパルスに似てきている。後ろからナイフのように鋭い視線を感じた。」

 と、飯田が言う。

「ホワイトインパルスはどんな感じで?」

「EK9は彗星。DC5は月明かり。そしてS2000は雷だね。」

「九重君、この前EK9とDC5に挟み撃ちにされていた上、EK9にぶつけようとしてスピンしてたって聞いたぞ。」

「ええ。」

「ホワイトインパルスを知らないで遭遇した奴等、みんなそうなって、崖から落ちて死ぬ。奴等、ギリギリを平気な顔して攻める。それに引っ張られて、ドカーンだ。」

 九重はよく死ななかったと思った。

「それにしても、あの宮古だっけ?あのチリチリラーメン頭のバカがなんでチヤホヤされてたのかが解らん。車の運転したこと無いのに、車のアニメの声優やって、見栄っ張りにGTR買って、死んでんだ。しかも、そんとき走っていた奴なんだか、どうもホワイトインパルスらしい。」

 朝倉がニュース番組をスクショした写真を見せる。

 それは、S2000AP1とDC5インテグラタイプRだった。

 そして、ナンバーは熊谷ナンバーだった。

 S2000AP1のナンバーは熊谷58て51‐498。

 DC5インテグラタイプRは熊谷57す58‐363。

「これで、ホワイトインパルスのナンバーが分かれば良いんだけど―。」

 バーン!

 と、銃声のようなアフターファイヤーの音。

 ミスファイアリングシステムを搭載したランエボが必死になって秩父側から上がってくる。その後には、噂のS2000AP1。

 ランエボは追われているのだ。

「バカ!道を譲れ!」

 ギャッギャーッ!と、なんとかここまで登ってきたランエボは、最後のコーナーで力尽き、盛大にスピンして路肩に突っ込んで停止。

 S660がエンジンスタート。

「バカ!止めろ!」

「勝負じゃない。ナンバー見てやる!」

 朝倉達が止める中、白石峠への林道へ入るS2000AP1を追って、九重のS660βが発進した。

(白石峠の降り口までの林道区間。バトルではなく、ナンバーを見るための追走だ。)

(追ってきたわね。S660。良いよ。おいで。私を楽しませて。ランエボもいい勝負だったけど、私の相手はあんたよ。)

 ナイフと雷鳴がぶつかりあう。

「くっ。こんなハードなコントロールを求められる中、ナンバーを見るなんて、無理か!」

 九重は歯を食い縛る。

 太陽が沈んだらしい。周囲が暗くなり、東の空に登ってきた月が明るくなる。

 街灯も暗い峠道。一歩間違えればあの世行きだ。

(突っ込みすぎたら死ぬ。)

(殺さない。私の楽しみ、殺さない。)

(道が悪い。こんな悪路を、なんでこんな速さで―。)

(ここまでついてこなければ、私の相手じゃない。)

 道が広がる。

 S2000AP1が右コーナーで外へ。

(オーバースピードだ。ミスったな。)

 インをつくS660。

 かなり接近した近接戦になった。だが、ナンバーが見えない。

 次はほぼ直線。

 立ち上がりでは、S2000が上だ。

(コーナー抜けたら、一気にアクセル開けて前に出て、進路を塞ぐような形をとって―。)

 だが、

「あっ!」

 ブレーキを踏んでS2000を前に。

 対向車だ。

(くっそ!後少しで前に出られたってのに!)

(私の前には行かせない。)

 次は左コーナー。

 S2000AP1はインを全く開けない。だが、かなり近付いた。

(見える。ナンバーが。なっ!)

 九重はブレーキを踏み過ぎてスピンしてしまった。

 だが、驚きのほうが強かった。

(嘘だろ。宮古を殺したのは―。)

 S2000AP1のナンバーを何度も思い出すが、それは間違いない。

 追ってきた朝倉達のBRZが止まる。

「大丈夫か!だから止めろって―。」

「奴だ。奴が宮古を―。」

「なっまさかナンバーを見るために?」

「ええ。それで、見たんです。信じられねえ。奴のナンバーは熊谷58て51‐498です!その、スクショに写っている車と同じです!」


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