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純白のSと共に  作者: Kanra
2 stage 白い衝撃君臨
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漫画の道

この物語はフィクションであり、実在の地名や団体とは一切関係ありません。

自動車を運転する際は、実際の道路交通法を守り、安全運転を心がけてください。

 それは、吉川准と安斉一歩を連れて、伊香保温泉に行った時のことだった。

 車が好きで、伊香保温泉と聞いてピンと来た人は、おそらくあの漫画の読者であろう。 

 伊香保温泉は群馬県の温泉。上毛かるたでは「伊香保温泉日本の名湯」と詠まれているが、ここは有名な漫画の舞台でもある。

 今、群馬の漫画と言えば、全国的に有名になったご当地漫画が思い浮かぶと思うが、それよりも更に前に、大ヒットした漫画に登場した峠の道があるのだ。

 伊香保温泉にもよく俺は走りに来てはいるが、偶にはと思って、冬の伊香保温泉に吉川准と安斉一歩を連れて一泊二日で訪れたのだ。

 しかし、二人は温泉云々、観光云々と言うより、別のことにうつつを抜かしていた。

 それは、居合わせた女性のナンパにエロ話。

 確かにそれも醍醐味かもしれない。

 だが、された方からすれば、いい気はしないだろう。

 そして、時間が余ったため、伊香保温泉から榛名湖畔まで登る峠道を走ってみようと言うことになった。

 まずは、ヒルクライムだ。

 Nワゴンで登ると、エンジン音が高鳴る。

 アクセルをいくら踏んでも登っていかない。

 それもそうだ。今日はいつもより150キロ重いんだ。

 しかし、その重たい原因を作っている奴等、カメラを見せ合っている。

 ゆっくり走って景色を楽しんでもらおうと思って、本当なら攻めたいのを抑え、登坂車線を走って後ろから来る、攻めたい奴等に道を譲っているのだが。

 後ろから、AE86トレノが追い抜いて行く。あの漫画の主人公の車だ。

「かわいいなあ。こんな彼女が―」

 どうやら、伊香保温泉の石段街の写真に映った別の旅行客の女の子の話をしているらしい。俺はそんな話をさせるために、伊香保に連れてきた覚え無いんだけど。

 登りきった場所。つまり、あの漫画のダウンヒルのスタート地点で車を止める。

 反対車線側に、AE86トレノやRX‐7が居る。一方で、こっちに止まっているのは、エロ話にうつつを抜かすバカ2人と、走りたい気持ちが爆発しそうな走り屋。

 榛名湖の方から、2代目NSXが伊香保温泉の方へ走っていく。

「ふん。2代目NSXにしろ、GTRにしろ、今の車は頭でっかちな鉄の固まりも良いとこだ。頭文字Dの新劇場版と同じだ。声優だけ腐女子向けの宮野某にして腐女子のファン獲得しようとしたんか解らんが、これじゃあ薄っぺらい糞アニメと同じだ。今の車も、それと同じだ。いくらハイブリッド仕様だ、エコカー仕様だって言ってもあんな面じゃなあ。」

 と、俺の隣りに居るS13シルビア乗りが言った。あんな会話をしたくて、ここに来たのに。こっちの同乗者はエロ話ばかりでうんざりだ。

 また1台、伊香保温泉へ降りて行く。

 FD2シビックタイプR。その後に、遅いプリウスと、それに進路を遮られているユーノスロードスター。

「なあ拓洋?お前はどうよ。」

 安斉一歩が伊香保温泉の石段街で盗撮したらしき写真を見せる。

「お前、そんなことしているから、彼女が出来ねえんだよ。」

「拓洋は彼女が居るし、どうせもう童貞卒業してんだろ?」

「キスもしたこと無い。」

 腕時計を見る。そろそろ、伊香保温泉の宿に戻る時間だ。

 2人を車に乗せ、Nワゴンを発進させる。

 前に、AE86トレノとS13シルビアを入れる。今日は攻められないのだから、攻めたい奴を前に入れてやるのだ。

 後のバカはまたエロ話。俺は我慢ならず、下り始めてからは例の漫画のアニメのED曲を流していた。

 しかし、悪乗りをするバカ二人。

 イライラしてくる。

「なあ!隠さずに言えよ!あの芽美さんとの(自主規制)」

(ムカついた。仕掛けるか。やるなら、この先の5連続ヘアピン。)

「ちょっと興奮するんだよねえ。そういう話されると。特に、彼女を引き合いに出されると―」

 アクセルを踏み込む。 

「おっと!興奮してスピード上げて―」

 吉川准がニヤリと笑ったが一瞬でその表情が凍りついた。

 目の前にヘアピンコーナーが迫ってきたからだ。

「おいバカ!興奮しすぎだ!止めろ!」

 一発目のコーナーを思いっきり曲がると、目の前に次のコーナーが来る。

「まだまだこれからよ!」

 慣性ドリフトで次のヘアピンに突っ込んでいく。

 更にここであの漫画に出てきたテクニック、溝落としを実行。

「剃る!剃るって!」

 イン側に座る安斉一歩はエロ話していた時のにやけ顔がどこかに消え、今や恐怖のどん底だ。

 先行するS13シルビアが徐々に近付いてくる。

 と思ったら、追い付いた。

「こいつ、人間じゃねえ。化物だ。」

 5連続ヘアピンだけ思いっきり攻めて終わらせた。

「更に変な話したら、もっと興奮するぜ。」

「いや、もう、止めておく。死にたくねえ。」

 この事件は、後々、榛名山5連続ヘアピン事件と言われるようになった。

 だが、これは一歩間違えれば大事故に繋がりかねない。

 まして、他人のエロ話でキレて、自分の車を壊したら笑い話にもならない。

 車出してもバカにされ、更にはエロ話されるのならば、彼女以外誰も乗せられない車にしてしまえばいい。だから、新しい車は2人乗りのスポーツカーを求め、行き着いたのはS660だったのだ。


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