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純白のSと共に  作者: Kanra
1stage孤独な走り
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身体の悲鳴

 羽田空港国内線第1ターミナルまでのお客。

 しかし、羽田空港の手前、首都高湾岸線で異変が起き始めた。

 俺の目の調子がおかしくなってきたのだ。

 湾岸線には多数の海底トンネルがある。海底トンネルと言っても運河の下を潜る物だが、トンネルを一つ抜ける度に目が眩む。

 それに伴い、気分も悪くなってくる。

(ヤバイ!)

 自分では気がついていなかったが、身体の方にはかなりの疲労が溜まり限界を突破したらしい。

 高速走行は信号待ちこそ無いが、人間が普段感じることのない速さで車を走らせるため、目からの情報が一気に脳へ伝わって疲れが目に跳ね返ってくる事がある。

 まして、気が付かない内に疲れが蓄積され、それがここで限界を越えてしまえば、一気に疲れを感じる。

 とにかく、今はこの旅客を羽田空港まで送り届けなければ。

 必死になってクラウン・スーパーデラックスを操る。

 前方に、エアポートリムジンがいる。

 これの後ろに入る。バスや長距離トラックは遅いが速度が安定している。

 慣れていない高速道路や疲れている時にはある程度の車間距離を確保しながら後に着くことで、疲れを軽減させる事が出来る。

 どうにか羽田空港に着く。

 お客を降し、羽田空港から退避。

 駐車場付きのコンビニまで退却してそこで軽く休憩を取る。

 しかし、今日は異常事態だった。

 長距離が多数出るのだ。

 昼食休憩時には、普段の土曜日では考えられない売上にはなっていたが、身体が壊れそうだ。

 道路状況の確認のためスマホを見ると、彼女からLINEが来ていた。

「本当に結婚出来るの?」

 今、それどころじゃない。

 だが、この手のLINEや電話は正直、メンタルに来る。

「まったく会えないことは、本当にすまないと思うよ。だが、どこかのクソ馬鹿野郎航空のせいで、手が離せなくなってしまった。親も入院しちまってる。おそらく1ヶ月は、手が離せない。」

 そういって逃げるしかない。

 だが、今日の彼女はやけに煽ってくる。

 休憩時間を早めに終わらせ、仕事に戻ることにしたが、これもまたミスだった。

 向かったのは東京ミッドタウン(六本木)の乗り場。

 だが、待機中、「リッツカールトンホテルへ行け」と指示された。

 ここも長距離の旅客が多数乗る場所だ。

 乗ってきたのは大荷物を持った中国人家族。

(これ、苦労の割に金にならねえ最悪なパターンだ)

「運転士さん。成田空港第2旅客ターミナルまでお願いします!」

(ふざけるな!)

 そりゃ、身体とメンタルがズタズタの状態で無ければこんな嬉しい事はない。

 今日3度目の高速だ。

 箱崎ジャンクションと京葉道路の渋滞を避けるべく、レインボーブリッジ経由、湾岸線、東関東自動車道。

 制限速度ギリギリの速度で成田を目指す。

(オレンジ色のエアポートリムジンはどこだ?)

 必死になって、エアポートリムジンの姿を探す。

 いない!エアポートリムジンがいない!

 くそっ!持て。持ってくれ!俺の身体!

 成田空港までは100キロ弱。

 その半分を消化したが、目がやばい。

 東関東自動車道に入る。

 成田空港の距離が少しずつ短くなってくる。

 成田インターに到着。

 もう、成田空港は目の前。

 成田空港第2旅客ターミナルが近付いてくる。

 こんなところでバスや他車にぶつけでもしたら、めんどくさい事になる。

 降車場の、ターミナルへの入口に一番近い場所が開いている。そこに車を押し込むように停め、クレジットカード払いの決済、荷物を降し、空車になる。

 軽い。車が軽い。

 もうダメだ。帰りのサービスエリアで、死ねるな。


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