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純白のSと共に  作者: Kanra
11stage覚醒 S660
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S660の死

この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。

公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。

作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。

自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。


また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。

実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。


 その場に、ただ呆然と立つしか無かった。

 取材と聞いて行った筑波サーキット。

 しかし、実際には違った。

 ジムカーナ場で行われていたのはお笑い番組の収録。そして、その一回目、S660は芸人に乗られ、ベンツに追突され、そのままバリアにぶつかって大破。

「まあ、これでお別れです!残念でしたねえ!」

 と、芸人に笑われながら言われ、俺は芸人に殴りかかった。

「俺の車!俺の車をどうしてくれるんだ!!貴様ら!ぶっ殺してやる!!!」

 他のスタッフ達に止められるが、止まり切らず、何発か殴った。蹴った。殴られた芸人の内、何人かが、顔から出血した。

 大切な、彼女よりも大切に思えて来た、S660が見ず知らずのお笑い芸人にだまし取られ、壊された時、どんなリアクションをするかという企画内容。

 こんなの聞いていない。

 番組側からは、保証金と見舞い金、慰謝料は払うと言われたが、それでどうなるのだ。俺のレースは!

 目の前だったのだ。

 その場に2時間以上、立ち尽くした。

 筑波サーキットのスタッフ達が、気を回して帰りの交通手段や車の処理の手配をしようかと提案してきた時だった。

 クラクションの音に振り向く。

「正孝さん?」

「よう。」

 キャリアカーに乗った坂口さんのお父さんがいたのだ。

「ふーん。」

 正孝さんはS660の状況を見る。だが、

「安心しろ。俺が直してやる。3月からのレースにはエントリー出来ないが、直せる。」

「直すって、直るのですか?」

「ああ。大丈夫だ。ついでに、軽くチューニングもしよう。ホワイトインパルスの4号車になったんだ。こんなところで泣いてんじゃねえ。泣いてたところで、車は直らねえよ。」

 キャリアカーの荷台から、車が降りてきた。降りてきたのはAE86トレノだった。

「こいつを今日から直るまで、代車として使え。それから、保険会社と君の両親、その他関係各所に連絡しろ。」

「あの―。」

「なんだ?」

「直すって、どうするのです?だって正孝さんは―。」

「家はな。そば屋が家業じゃねえんだよ。」

 と、正孝さんは名刺を渡す。

「ホワイトレーシングプロジェクト?」

「ホワイトインパルスの正式名称だ。自動車整備、チューニングを行う。あいつらの車だって、家で整備してんだ。」

「―。」

「まあ、そういうことだから、しばらく車、預かるよ。」

「嫌です。」

 俺は拒否した。

「他人に車を預けたくないです。」

「お前な。じゃどうすんだよこれ。このままここに置いといても、ただの鉄の塊だろうが。」

 俺は携帯を引っ張り出した。

 だが、誰にかけようとしているのか。

 海老名芽美(携帯)という覧をタップしようとして、そのまま動かない。

「俺からも言っておく。お前には今の彼女より、車のほうが合っている。どういうことか、解かるよな。」

 携帯をしまう。そして、

「俺の純白のSを、よろしくお願いします。」

 と、頭を下げた。

「ああ。任せておけ。必ず、直してやる。」


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