新人取材のアポ
この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。
公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。
作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。
自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。
また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。
実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。
「よしっ。」
と、俺は言う。
S660のリアウィングの付け根にはツバメのマークが付いているが、リアウィング自体にも軽いペイントを付けた。
流れ星のペイントだ。
このペイントは寝台特急のマークだ。
(今の俺は、昔の鉄道好きだった時の感覚に戻ったようだ。何かを求めてひたすらに鉄路を列車に乗って駆け抜けていた。そして今、再び車に乗って走り出す。まだ見ぬ世界を目指して。純白のSと共に。)
まもなく、初レースだ。だが、そこに電話が鳴った。
「はい?」
「もしもし。九重拓洋さんの携帯電話でよろしかったでしょうか?私、モーターTVの―。」
(モーターTV?なんだ?)
「この度、レース参加直前の方に、企画の協力をお願いしたくお電話いたしました。九重拓洋さんは、多方面から注目を集めているホワイトインパルスや海老原レーシング、あさぎりレーサーの目に止まっている注目のドライバーとして―。」
(ふーん。それで要件言えよ。)
「それで、新人レーサーとして、番組に出演していただきたいのですが―。」
「ああ、新人レーサーの取材ということですね。分かりました。私としてはOKですよ。」
「もし―?ああタクミかぁ。珍しいじゃん。そっちから電話くれるなんて。」
坂口愛衣は笑う。
「うん。へえ。えっ?モーターTV?うっうん。ええ。いつ?明後日の午後?うん。分かった。まあ、気を付けて。」
坂口愛衣は気がかりな事があった。
だが、九重拓洋が初めてレーシングドライバーとして取材を受ける。
その事の方が先行してしまった。
(これで、あの分らず屋の彼女の両親も認めるでしょう。そうなれば、結婚も確実となって、タクミはもっと速くなる。)
知恵と大山神威が「彼女と別れろ!」と九重拓洋に言うのに対し、坂口愛衣は九重拓洋のモチベーションを支えるのは彼女の存在であり、それが無くなると九重拓洋は崩れていくと思っていた。
だからこそ、彼女の両親に九重拓洋を認めてもらいたいと思っていた。
それ故に、S660と九重拓洋がこの後どうなるかなど知る由もなかった。
いや、止める事は出来たが間に合わなかった。
それを伝えたのは九重拓洋が取材を受ける当日、そば屋の手伝いをしていた時、真穂に言ったのだが、
「あのさ、それってもしかしたらお笑いかもよ?」
と、真穂が言った。
「ちょっと前に、車のバラエティーをネットテレビでやるみたいな話を聞いたんだけど、その企画がA芸能事務所のモーターTVって言っていた。」
「えっ!?」
坂口愛衣は仕事そっちのけで、モーターTVについて調べた。
「おい。ちょっと待って、こんなことしたら絶対レース出来ない!」
ドカン!と裏口を蹴破ってガレージに向かう。
「今から行っても間に合わないと思うけど、行かないよりまし!筑波に行くぞ!」
S2000AP1のエンジンをかける。が、その前に、
「間に合うもんか。」
と、坂口正孝に言われる。
「刑事訴訟の用意と、家の店への受け入れ用意をしておけ。その手のやつならおそらく保証はされるが、新車買うのは無理だし、おそらく彼の事だ、あのまま乗っていたいと言うハズだ。」
そういう、父の坂口正孝は、キャリアカーに乗っていた。その荷台にはAE86トレノが載せられていた。
「店の用意、やっとけよ!」
と言い残し、坂口正孝は筑波サーキットへ向かって出発した。




