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純白のSと共に  作者: Kanra
10stage走り屋の聖地 群馬
101/435

弱点発見!赤城サンダーボルトライン

この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。

公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。

作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。

自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。


また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。

実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。


 正式名称は県道16号線。

 しかし、この赤城サンダーボルトラインは見通しの悪い狭い道。

 おまけに途中には30連続ヘアピンともいうべき、ヘアピンコーナーの連続。

 車線は1.5車線といったところ。すれ違いには難儀する。

 しかし、定峰峠や白石峠を走った事で、難なく通過していく。

 初めてこのS660で登った時には、R32に乗る旧友に出くわしたのだが、それ以来、何も無いから、クラッシュしてぶっ壊したのだろうか。

 赤城サンダーボルトラインは小沼の辺りでは緩やかなストレートだ。

 しかし、それに騙されると、この先の区間で地獄を見る。

 軽井沢峠の駐車場を過ぎると、緩やかな区間は終わりだ。

(行くか。地獄へ。)

「ヒューッ」と一息吐いて下りに挑む。

 赤城山の尾根の上。車が1台通れるだけの道幅の道に飛び込む。

 緩めのコーナーが始まる。

 まだ序の口だ。

 地図で赤城サンダーボルトラインを見ると、赤城山山頂付近から麓へ続く細い道がまるで雷雲から地上に向かって墜ちる稲妻のように見える。

 まさしく「雷と空っ風義理人情」。赤城山から吹き降ろす空っ風と共に雷のように地上へ降りて行くのだ。

 一つ目のヘアピンに飛び込む。

 狭い道。リアをうまく流し、カウンターを当ててクリア。

 一息つく間も無く、左コーナー。

 そして、右。

 木々の隙間から、関東平野が見える。

 かつては、BGM聴きながらアタックしていたし、さっき榛名を走った時も聞いていた。だが、マジになるときはBGMを切る。

(低速粋の恐怖心。三峰で朝倉さんに言われた。中高速コーナーは速いが、高速ストレートでアレだ。アレは考えない。)

 右コーナー。だが、対抗のバイクと入る手前ですれ違う。

 減速してすれ違ったら、そのまま入る。

 だが、うまくラインに乗せられない。

 その次に2つ目のヘアピン。

 速度が上がらぬまま入るが、ラインに乗せられない。

(違和感がある。曲がれるがラインに乗れない。変な感触。)

 続いて右。

 アクセルターンで徐々に加速しながらクリアし、小さな複合コーナーを抜けて左。対向車無し。

 少し攻め込んで見る。

 すると、今度は違和感無く曲がった。

(そうか。そういうことか。)

 崖沿いの赤城サンダーボルトライン。

 徐々に地上が近付いては居るのだが、端からみればまだ空中戦の最中だ。

 右コーナーを抜け、複合コーナーからの左。

 オーバースピードでガードレール突破ったら関東平野へ真っ逆さま。

(俺の弱点。それは低速域の恐怖心ではない。)

 続いて右コーナー。

 下り勾配のオマケ付き。エンジンブレーキ併用。

 軽くタイヤを鳴らしながらクリア。

(低速コーナーで、ある程度の速度が無ければ途中で失速してラインに乗り切れず、立ち上がりでもモタついてしまう。言うならば―。)

 左直角。道幅、僅かに広がる。

「低速コーナーが下手くそだってことだ!」

 スマホのナビが、まもなく連続するヘアピンに突入すると告げる。

(ここからだぜ。赤城山山頂から軽井沢峠の駐車場までが前菜。軽井沢峠からここまではスープ。ここから赤城山パノラマ展望台までのヘアピン連続区間が魚料理。そして、赤城山パノラマ展望台から赤城温泉までの区間が、メインディッシュだ!)

 対向車無し。

 今から、この純白のSは赤城山を駆け下りる稲妻だ。

 1つ目のヘアピンから2つ目へ。

 感覚が短くおまけに下りの勾配。まるでジムカーナだ。

 だが、この低速セクション。今の俺にはうってつけだ。

 低速コーナーへの対処を演習できる。

 ここでへばったら、この先に待ち構える連続タイトコーナーで心が折れてしまうだろう。

 赤城山パノラマ展望台を通過。

 ここから赤城温泉までの区間は、30連ヘアピンと言う程断続的にタイトコーナーが待ち構え、更には道も細く、景色も見えない。雷雲の中を地上へ突き進む稲妻だ。

 対向車無し。だが、万が一に備えすぐに止められる速さで突入。

(右足をアクセル。これは一定で踏みつつ、左足ブレーキでアンダーステアを消し、リアを流しながらクリアしていく。お釣り貰うな。貰ったら壁ドンして終わりだ。)

 左、右、左、右とハンドル操作。アクセルとブレーキの僅かなミスでドッカンと行く。

(俺はまだ、こいつに、純白のSに乗れていなかったのか。)

 手足の僅かな感覚が、紙一重のところでS660をコントロールしている。

(君は確かに、車と一体化しそうだ。だが、そこに彼女とその周囲の人の足の引っ張り合いが重なってしまい、完全に車を身体の一部に出来ていない。プロになるためには、ただ走っているだけではダメ。自分を知り、車を知り、自分の思いを車と同調させながら走って行かなければ、いつまでも走り屋のままだ。)

 大山神威の言葉が脳裏を過ぎる。

「大山さん。あと少し、この赤城サンダーボルトラインをクリアして、あと少し走ったら、車を身体の一部に出来るかもしれません。筑波のデビュー戦で、きっとこの車を身体の一部に出来ます。そうしたら、レースしてください。俺は、彼女ではなく、こいつと一緒に駆け抜けていきます。」

 木々のトンネルの中のジムカーナコースを抜ける。

 三夜沢赤城神社を通過すると、再び目の前に関東平野が広がり、後ろには、今下って来た赤城山が見えていた。


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