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純白のSと共に  作者: Kanra
1stage孤独な走り
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たった一人の3期生

 翌朝も朝4時45分に家を出発。

 眠い。

 だが、まだ眠れる時間があるし、長い隔勤の翌日が明けの休養日であるだけ良い。

 それでも、やはり体力面で少しきつい面もあり、他のドライバーより早く会社に戻ってしまう。だが、無理して居眠り運転でもして事故るよりはましだ。

 会社に着き、自分の乗る車の点検をする。

 そこに、中田教官と浅生主任がやって来て、

「後5連勤の間、3期生は九重だけになってしまったよ。」

 と言った。

 事務の女子も、体調不良で休んでいるらしいのだ。

「代休、取っても良いんだぞ。」

 と、浅生主任が心配そうに言うが、

「いいえ。人がいなければ、私が走ります。私が走らなければ、誰もお客様をお送り出来なくなってしまいます。」

 無理を強いられるのは分かっていながら、こう答えた。

「無理をするな。事故を起こす前に、無理だと思ったら休みな。」

 そう言っているが、シフトを組んだのは浅生主任だ。

 だが、ハードな時期に悪い事が重なってしまって、心配しているのだろう。

 確かに、これで無理をして死亡事故を起こしたら、俺のみならず浅生主任だって何らかの責任を問われるし、下手をすれば会社だって潰れる。

 実際問題、一歩がオービス光らせ、准が大事故を起こしているのだ。

 それでも、俺は今日も乗務する。

 最大で6連勤以上することはないが、今はその6連勤の2勤目だ。ここで音を上げたらどうしようもない。

「無線配車です―」

 無機質な機械音声が流れ、迎車ボタンを押す。

「比良様。即時スマホ配車7時35分。迎え先―。」

 いつもの無線だ。これは赤羽から日本橋宝町まで一気に都内へ入ってくれる上に、5千円以上一気に稼げる仕事だ。

 郊外で下手にウロウロしていて都心部へ入るのが遅くなると、郊外の短距離輸送の餌食になるか、クソ狭い道がクモの巣状に入り組んだ住宅地へ無線配車で呼ばれて単独事故を起こすリスクを背負わされた上に同じく短距離の金にならない仕事を延々とさせられる。

 ちなみに単独事故を起こした場合、明けの休みが半分以上潰されて、始末書や報告書の作成、更に事故後の教育と説教が待っている。

 事故の度合いによっては出勤停止等の重い処分もある。

 指定の場所で待機し、車外でドアサービスをして日本橋宝町へ。

 込み合う明治通りを抜け、尾久橋通り、そして首都高速1号上野線。

 この後は東京駅の乗り場からのお客を乗せる。だが―。

「運転士さん。いつもより料金安いですよ?」

 と、今乗せて来たお客さんが言って降りていった。

 確認すると、なんと高速道路料金がメーター料金に入っていなかったのだ。

 会社に連絡し、近くの修理屋へ行くが、ここでも対応出来ないと言われ、やむ無く会社へ戻るハメに。

 このトラブルが尾を引き、今日の売上はいつもよりかなり低く終わった。

 お願いだからトラブルはこれ以上起きないでくれよ。

 だが、こういうときはまるでどこかの誰かがサービスしているかの如く、トラブルが次々に起こる。

 3勤目、今度は彼女から「結婚する気あるの?」とまるで結婚を急かす連絡。

 無視して4勤目。また同じ連絡があり「今仕事が忙しい。この日に改めてくれ」と言ってトンズラ。

 5勤目。この日は朝から異常だった。

 見方を変えれば嬉しい悲鳴。だが今の身体の状態を考えると、かなりきつい。

 朝、ここに来て遂に朝、眠気が冷めない状態が続きそれが限界に近付いていた。

 そんな時、朝一発目のお客だった。

 今日は土曜日。

 短距離ばかりで更に狭路に放り込まれまくりの苦労の連続の日だ。

 この一発目がこの前の航空会社の奴みたいな野郎だったらそれで終わりだ。

 乗ってきたのは熟年女性。

「すみません。羽田空港まで行けますか?」

 ファーーーーーーーーーーーーーッ!?

 王子から、流しで羽田!?これは凄い。

 無線だと、羽田空港定額料金での運行となる場合が多く割に合わない事もしばしばだが、これはそうではない。

 今日は付いている!

 だが、これが間違いでもあった。


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