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We are the ONE‼︎〜王の遺伝子〜  作者: ギガス
第2章
20/25

第18話 J・S・M part.3

12:00投稿の予定でしたが、チョッチ用事があったので15:00投稿とさせていただきます。

ふらふらとした足取りでゼロの元に歩いて行く。途中ミルとすれ違うが、ティオの目にはゼロしか写らなかった。ミルはティオを避けて道を差し出した。


彼女はゼロの側まで近寄って、突然脚が崩れるように尻をついた。


「お願い……死なないでよ……ゼロ……目を覚まして……」

「残念だったな。追い詰められた時はどうなるかと思ったが、この男が死ねば勝手に瓦解するもんだな」

「…………………」


ティオは涙目だった。普段涙なんて殆ど流さないティオが、出会ってからあまり時間は経っていないのにも関わらず、ゼロとともに過ごした日々の思い出がティオの脳裏に浮かんだ。

ティオを狙いに来た男と思ってボコボコにしたことを散々怒られた。自分の過去も話した。途中でリスのハンナがゼロじゃなくてティオに懐いた時も悔しかった思いをされた。彼と共にいて、心を開こうとしなかったものの、少しずつ打ち解けていった。その結果、自分の能力のことを彼に打ち明けた。



涙を流した。



大粒の涙。ゼロの口にほろりと落ちる。ゼロは完全に全身を動かせないほどミルにやられていた。

この男は仮にもOXTの構成員だ。ティオの無限の魔力を持ってしても相殺できる能力は、打つ手がない事を示していた。

絶望・した。これから2人とも抹殺されてしまうのだろうか。ミルはトドメを刺す化のようにティオに近づき首を絞める。湧き上がる苦しみに何もできない、一切抵抗しなかった。


「あぁあ“……ぐっ……あ”」

「結局はさ、量より質なの。君らが2人でかかって来ても、君がどれだけ大量の魔力を持っていても、この僕の質のほうがずっと優れている。量でゴリ押そうったって、そうは行かないんだ。な?」

「ぐっあ“ぁ……え”?」

「抵抗しないなんて、余程絶望したんだね。抗おうともせず簡単に希望を失っちゃって……そのまま動かないで。楽になれるからさ。じゃあ、あの世でまた会おう」


ミルは自分の右手に魔力を込めた。最初にティオにやったのと同じ超良質魔力による闘気覇である。


しかしここでティオの目が正気に戻り、掴んでいる手を強く掴み返す。


ミルは悪足掻きだと高を括ったが、自分ではなく自分の後ろにティオの目線が向いていたことに我慢ならなかった。何が原因か確かめると、そこには今日幾度となく驚かされた感情を何度でも想起させられる光景があった。


「………………おいどうなってるんだ?」


ティオもミルもその光景に目を疑った。それは絶望に染まっていた黒を白に塗り替えるほどである。ティオは首を掴んでいたミルの手を必死で振りほどこうとする。目に少しずつ正気が宿り始めた。



「まだ終わっちゃいねえぞティオ……‼︎」



そこには、身体中の汗が蒸気になるほどの煙とオーラを出して立っているゼロがいた。


「なんで生きてやがる……?首の骨も脊椎も壊れてるはずなのに……」

「俺にも分からねえ。けどよ、今なら誰が来ても勝てそうな力が湧いてくんだ」

「……そのまま大人しく寝ていればいいものを。君じゃ僕には勝てないんだ」


ミルはティオを投げ捨てて戦闘態勢に移行する。その顔は未だ余裕を持っているものだった。だが、次の瞬間ミルのその顔は一気に驚きへと変わる。


いつのまにかゼロが後ろにいて、しかも回し蹴りを喰らわそうとしていたのだ。

驚いたミルは素早く両腕を胸の前で構えて防御する。しかし、


「このパワー⁉︎」


ガードも虚しく貫かれ、吹き飛ばされて地面を何度も体をぶつけながら転がる。その距離実に200m。

果てしなく転がって行ったミルは、いくらOXTで特殊な訓練を受けようとも、立ち上がるには少し時間がかかった。


「クソがッ!もう容赦しねえッ!どうなっても知らねえぞコラァ!」

「最初から人のこと舐めなきゃイイじゃんかよ」

「なに?」


いつの間に近づかれていた。この距離をいつどうやって移動したというのか。

人間の最速は100台を9秒台で走れる。その倍の距離を、体感時間1秒もかからなかった。自分の意識限界を超えて近づかれたのだ。

ミルは感じた。コイツはヤバい。手を抜いていい相手じゃない。自分の超良質魔力を全て使ってでもこの男を虐げることは可能であるか。


ミルは直前でゼロの大回りな蹴りをしゃがんで躱し、魔力で作った前方に広がる衝撃波をゼロの腰あたりに撃つ。


「当たった!」


筈である。が、ゼロは吹っ飛ばない。ゼロは体を捩って躱していた。右前に捩った体の勢いは、そのままミルの真上から炸裂する蹴りへと変化する。


先程は地面と平行にベクトルがかかった。だが真上からなら防御しきれる。そう思ったミルは全力で頭の上で両腕を組み、足を踏ん張れるように体を支えた。


激突。ミルの超良質魔力とゼロから発せられる謎のエネルギーが物凄いエネルギーを持って混ざり合い破裂する。


「なめんじゃねえ!」


ミルは10cmコンクリートの地面に沈み、地面は大きな罅を生やした。だがゼロはというと、30m以上も高く吹き飛ばされた。

空中で浮遊し、掴まる場所がないところではやはり、ミルは全速力で最大魔法を準備していた。


「これは躱させない!」


ミルは自分の魔力で作った、最も短い時間でできる小さな魔法榴弾をゼロに向けて放つ。小さくても榴弾であるから強力だ。

だが、ミルは一つ大事なことを忘れていた。ゼロの内から湧き上がる莫大な量の魔力にあまりにも気を取られ過ぎた。

ゼロは両腕を地面に向けて榴弾を迎えた。みるみるうちに榴弾は消えていき、ゼロは更に高く飛び上がるだけだった。


「あいつ......俺の魔法榴弾(グレネード)無効化(きょぜつ)しやがった......!」


ミルはもう一つのことも頭になかった。なにも、闘っている相手はゼロだけでは無い。

ミルは視界の端に、ティオが今までにない規模の魔力弾を撃とうとしていた。ゼロのおかげで時間が稼げたのだろう。

放たれた魔力弾は、今まで撃ってきた弾と相異なる。その形状は先程ミルがゼロに向けて放った魔法榴弾と酷似していた。


「あの女、僕の技をパクったのか......!」


この形状は魔力弾のなかでは最も効果覿面で、最も威力が出る。莫大な量の魔力を使用したからか、その形状を変えることは容易だったであろう。


「流石にあれを喰らうのはマズイな......」


ミルは豪速球で、超良質魔力で作った簡易式の障壁を作ろうとする。防ぐことはできなくとも、逸らすことはできるはずだ。そう考えたミルは障壁を展開する......はずだった。


「質が良ければいいだって?違うね。質は量で補える。量があれば、質でできないこともできる。質の力を過信し、量の力を知らず変化に対応できなかったお前の負けだ」


左手はミルの肩に添えて、右手に多量の魔力を込めてミルに殴りかかろうとする。ミルも負けじと左手で闘気覇の用意しようとするが、肩に置いてある左腕を掴んでも何も起こらないのだ。


「何故だ‼︎君は魔力を腕に込められるなら、能力はシャットダウンしてるんじゃないのか⁉︎」

「さっき俺の能力は拒絶だとお前は言ってたな。ならよ、外からの行為は拒絶していても、内側で何をやっても問題ないんじゃないか?」

「なんだと?」

「お前の人体実験の賜だよ。おかげで俺は自分のこの能力について深く知ることができた。ありがとな」

「この野r……」


ゼロは力一杯ミルを殴った。その分自分の右腕の中でプツンと途切れる感覚がしたが、そんなことは御構い無しに両腕をフル活用して強く殴り続けた。


直後、ティオが撃った巨大魔法榴弾がミルに着弾した。ゼロの能力のせいで途中まで展開していた防御壁も消えかけ、ついでにミルの意識も途切れた。


ミルの狙い通り、魔法榴弾は中途半端に展開した防御壁の逸らされ2人の横を通り過ぎ、空中で大きな爆発を見せた。それはまるで2人の勝利を祝うかのような祝いの花火であるかのように、彼らの姿を太陽よりも明るく照らした。


ミルに続いてゼロも力尽きた。ティオから強引に取った魔力で散々暴れたからだろう。ティオはできるだけゼロに近づこうと歩いた。激しい魔力のやり取りをしたからか、ティオの体力も限界だった。ゼロに近づこうと必死に脚を動かしたが、その脚はゼロに辿り着く10m前で崩れ、あとは必死に意識を保とうとする。


もし自分達よりも先にミルが起き上がってしまったら、ゼロはどこかに連れて行かれるか、殺されるだろう。それだけはなんとしてでも阻止しなければならない。もうすぐ、暴れまわった怪物の調査をしに応援が駆けつけるだろう。それまでは何としてでも正気でいなければ。


だが、ティオがこの後見たものは希望でも、だとしても絶望とは言い切れないものだった。


ミルの右目に火が灯ったように見えたのだ。ミルは気絶しながらでも、悪夢を見たように呻き声をあげる。しかもその火が灯った目から男が出てきたのだ。金髪で顔立ちが整った好青年の雰囲気を匂わせる。


「デカ……ルト……?」


目から出てきたのはデカルトだったのだ。


「ミルに勝つなんてこいつすげえな。やっぱりただの能力者じゃあ無かったな。で?こいつは何なんだ。どうしてこんなやつがOXTの、それも幹部に属してんだろうなぁ?ねえどう思う?ちゃんティオ」

「………………」

「え?死んでないだろ元気出せよ。ほらほら、立ち上がって。君の忌むべき相手がここにいるのに。こんなチャンス滅多にないよ?」


実際ティオの耳にデカルトの声は殆ど届いていなかった。口を半開きにして、薄眼のティオの脳に周りを認識できるほどの体力は残っていないのだ。髪の毛を引っ張っているのだから、多少どころかすごく痛いので、呻き声が微かに漏れる。


「僕があげたネックレスまだ付けてる?って、ちゃんティオ近くで見ると可愛いねぇ。大事な化粧した顔も、土埃が付いて汚れてんじゃん……お、まだ付けてたんだね。えらいえらい」


デカルトはティオを優しく仰向けにする。


「ゆっくりお休み」


その言葉は、例えるなら娘に対して父親がお休みの言葉をかけるように柔らかかった。デカルトはミルのもとに行き、右目に指をかける。


「お前にもうこれは必要ねえな。今までお勤めご苦労さん」


そう言って指を鳴らすと。ミルの右目は破裂した。それを見ているものはいなかったし、ミルも痛みを感じることはなかった。デカルトはゼロの顔を見て口角を上げ、その場から立ち去った。


調査隊が救出にきたのは、その僅か10分後だった。


ミルとの勝負は決着しました。ティオとミルの能力は次回詳しく書きます。

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