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We are the ONE‼︎〜王の遺伝子〜  作者: ギガス
第1章
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第9話 change of the way of thinking~考え直そう~

ちょくちょくとポイントでの評価ありがとうございます。励みになります。

ゼロの新しい生活が始まってから、ゼロとラロは座学に関しては互いに切磋琢磨し、戦闘に関しては、ゼロはセィレーンに揉みくちゃにされ、ラロはその場で見守る。ゼロが怪我をするたびにラロが回復させる……そのような日々が1ヶ月続いた。これがあと4年と11ヶ月残っている。彼らに安息日など有りはしない。


この修行中に分かったことだが、ラロの能力は、ある一定範囲内をベールで覆い、その中にいる生物すべてを再生させるものだった。このベールというものが、外からの一切の攻撃を通さず、中の様子も見えない。しかし内側から外側に攻撃はできないものの、外の様子が見えるというベールだった。音どころか光も通さない、ベール自体が光っているのだ。ベールを出せる時間は5分まで。いつでも解除できるが5分経てば必ず効果は切れる。


彼女もまた、ゼロと同じく外からの干渉を拒絶していた。


今はゼロもラロも休憩時間で、2人とも特に何も話さない。だが、ゼロはそんな休暇時間さえも腕立て伏せをして筋肉を付けていた。側近のメイドが思い出したかのように、ゼロに問いかけた。


「ねえゼロ様」

「ハァ…ハァ…なんですか……?」

「あなたの目標を聞いてて思ってたのですが、どうして一番を目指すのですか?あなたのその目標なら、別に無理して一番を取らなくても宣教師になる選択肢もあると思われますが」

「そうなってこの世の中変わったこと…ハァ…あるか?」

「…………マーティン・ルーサー・キング・ジュニアは牧師として、アメリカの首都ワシントンで20万人の前で人種差別撤廃について訴えました。彼はその僅か5年後に暗殺されてしまいましたが、その功績は現在にも受け継がれています。現に肌の色による差別はほぼ無くなっていると言っていいでしょう」


そう言われたゼロは腕立て伏せをやめて床に突っ伏した。


「……俺は牧師ではないし、そんな行動を起こせる力も立場もない。さらに言えば俺は誰かを率いる頭脳もなければカリスマもない。力のみならば世界的組織のトップに入って一番をとり、その時に目標を達成する。そう思うから今こうしてるんだ」


ゼロは腕立て伏せを再開し、ソフィの方に顔を一度も向けなかった。

ソフィは捨て台詞を聞こえない程度の声で。


「そうですか。ちなみにスポーツするときに最も必要ない筋肉とは大胸筋ですよ」

「知るかよ。見栄え良くなるしモテるだろ」


ゼロは腕立て伏せをやめなかった。


(それにしても力で解決する世界ですか……それは私の想う世界ではありません……)

ソフィは少し頭を抱えていた。20歳前の男の子が自ら戦争を望んで宣戦布告しようとしている。彼女は昔のことを思い出し、どうにか考え方をよいほうに変えてもらえないだろうかと思案していた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そうか。今訓練をしてんだ」

「ああ。そっちはどう?」

「デカルトにゼロのことがバレた。最低限の情報は隠したつもりではいるが、どこまでバレたかまでは流石に分からん。会議はまた4か月先だから心配ないだろうが、デカルトに殴りこまれたらゼロは間違いなく殺される。ゼロの能力は拒絶だと結論付けたが、詳細まで完全にわかっているわけではないのに、今はさすがに困る」

「ソフィの鑑定能力さえも拒絶するとは、考慮はしてたけど詳しいことがわからないのは不便だよ。だけどまあ、存在だけ感知されただけならセーフ。こっちはまだ5年やらなければならないことがありますし、何よりゼロを含め5人全員をOXTに入れなければならないっていうのが重いところではある」

「下準備はすでに出来ている。あとはゼロをいつ入れるかだな。目立ちすぎてデカルトにバレたら最悪だし、まさか5年丸々経ったあととか言わないよな、セィレーンさん」

「さあ。1年経つ前にユニオンに行って仕事を斡旋してもらう。そのあとあなたの作るゆりかご(クレイドル)に入団してもらうとしよう」

「他4人はもう既にユニオンで彼女から斡旋してもらってる。急ぐことに越したことは無いが、ゼロの能力が暴走したことはないけど慎重に頼む」


そう言うと、カントは踵を返して立ち去っていく。セィレーンもゼロの特訓に戻ろうと、屋敷に戻っていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「セィレーン様、ゼロの教育で少しお話が」

「どうした?」


密会を終えたセィレーンは、部屋を出てきたところで、メイドでありセィレーンの側近であるソフィに呼び止められた。


「彼、自分には力しか無い、力でしか事を変えられないと思っているんです。だから……」

「非暴力でも変えられる世界にさせたいと……それでゼロに別の道を探すことを勧めたいわけだな?」

「はい。ご存知だと思いますが、私の親は6年前の()()()()で亡くなりました。だから戦争で解決とか、暴力で解決とか、そのようなことを彼に教えたくはありません」


たとえOXTという組織が暴力で解決することしかできないとしても、それを成し遂げた先の平和とは、それは統一。輪の中で暴力、服従の関係が生まれ始めるだろう。だからこそ、ゼロには話し合いで解決できるという選択肢を増やして欲しかった。そうソフィはセィレーンに訴えたかったのだ。


「………………戦争をして分かることは相手との力量の差だけ、物理的な主従関係が生まれ、後味が悪いのが残る……と言ってたな。確かに、私は彼をOXTに入れることだけ考えていたかもしれない。だとすれば彼には英才教育を施す必要があると思うが、覚悟はいいか?眠れなくなるかもしれんぞ?」


その言葉を聞いて彼女の顔はパァっと明るくなった。主義主張を変えることがあまりないセィレーンが、彼女の言葉を聞くだけで首を縦に振ったのだ。


「はい!」


彼女は望外の喜びを表した。だが、セィレーンは大違いだった。

彼もこのままではいけないと思っていたのだろうか。何であろうともこれから彼ら2人は忙しくなることだろう。彼女にとって2人の子は、もはや自分の子のような存在になっているかもしれない。


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