エピローグ
初めての投稿です。至らぬところも沢山あると思いますが、温かい目で見てくれると嬉しいです。
人生はゲームのようである。自分を中心に世界が回り、一人一人、みんな自分の世界を持っている。そして主人公失格である俺はそのせいか、ベッドで寝ても全回復しない体で今日も目を覚まし、決してリセマラの許されない世界で、出来ることなら再開したくないセーブデータをロードしなければならないのであった。
今日の天気は雲ひとつない晴れ、ではなく大雨だ。ベッドの中に居ながらでも、しきりに打ち付ける雨粒の音で外の雨の強さが容易に想像できた。確か昨日の天気予報では今日の欄全てが傘のマークで埋まっていたはずだ。
もちろん俺にルーラなんて移動魔法は使えない。そのためこの雨の中、傘をさして学校まで行かなければならない。この雨の強さでは靴に雨が染み込み、靴下までびっしょりになるまでにそう時間はかからないだろう。考えるだけで足が重くなる。まだ目が覚めたばっかりだが、俺のテンションは限りなく低かった。そして今日が月曜日である、という事実も俺のテンションを下げる大きな要因の1つであったことはもう言わなくても分かるだろう。
時間的にそろそろ起きなければならないのだが、身体が一向に動かない。布団の温かさが俺を包み込み、放してくれないのだ。そして俺は1つの結論に至る。そう、ズル休みだ。考えてみれば学校で習うことなんて教科書に全部書いてある。自慢ではないが俺の成績は常に上位をキープしており、先生に教わらなくても教科書を読めば大体理解できるくらいの脳みそは備わっていた。
え、学校には勉強のためだけに行くわけじゃないって? ふざけるな。そんなのは友達のいるヤツの考えであり、友達のいない俺にとって学校は勉強する場でしかない。食事以外に口を開かないのは日常茶飯事。唯一クラスメイトに言う言葉は「すみません」くらいである
だが友達がいなくても寂しくない訳でもないし、友達が多いヤツが羨ましくないと言ったら嘘になる。人間は群れる生き物であり、この考え方は人なら当たり前だ。俺はただ友達の必要性と友達を作るための労力を秤にかけ、友達は必要ないと判断しただけである。友達なんていなくてもいい、別に寂しくなんかない、とか本気で言っている奴は精神病の恐れがあるので精神科医を受診することをオススメする。
話が逸れてしまったな。まあそんな学校生活を送っていたのだから勉強ができるようになるのは当たり前といえば当たり前だ。勉強以外にすることがないのだからな。中学生の頃からそんな感じだったので高校は自宅から歩いて通えるそこそこの進学校に入学することができた。一応、という言葉がふさわしい県立高校である。校風がゆるいことで有名だが、学校は勉強する場である、と割り切っている俺にとっては大して関係のない話だ。近い以外に魅力なんてものは感じなかったから、面接の内容に苦労したのをよく覚えている。
ん?また話が逸れてるって?すまん、すまん。まあ結局何が言いたいのかというと、学校は勉強するための場所であり、学校に行かなくても勉強のできる俺は学校に行く必要はない、ということだ。我ながら素晴らしい理論である。どこも間違ってはいない、正論だ。
そして俺はズル休みを決行したのであった...とできるのなら何も苦労はしない。こんなのは朝起きた学生の八割が考えていることだ。そして実際に決行できるのは一割に満たない。(俺調べ)皆の身体に染み込んだ9年間の義務教育がそう簡単に取れるわけもなく、結局は俺も渋々と学校に行く大多数の人間であった。まだ寝ていたい身体に鞭を打ち、俺は顔を洗いに洗面所に向かった。
おっと、紹介が遅れたな。俺の名前は如月貴広、たかひろだ。みんなからは〜と呼ばれている。という風に自己紹介ができればいいのだが、そうはいかない。理由はまあ、察してくれ。可愛い妹もおらず、一人っ子、年齢は16歳で高校二年生だ。そしてこれは仮の姿であり、あちらの世界では...なんて事ももちろんない。そういうのは中学二年生の時にしっかりと卒業している。両親は共働きで、俺が起きるのよりも前に家を出る。そのため朝はいつも一人だ。
鏡の向こうを見つめると、やる気のない顔がこっちを見ている。仲間にしますか?と言われたら速攻で断るだろう。顔は平均的な方だ、と思っている。いじめられた事は無いから、あながち間違いでもないだろう。良くはないけど悪くはない、特にこれといった特徴の無い、もっとも人に忘れられやすい顔だ。
そんな自己分析もそこまでにして、俺は顔を洗い、歯を磨いた。朝食は食べない。時間が無いからではなく、元々食べないのだ。着替えを済ませた俺は、昨日のうちに支度をしておいた鞄に替えの靴下とタオルを詰めた。支度を早々と済ませた俺は、玄関で靴に履き替え、誰も居ない家に向かって「いってきます」と呟いた。
これが日常の最後とも知らずに...
投稿スピードで遅めです。